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【学校紹介】少年は空京を目指す

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【学校紹介】少年は空京を目指す

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「大丈夫や、俺様に任せとき!」
 自信満々に胸を張る劉 邦(りゅう・ほう)に、聡は気圧されつつも頷いた。
 威勢よく飛び出したは良いものの、またも失敗続きの聡は、近くにいたナンパ組の邦へ助けを求めたのだ。
「ええか。まずは俺様が不良のフリをして女の子に絡む。その女の子達を聡が助けてキッカケを作るっちゅー作戦や。ぬかるんやないで」
「おお、任せとけ!」
「ほな、行こか!」
 ひそひそと小声で言葉を交わし、勢いよく振り向いた邦は、そこでぴたりと動きを止めた。
 彼の正面には、いつの間に現れたのか、一人の少年が腕組みをして立っている。
「おや、変わったアルバイトをしていますね?」
 にっこりと笑顔で邦を向く鳴海 和真(なるみ・かずま)は、その表情とは裏腹に、ぐっと拳を握り締めている。
「あ、あのな、これは……」
 冷や汗を浮かべて後ずさる邦へ、和真はじりじりと距離を詰めていく。
「アルバイトをしていると聞きましたが、まさかナンパのお手伝いとは」
「違うんやってカズマ、これはその、たまたま……」
「バカは死ななければ治らない……という事で死んでもらっていいですか?」
 さらりと口にされた宣告に、邦は素早く聡を向いた。
「に、逃げろ聡ィ!」
「お、おう!」
 その言葉を聞くや否や、聡は振り返らずに走り出す。
 しかし和真は、彼を追うことなくすぐに携帯を取り出した。同じ風紀委員として空京に来る前に繋がりを設けておいた夕条 媛花(せきじょう・ひめか)の番号を呼び出す。
「鳴海です。ナンパの首謀者を見つけました。現在はミスドの方向へ逃走中」
『り、了解しました。聡さんですよね、すぐにサクラさんたちに連絡します!』
「お願いします。僕も身内の取り締まりが終わったらすぐに向かいますね」
 そう、聡とサクラの件は、聡たちナンパ組一行の派手な振る舞いやサクラの暴走の甲斐あってか、すっかり周囲に知れ渡りつつあったのだった。
 通話を切った和真は、すぐに縮こまる邦へと向き直る。
「覚悟はよろしいですね?」
 

 ◆◆◆


 和真の連絡を受けた媛花は、傍らの夕条 アイオン(せきじょう・あいおん)へと向き直る。
「行こう、ナンパを止めさせなくっちゃ」
「あの、お姉ちゃん、ナンパって何ですか……?」
 アイオンは、不思議そうにきょとんと首を傾げてしまう。
 媛花は答えようとして口を開くものの、すぐに困ったように同じ方向へ首を傾げてしまった。
「その、良くわからないけど……とっても不健全なものだし、学生の私たちがしちゃいけないことだよ……って、あれ!」
 言い終える寸前、媛花は遠く離れた建物の陰に聡の姿を見付けた。見覚えのある姿だ、おそらく間違いは無いだろう。
 聡も、すぐに不穏な視線に気付いたらしい。媛花たちが走り出すのとほぼ同時に、反対の方向へと逃げだした。
「待ちなさい! 私たちは、天御柱学院の生徒だよ? その自覚を持って、学院外でも節度有る行動を心がけて、学院の名を汚さないようにしないと!」
 アイオンの耳がぴくぴくと動き、入り組んだ道でも、聡が逃げる方向をその足音から的確に判断する。
 そこに陸上経験のある媛花の足が加われば、聡が逃げ切れるはずもなかった。

 その距離は、段々と縮まっていく。


 ◆◆◆


 その頃サクラは、空京を駆け回って聡を探していた。
 彼女の頭の中では、真里亜に言われた内容がぐるぐると廻り続けている。
(そんな……聡さん……!)
「落ち着け、サクラ。きっとすぐに見付かる」
 追いついたアリサは、焦った様子でサクラを宥めている。翔に連絡を取ったは良いが、今頃彼が聡と共にいるのかは分からなかった。
 そんな二人の元へ、不意に歩み寄る影があった。
「サクラ、サクラ。聡を探してるならボクも一緒に探してもいーい? ボクが見つけたらご褒美に聡との馴れ初めとか聞かせてほしいなっ」
 無邪気な声でそう問い掛けるミルト・グリューブルム(みると・ぐりゅーぶるむ)を、サクラはきょとんと見下ろす。
「馴れ初め……?」
「うん。だって、すごく仲良さそうだし気になるんだもんっ!」
「仲が良さそう……かしら?」
「うん!」
 不安げなサクラの問い掛けにも、ミルトは他意なく笑顔で返す。彼に付き添うペルラ・クローネ(ぺるら・くろーね)も、柔和な微笑みを浮かべて頷いた。
 それを聞いたサクラは、ぱっと表情を輝かせた。幾らか落ち着きを取り戻したらしいサクラの様子に、アリサもほっと一息を吐き出す。

