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【学校紹介】イコンシミュレーター

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【学校紹介】イコンシミュレーター
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第二試合

綺雲 菜織(あやくも・なおり)
有栖川 美幸(ありすがわ・みゆき)
天海 総司(あまみ・そうじ)
ローラ・アディソン(ろーら・あでぃそん)
月谷 要(つきたに・かなめ)
加味 龍牙(かみ・りゅうが)
ジャン・ジャン(じゃん・じゃん)



雪ノ下 悪食丸(ゆきのした・あくじきまる)
緋山 政敏(ひやま・まさとし)
リーン・リリィーシア(りーん・りりぃーしあ)
八神 誠一(やがみ・せいいち)
伊東 一刀斎(いとう・いっとうさい)
飛鳥 菊(あすか・きく)


 ◇

「みんな、ちょっとこれを」
 言いながら、蒼空チームに小型インカムを差し出すのはリーン・リリィーシア(りーん・りりぃーしあ)
「やっぱり通信は必須だからね。シミュレータ上で反映されるといいんだけど……ええと、辻永くん?」
「問題ない。そのまま使えるはずだ」
「そうこなくちゃ」

 八神 誠一(やがみ・せいいち)がまず受け取り、パートナーの伊東 一刀斎(いとう・いっとうさい)に渡す。物珍しそうな一刀斎。
「ほう、いんかむ、とな」
「先生、向きが反対です。そっちは耳に掛けるほうで」
「おお、すまん……しかし、便利なものがあるのじゃな」

 続いて、雪ノ下 悪食丸(ゆきのした・あくじきまる)飛鳥 菊(あすか・きく)
 悪食丸が眼を輝かせる。
「おおっ! 助かるぜリーン。それにしても山葉のやつ、プログラム得意……ってレベルじゃねーな」
 それを聞いたメンバーが苦笑いをする。確かに、そうは見えないにも程があるというもの。
「インカム……か。シシリアの夏が懐かしいぜ」
 菊はしばし過去に思いを馳せているようだった。あまり立ち入らないほうが良いような。

 最後に緋山 政敏(ひやま・まさとし)。リーンは彼のパートナーだ。
「政敏、頑張ってね」
「ああ」
 彼の返事は素っ気ないが、体から伝わる全力の気配に、リーンは安堵する。

 ◇

「こちらの布陣はイーグリット3機、コームラント2機か……なかなか攻撃的だ」
 天御柱チームの中心で話すのは綺雲 菜織(あやくも・なおり)
「皆、ライフルが得意のようだな。ではまず、私と天海で斬り込もう。後衛は援護を頼む」
 天海 総司(あまみ・そうじ)が、了解だぜ、と頷く。
 コームラントの連携は月谷 要(つきたに・かなめ)に任された。
「まかせとけって! 皆でうまいマグロ食おうぜぇ」
「先陣ですか――菜織様、無茶はしないでくださいませ」
 心配そうに聞いてくるのはパートナーの有栖川 美幸(ありすがわ・みゆき)
「5人いるのだ。無茶はしたくてもできない」
「――そうでしたね」
 美幸は菜織の性格をよく知っているが、やはり心情としては複雑だ。

「そろそろ開始だ。よろしく」
 翔の声が響く。頷きあい、コクピットに乗り込む生徒たち。

「では、――第二試合、開始!」

 ◇

 ビルの谷間を音もなく進む八神。一刀斎は遙か後方のビルの上、のんびりとそれを見守っている。
「さて、機械相手にどの程度通用するか」
 瞬間、足下の道路が次々と爆ぜた。
「!?」
 ジャンプして避ける八神。
 その着地際にも――ライフルの光条が待っていた。
「ちっ!」
 左足のレギンスが削り取られる。傷は深くはないが、浅くもない。
「殺気看破が効かないのかぁ、イコンのコクピットは」
 眼前に現れるイーグリット。表情は伺いしれない。
 その搭乗者、天海とローラ・アディソン(ろーら・あでぃそん)は、仕留めそこなったことを悔しがりながらも、後衛の月谷 要(つきたに・かなめ)ジャン・ジャン(じゃん・じゃん)へキャノンの要請をする。
(ローラ、後衛の状況は?)
(3秒後と7秒後にキャノンが来ます!)
(OK!)
 精神感応により、一瞬でこのやりとりをする。即座に天海機は距離を取り、ライフルで牽制射撃を行なう。
 しかし八神はコームラントの射線上には入ってこない。が、気配もなく高速で飛来するビームをイメージし続けることは難しかった。
 その時、八神のインカムが鳴る。緋山からだ。
「八神、少し戻ってくれ――俺がイーグリットの退路を絶つ」
「……了解」
 八神としては少々不本意だが、仕方ない。
 ビルの壁を蹴りながら、緋山がイーグリットの後ろに姿を現す。
(挟まれた!?)
(いえ、総司さん――菜織さんが)
「てぇええいっ!」
 気合いとともに、菜織機のビームサーベルが緋山の胴を薙ぎ払う。
 咄嗟にスウェーでかわす緋山。
「後ろはとらせんよ」
「ロボットでその太刀筋とはな」
 言いながら、緋山は低空バーストダッシュで菜織機の懐へ飛び込む。
 振り下ろされた刀の光条兵器を、菜織はサーベルで受け止める。
 鍔迫り合いに持ち込まれる瞬間、緋山の右手が翻り、雅刀にかかる。
「――食らえ!」
 雅刀の柄が、菜織機の正面装甲を思い切り叩く。ビルを5つほど倒壊させながら、もんどりうって倒れるイーグリット。しかし。
「美幸、ダメージはどうだ」
「装甲13%、総合8%……活動に問題ありません」
「ずいぶん頑丈だな」
 呆れるような声を出す緋山。
 菜織機は体制を整えると同時に、ビームライフルを2連射する。
 トリガーは美幸だ。それは正確に緋山の両脇を掠める。
「!」
 一瞬で音速近くに達したイーグリットが、サーベルの間合いに入る。既にトリガーが菜織に移っており、ライフルの光条も消えぬ内に、緋山を逆袈裟に切り上げる。
「ちぃっ!」
 左手の光条兵器では間に合わない。咄嗟に右手で雅刀を抜き、サーベルを受け止める緋山。感嘆する菜織。
「得物が同じであれば、私の負けだったな……」
 直後、緋山の雅刀は弾け飛ぶ。

