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第2回ジェイダス杯

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第2回ジェイダス杯

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第五章 寄り道大好きッ!

 ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)は、はばたき広場にあるカフェテラスにいた。落ちついた深緑色のパラソルの下、丸いテーブルに?杖をついたダリルは、苦笑いを浮かべながらエスプレッソを口元に運ぶ。
 視線の先には、ダリルの契約者であるルカルカ・ルー(るかるか・るー)とメイド服に身を包んだ少女の姿があった。彼女達はレースの真っ最中のはずなのだが、どう贔屓目に見ても、ただの浮かれた観光客だ。
 ルカルカと一緒にいる少女は、彼女と一緒に走る約束をしていた百合園生アリス・ハーバート(ありす・はーばーと)だろう。アリスはルカルカの腕をつかむと、いかにも年頃の女の子が好みそうな可愛らしい露店に向かって走り出す。
「ルカルカさんっ、あれ! あそこのワッフルがすっっごく美味しいんですよ!」
「どこどこ? うっわぁ〜かっわいいお店〜!!ワッフルもすっごく美味しそうっ」
「ぜひ、食べてみてくださいっ。オススメですよ!」
 薄紙で包まれたワッフルを購入した二人は、幸せそうな表情でかぶりつく。
「美味しいっ!!」
「でっしょ〜!」
 あんなに嬉しそうに笑うルカルカをダリルが見るのは久しぶりだ。ルカルカの所属校は、規律に厳しいことで有名なシャンバラ教導団。こうやって人並みの女の子として過ごせる時間は、滅多にあるものではないが。
「いい加減、レースに復帰してもらわないと、私が準備したねぎらいも無駄になってしまいそうだ」
 テーブルの上には、ダリルがルカルカとアリスのために用意した花束とクッキーの包みが2つづつ。ゴールのときに渡してやろうと、用意しておいたのだ。
「さて、どうしたらレースに戻ってくれるものか…」
 しかし、ここヴァイシャリーは多くの人々が憧れる風光明媚な観光地である。
 実際に、レースを忘れて観光を楽しんでいる選手はルカルカとアリスだけではないようだ。はばたき広場の外周を回るように、ゆったりとゴンドラを漕いでいるのは蒼空学園のシルバ・フォード(しるば・ふぉーど)だ。
 ゴンドラには、如何にも貴族の娘といった服装の雨宮 夏希(あまみや・なつき)と、メイド服に身を包みかいがいしく二人の世話をする高務 野々(たかつかさ・のの)の姿があった。
「お疲れになったのでないですか、シルバ様。お茶を淹れましたので、よろしければ休憩なさってください」
「おっ、サンキュー。気が利くじゃん」
「私もお弁当を用意しておいたんですよ。こちらも一緒に食べましょう」
 ご丁寧にも女性陣はティーセットとお弁当持参である。気分は完全に両手に花のピクニックだ。
 はばたき広場からもほど近いレストランでは、これまた薔薇学生の小林 翔太(こばやし・しょうた)が、見るからに幸せそうな表情でメニューを覗き込んでいる。
「ハンバーグとカレーライスを5人前と〜。あっ、ヴァイシャリーってお魚が美味しいんだっけっ。魚料理も捨てがたいな〜」
 対して、翔太の向かいに座った百合園生笹原 乃羽(ささはら・のわ)は、レースの先行きが気になるらしく、テーブルを指先で叩いている。
「ちょっと、いつまで迷っているのよっ。さっさと食べて、レースに復帰するわよ」
「笹原さんも遠慮なく頼んでよ。もちろん僕のおごりだから。あ、すみませ〜ん、注文、お願いしま〜す!」