 穏やかな空気が流れ掛けた、その瞬間だった。

「どけどけー!」

 焦燥に駆られた聡の声が響き、直後、曲がり角から全速力で駆けてくる聡の姿が見えた。
「聡さん!?」
 サクラがはっと目を見開く。その声で聡もサクラに気付いたらしい、げ、とその表情が引き攣った直後、聡は盛大にその場で躓いた。
「おっ、とっとっと……わっぷ」
 ふらふらと必死に体勢を保ちながら前進した聡は、ペルラの正面で遂に前のめりに倒れ込んだ。
 その豊満な胸の合間へ、ぽすりと聡の顔が埋まる。
 直後、パシンと乾いた音が響き渡った。
「い……ッてええええ!」
「……聡さんには、おしおきが必要なようですわね」
 聡の頬に平手打ちの一撃をくらわせたペルラは、ぱんぱんと手を払いながら言い放つ。
 片頬を赤く染め不満げに唇を尖らせた聡が反論しようと口を開いた直後、押し倒す勢いで彼へ抱き付く女性の姿があった。
「聡さん! 良かった、不純同性交遊の最中ではなかったのね」
「ふ、不純どう……? なんだそりゃ」
 訳がわからない、といった風に首を傾げる聡に、サクラは安心したように微笑んだ。
 そして、何気なく問い掛ける。
「それで、翔さんと何をしていたの?」
「! いや、その、それは……遊んでたんだよ、うん」
 途端に表情を引き攣らせた聡が、歯切れの悪い言葉を紡ぐ。
 そこへ丁度、合流した和真と媛花、アイオンが駆け込んできた。
「あ、良かった……ナンパはもう止めたんですね」
 安心したような媛花の言葉に、ぴしりと場の空気が凍る。
 サクラの表情から、さっと笑みが消える。聡は背筋を冷や汗が一筋伝うのを感じた。
「ナンパ……?」
「いや、その、あー……」
 ぎこちない笑みを浮かべた聡が、必死に言葉を探し求める。
「ナン……ナンパーティ? そうそう、ナンでパーティを」
 しかしその甲斐も虚しく、言葉の途中でサクラの手ががっしりと聡の手首を掴んだ。
「聡さん。どうやら、じっくりとお話を聞かせてもらう必要があるようね」
「ご、誤解だサクラ! 落ち着けって、な、これには訳が」
「言い訳は後でゆっくり聞かせてもらうわ。では皆さん、ご迷惑をお掛けしました。アリサ、先に戻っているわね」
「あ、ああ」
 ずるずると聡を引き摺るようにして歩いていくサクラを見送り、アリサは小さく肩を竦める。
「とんだ休日になってしまったな……」
 それとほぼ同時に、息を切らせた翔が駆け寄ってきた。遠く離れていく聡の悲鳴に大まかなところは察したらしい、アリサと同様に肩を竦めて見せる。
「やれやれ、だな」
「……翔。そなたもナンパをしていたのか?」
 じとり、とアリサの目が翔を向く。翔は苦笑を浮かべ、頷いた。
「ああ。イコンの戦闘技術に繋がると言われてな。……だが、俺にはまだ早いみたいだ」
「当たり前だ。そんなことをしている暇があったら、訓練に戻るぞ」
 呆れたようなアリサの言葉に頷き、翔もまたアリサと連れ立って歩き出す。
「さて……巡回に戻ろうか」
 和真は媛花とアイオンへ呼び掛け、共に空京を巡り始めた。



 イコンという名の未来を背負う、天御柱学院。
 生徒たちは今日も、恋に訓練に友情に、忙しい日々を送り続ける。
 来るべき日に備え、確かな絆と思い出を手に入れるために。



担当マスターより

▼担当マスター

ハルト

▼マスターコメント

ここまでお読み頂きましてありがとうございました、担当マスターのハルトです。
こちらは友達作りが中心のシナリオでしたが、いかがでしたでしょうか。
アクションにご記入いただいた条件に出来る限り沿えるよう調整いたしましたが、
完全に条件に合致させることができなかった場合は、条件に近い方を紹介させて頂きました。
仲の良い友人や、シナリオをきっかけに出来た友人と一緒に、ゲームを楽しんで頂けると嬉しく思います。

また、例えば「同好会で何かを行う」といったアクションを仕掛ける場合は、事前に掲示板で仲間を集めて相談してからアクションをかけると、よりアクションの幅が広がるかと思います。
機会がありましたら、ぜひお試しください。

では、ご参加ありがとうございました。
またの機会がありましたら、よろしくお願いします。