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第2回ジェイダス杯

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第2回ジェイダス杯

リアクション

 多少の混乱はあったものの各選手、百合園生が待つ第一のチェックポイントに向けてキレイなスタートダッシュを決めた…と思いきや………。
 やっぱり今回もやってくれた選手がいるぞ。お騒がせ薔変熊 仮面(へんくま・かめん)だ。紳士的な装いはスタートまでの偽装だったようだ。身につけていたイエニチェリもどきのマントを脱ぎ捨て、ご自慢の裸体が、汚れなき乙女達の眼前に晒される!
「ウフフ、キャッキャは俺が許さん!」
 今回のレース出場にあたって、参加者の多くが事前に百合園生と約束をしていたようだが。どうやら変熊選手、普段の変態行為が祟ってか、誰にも相手にされなかったようだ。その腹いせにしては酷すぎる。これはスタート早々、中村雪之丞率いる治安部隊が出場か?!
 しかし、百合園生の多くが蟻の子を散らすように変熊選手から逃げていく中、一人の勇敢なる乙女が立ち塞がったぞ。
「その汚らわしいものをしまいなさいっ!」
 赤いフレームの眼鏡をかけた生真面目そうな乙女の名は、篠北 礼香(しのきた・れいか)。その白魚のような華奢な手には不似合いな、無骨なアサルトカービンがしっかりと握られている。
「汚れなき乙女達の前での変態行為は許しませんっ!」
 そう言うや否や礼香嬢、変熊がまたがった白馬の足下を狙ってアサルトカービンをぶちかます!
「うわっっ!? ちょっ、ちょっと待ってっ!!」
 礼香嬢の威嚇射撃に蹈鞴(たたら)を踏んだ変熊選手。両手を挙げて「降参」の意志を示すが、礼香嬢の銃口は変熊選手に向いたままだ。
「両手を挙げる前に、隠しなさい!」
 それは礼香嬢の仰る通りで。すごすごと脱ぎ捨てたマントを身につける変熊選手。このままレース終了まで百合園正門前で「説教確定か?!」と思いきや。アサルトカービンをしまった礼香嬢、変熊選手の白馬の後ろに飛び乗った?!
「あなたのパートナーは私が勤めます。再び変態行為を行わないよう、私がしっかりと監視しますから」
 変熊仮面よ、百合園のオネーサマを怒らせた代償はあまりにも大きいぞ…。
「ほら、早く行きますよっ。皆さん、もう出発しています!」
 礼香嬢に尻をパシリと叩かれた白馬は、先ほどまでの変態行為など無かったかの如く、未だ混乱収まらぬ第一チェックポイントを颯爽と走り去っていく。
 そして、変熊選手&礼香嬢のペアを見送る奇特な乙女が一人。
「待ってよ、変熊〜」
 変熊選手が薔薇の裸族ならば、彼女はまさに百合の裸族。雪が降ろうが槍が降ろうが一年中チューブトップに、へそだしマイクロミニの巻きスカートという常夏リゾート仕様のテレサ・エーメンス(てれさ・えーめんす)嬢だ。
 変熊選手の出場を知ったテレサ嬢は、ペアを組もうと待ち伏せていた様子。ヴァイシャリーの治安維持のためにも、裸族ペアが実現しなかったことを神様に感謝だ。


「あの変熊さえパートナーが見つかったのに…」
 走り去る薔裸族を見送りながら、悔しそうに呟いたのは、ドラゴニュートのブルーズ・アッシュワース(ぶるーず・あっしゅわーす)選手だ。如何にも厳ついドラゴニュートの外見が災いしてか、パートナーとなる女生徒探しに苦戦しているようだった。
「同行してくれる女生徒が見つからないとは、残念なことだ」
「そう? 何だかやたらと嬉しそうに見えるのは気のせいかな?」
 人の悪い笑みを浮かべながら応えたのは、薔薇学生黒崎 天音(くろさき・あまね)だ。正門前に着くなり等身大ジェイダス様フィギアに走り寄った黒崎選手。先ほどから何やら熱心に細工をしているようだ。不審に思ったブルーズ選手が、黒崎選手の手元を覗き込む。
「天音、何をやっているんだ?」
「ん………これ? ほら、素適にできたよ、キミの同行者。美人だよね」
 そう言って、黒崎選手が見せたジェイダス様は…見事なメイクがほどこされ、妖艶なる美女に化けて…いた…。
 言葉もなく呆然と立ち竦むブルーズ選手に、黒崎選手は追い討ちをかける。
「で、僕の同行者は彼女」
 黒崎選手は、驚愕覚めないブルーズ選手に一人の百合園生を紹介する。見るからに清純そうな乙女の名は清良川 エリス(きよらかわ・えりす)。ピクニックか何かと勘違いしたのだろうか。手作り弁当が入った大きなバスケットを胸に抱えている。
「清良川エリス言いますぅ。今日はよろしゅう頼みますなぁ」
 自分はしっかりと京美人を獲得しつつ、相方にはミス・ジェイダスを押しつけるとは、黒崎選手の奸計侮りがたし。ブルーズ選手の胸中は言わぬが花だ。


 次々とお目当ての相手と走り去っていく百合園生を尻目に、眠そうに目をこすっている少女がいた。昨晩遅くまでかかってヴァイシャリー中に罠をしかけて回ったという、レロシャン・カプティアティ(れろしゃん・かぷてぃあてぃ)だ。
 罠といっても、誰かを傷つける類のものではない。バナナの皮だと言うのが本当ならば、罠と言うよりも可愛い悪戯である。
 うとうとと今にも眠りそうになっているレロシャン嬢に声をかけたのは、ピンクの髪の王子様、薔薇学生のリア・ヴェリー(りあ・べりー)だ。
「僕とご一緒していただけませんか?」
「…ふわぁ、こちらこそ…よろしく…お願い…しますぅ……」
 礼儀正しく同行を申し込むリア選手に応えたレロシャン嬢は今にも眠りそうな勢いだ。
「すごい眠そうですけど、大丈夫ですか?」
「…ふわぁ…い、大丈夫…です…罠作り…頑張りすぎちゃいました…」
 そう言いつつも、レロシャン嬢のまぶたは今にも閉じそうだ。
「とりあえず馬には乗れそうですか? できれば罠を仕掛けた場所を教えてもらえると助かるのですが」
 リア選手はレロシャン嬢に手を貸すと白馬に乗せた。今にも眠ってしまいそうなレロシャン嬢を後ろから抱きしめるように支えてやる。
「さぁ、行きましょう。しっかりと捕まっていてくださいね」
 そう言いつつもリア選手は、眠り姫をゆっくりと眠らせてあげようという配慮だろう。静かに歩くよう白馬を促した。まさに薔薇の王子に相応しい振る舞いだ。
 と、そのとき。眠り姫とともに正門前を出発した王子様に向かって、甲高い声が投げかけられた。
「ピンクの髪の王子様〜!!! あなたの珠ちゃんですよぉ〜!」
 百合園生の格好をしているが、その中身はリア選手の契約者・明智 珠輝(あけち・たまき)だ。リア選手が気がつかない振りをしたのは、言うまでもない。