 ◆

「緋山 政敏、離脱」
「ぷはぁっ、やられるとは思わなかったぜ……まあ、向こうは2人で1人みたいなもんなんだよな」

 ◆

 前線では、少し遅れて八神と合流した悪食丸、それに対して天海と加味 龍牙(かみ・りゅうが)のイーグリットが乱戦模様になっていた。
 これだけ集まるとキャノンでの援護ができない。月谷が回線を開く。
「もうちょいバラけてくれ、こっちも前へ出る。……ヤバかったら逃げるが」
 ローラが答える。「了解。何とかしてみる」
 巨大な金砕棒を持った悪食丸が、龍牙のイーグリットと渡り合っている。
 ライフルの隙をかいくぐり、脚部に一撃。崩れ落ちる龍牙機。
「関節が弱いと思ってたぜ! これで決める!」
 背後に回り込み、腰椎に向けて渾身の一撃。とどめを食らい、イーグリットは大破。
 この訓練初の、近接によるイコン撃墜である。
「よっしゃあ! 次来い!」
 ふと見上げると、上空にはパラシュートが舞っている。龍牙は脱出していた。ということは。
 悪食丸が状況に気付いた時には、背後に接近してきたコームラント陣の射線上にいた。
 月谷が叫ぶ。
「キャノン発射!」
「くぅっ!」
 振り向きざまに遠当てを放つ悪食丸。キャノンの弾道がそれと交錯する。
 ――が、射程の差で僅かに及ばなかった。

 ◆

「加味 龍牙、離脱」
「雪ノ下 悪食丸、離脱」
「くそぉ! ビームが長え!」

 ◆

 左脚を負傷した八神のサポートに入った菊。
 周囲の建物をスプレーショットで瓦礫にし、その陰からイーグリットを狙う。が、天海機の速度を捉えるのに苦心していた。
「ったく、ロボットのくせに戦闘機みてぇじゃねーかよ!」
 八神から通信が入る。
「飛鳥さん、僕が空中に出ます。その隙を」
「Si、分かったぜ! ……空中?」
 菊が八神の方を見ると――サンタのトナカイが迎えに来ていた。
「はいやっ!」
 八神は直にトナカイにまたがると、空中へと飛び立った。
(なんだありゃ!)
 天海も思わず動きを止める。
 イコンに対峙する10メートルの人間と、それを乗せるトナカイ。しかも空中。
 呆然とする菊。
「すげぇ……これはこれで裏社会、だな……」
 八神は天海機めがけて銀の飾り鎖を投げつける。サーベルで斬払う天海。その隙に懐に潜り込む八神。ブライトグラディウスが閃く。
「人が操るものなら、気配など関係ない――いいことを教わりました」
 真下からイーグリットを切り上げる。
 天海機の右肘から先が吹っ飛んだ。サーベルが回転しながら地面に突き立つ。
(まずい、離れるぞ!)
 全力でバックブーストを吹かす天海。そこへ。
「逃がさねぇぜ!」
 菊は高層ビル上に飛び移り、シャープシューターを放つ。それは正確に天海機の頭をとらえた。
(総司さん、レーダー破損です!)
(くそっ! ――月谷、場所は分かるか?)
「おう!」
 射線の元へ、コームラント2機の一斉射撃が押し寄せる。
「うわっととと!」
 一帯のビルが軒並み吹っ飛ぶ。高層ビルだったため、菊は足場を失い、そのまま瓦礫に埋もれてしまう。

 ◆

「飛鳥 菊、離脱」
「ちくしょおおお!」

 ◆

 空中では菜織機と天海機が、トナカイ相手に中距離からライフルで牽制射撃を始める。というより、他に選択肢がない。
 菜織機は緋山戦で膝のアクチュエータを損傷、天海機は頭部破損でレーダーに頼れない状況だが、空中機動においてはまだトナカイよりも分があった。
「……さすがにもう、斬り合いに付き合ってはくれぬかの」
 一刀斎が重い腰を上げるも、すでにタイムアップは目前だった。

 ◇

「第二試合――2対4、天御柱学院の勝利」

 ◇

 シミュレータから出てきた菜織と美幸を、緋山とリーンが迎える。
「ほら、挨拶挨拶」
 リーンが促す。
「……今日はやられたぜ。良いチームじゃないか」
「いや、イコンの性能に助けてもらっただけだ。次は勝てないだろう」
 そんな会話をひとしきり続ける。
 背後にいる美幸は口を出さないが、何か髪が逆立っていく気配を感じる。
「じゃあ、最後に握手握手。今後ともよろしくね!」
 そこで飛び出す美幸。
「宜しくお願いしますっ!」
 リーンと緋山の手をわっしとつかみ、ぶんぶんと振る。
「こら美幸。……すまん、悪気はないのだ。改めて、こちらこそ宜しく頼む」