リアクション
『ゆるり一人旅』
それは、各地の観光地を紹介する旅番組だ。
毎回リポーターが一人旅をしながら地方料理や温泉宿を味わいつくす。
バラエティのような高い視聴率こそないものの、安定した固定客を抱えている為、視聴率が落ち込む事もない。
その番組内の1コーナー、『今週の秘境の湯』にて、旅館・薫風が紹介されていた。
「どうも、『今週の秘境の湯』今回のリポーターは私、メトロが勤めさせていただきまっす!」
カメラ目線もばっちり決めるメトロ、喋り方が少し露骨すぎたかも知れないが、テレビなんだからこれくらいやってもいい。
「今回紹介するのはこちら、温泉旅館・薫風」
独特の丸い浴槽が画面に映し出される。
「実はこの温泉、涸れて出なかった時があるんですよ、信じられます? 女将の皆川縁さんに詳しい話を聞いてみたいと思います」
画面が切り替わり、縁が映し出される……なんとなく震えているように見える。
「縁さん、温泉が涸れた時は、さぞかし大変だったんじゃ〜ないですか?」
メトロが縁にマイクを向ける、実際は音声さんが別のマイクで録っているのだが、まぁ、それもお約束。
「は、はい、でも涸れたおかげで、たくさんの素敵な出会いもありました」
「あー、例の復活劇ですね」
ここで解説用のテロップが流れる、説明としてはやや強引だが、1コーナーに割ける放送枠はとても少ないのだ。
「あ、これですか? その時に描かれたという……」
まるで今見つけたかのようにメトロが指差した先には、一枚の絵画が飾ってあった。
「はい、これは私の宝物なんです」
その絵をとても愛おしそうに見つめる縁……
そこには……薫風をバックに立つ縁と従業員達が描かれていた。
澄んだ青空の中に師王アスカのサインがある。
「なにかつらいことがあった時、この絵が私を支えてくれるんです、私は一人じゃないんだ、って」
気付く人は気付いただろうか……絵の中の縁の目は少しだけ、赤くなっていた。
「う〜ん、素晴らしい旅館でしたね、来週はリウマチに効く温泉の特集です、お楽しみに〜」
番組はここでCMに入る……もういいや、とチャンネルを変えたのは、貴方の手かも知れない。
ありがとうございました(ぺこり)
最初は本当に書けるのかどうか、少し不安でしたが
皆さんの素晴らしいアクションの数々に助けられ、なんとか形になりました
実は『アクションが偏らないか』シナリオ構築当初から不安で不安で……
もしも全員で源泉調査に行かれたらどうしよう、みたいな。
蓋を開けてみれば、割と均等に分散してたのがとても助かりました
欲を言えば、覗き要員がもう少し欲しかったかな〜、なんて(笑)皆さん紳士ですね♪
色々ありましたが、お話を書いていて、とても楽しかったです
これで皆さんにも楽しんでもらえたら、すごく幸せです
※1月7日 一部修正を加え、リアクションを再提出しました。