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リアクション
15:00 温泉はじめました
「ほらリタ、はやくはやく!」
温泉復活と聞いて真っ先に動いたのはベネデッタ・カルリーニ(べねでった・かるりーに)だ。
「わ、ベネデッタ、そんなに慌てなくても温泉は逃げないよ」
リタ・ピサンリ(りた・ぴさんり)の制止を振り切るどころか、無理やりリタを担いで温泉へと驀進する。
「温泉が、温泉が、温泉が、女体が! 私を待っているのですっ! ハァ、ハァ……」
息が荒いのはリタを担いでいるという運動量から、というわけではなさそうだった。
脱衣所に入ると、なぜか「見通しのいいポイント」を探し位置取る。
「ベネデッタ、なんでこんな通路の真ん中で着替えなきゃいけないの?」
見通しのいい場所、ということは当然そうなる……だがベネデッタは恥ずかしがるリタを気にも留めない。
「ミケランジェロいわく、服を脱ぐ時には中央に立て、です! 芸術的観点で言えばここで着替えるのが最適なのです」
……ミケランジェロはそんな事言ってない。
だがベネデッタがどうしてもとダダをこねるので、リタはしぶしぶそこで服を脱ぐ。
そんな二人より少し遅れて、他の入浴客が脱衣所に入ってきた。
「ふふっ、まだ結構空いてるみたいね」
芦原 郁乃(あはら・いくの)がおもむろに服を脱ぎだす。
あらわになった体にベネデッタは釘付けだ。
(胸こそまだ発育途上ですが、服を脱ぐというのに恥ずかしがることなく、ごく自然なその動作、ただものじゃないです)
まじまじと見られているのだが、郁乃にそれを気にした様子はない、身を隠せるタオルを取ろうともしなかった。
そんな郁乃に習って秋月 桃花(あきづき・とうか)も素肌を晒す。
(オ、オオゥ! こちらのお嬢様の胸はなかなか……Dreamの詰まったDカップでしょうか……さぞかし揉み応えが……)
ジュルリ……ベネデッタの口から思わずよだれが垂れる。
「お、お姉ちゃん達、少しは隠しましょうよ〜」
顔を赤くする荀 灌(じゅん・かん)の体には、しっかりとバスタオルが巻かれている。
「えー、荀灌達なら別に見られても恥ずかしくないけど?」
(ですが、Angelのような穢れなき美しさ……Aカップの魅力も捨てがたいのです)
先程からベネデッタがガン見しているのだが……郁乃はまったく気にしていない。
「ほら荀灌ちゃん、タオルなんかで隠さないのよ」
タオルを剥ぎ取ろうと桃花が迫る。
「嫌ぁ、お姉ちゃんやめてよ〜」
逃げ回る荀灌、ベネデッタはそんな彼女達を食い入るように見つめる。
(そこです、右から回り込んで……あぁ惜しいっ!)
一瞬桃花の手がタオルに掛かったものの、荀灌が素早くしゃがみこみ、手が外れてしまう……
激しく悔しがるベネデッタ……と、そこへ……
「ベネデッタ、そろそろ入ろう」
服を脱ぎ終わったリタが後ろからベネデッタを引っ張る。
「あぁ、リタ、今が! 今がいいところなのです」
「うん、この旅館は本当に良い所だよね、来てよかったよ」
「や、そうじゃなくっ……あぁ」
見ると荀灌は後ろから桃花に羽交い絞めにされていた。
「桃花お姉ちゃん、離してください、離して!」
「ふっふ〜ん、悪い子にはおしおきしなきゃね〜♪ 桃花、しっかり押さえてるのよ」
「はい……ごめんね、荀灌ちゃん」
「郁乃お姉ちゃん? それだけは……それだけは嫌ぁぁ!」
両手をわきわきさせながら、身動きの出来ない荀灌に郁乃が迫――
――そこでベネデッタの視界を戸が遮る、大浴場に入ったようだ。
(む〜、あと少し、あと少しで嬉し恥ずかしお楽しみシーンでしたのに……)
あの後の展開を思うと悔しさがこみ上げるベネデッタだった。
「すいません、ここ、いいですか?」
リタが誰かに話しかけている、自分達が浸かる場所を確保しようとしているらしい。
「はい、どうぞ」
緑色の長い髪が水面に漂っている。
魅蘭・ルーンヒルト(みらん・るーんひると)はリタたちの邪魔にならないようにと髪の一部に手を伸ばすと、そのままくるくると手に巻きつけ、しばし弄ぶ。
「なんて綺麗な髪……」
女体への欲望を忘れ、見とれるベネデッタ、隣でリタも羨ましそうに見ている。
「ふふっ、お手入れが結構大変なんですよ」
二人が座ったのを確認すると再び髪を湯に流す。
「もしかして、この温泉には髪の保湿成分を高める効能が?!」
まるきり当てずっぽうで聞いてみたリタだったが、どうやら正解らしい。
「はい、痛んだ髪にも良いらしいですよ……動物の毛並みにも……」
うさぎが湯に浸かっている……ペットのミルフーユだ。
イマイチ信じがたい効能だったが、彼女が言うと説得力がある。
「じゃ、さっそく……」
と、リタはお湯をたらいに汲むと、ベネデッタに頭からかける。
「きゃっ! リタ、いきなり何するですか?」
突然のことに驚くベネデッタ。
「ベネデッタの髪がまっすぐになったら面白いなって……」
えへ、と舌を出すリタ。
「私の髪はこのままで良いんです! それより、リタの髪こそなんとかしないと……」
と言ってお湯をかけ返す。
「やったな、えいっ!」
たちまちお湯のかけ合いになった、しかし……
「きゃっ!」
流れ弾……ならぬ流れ湯が東峰院 香奈(とうほういん・かな)を直撃する。
「あ、ごめんなさ……オオゥ!」
巻きつけたタオルが濡れて、体にぴったりと張り付いていた。
タオルごしに見える香奈のプロポーションに、再びベネデッタの血が滾る。
走り出した衝動はもう止まらない。
(やっぱり温泉はサイッコーですっ!)
「こういう温泉には必ずと言っていい程、害虫が現れるはず……」
皆が癒しのひとときを過ごす温泉にあって、ガートルード・ハーレック(がーとるーど・はーれっく)は臨戦態勢を崩さない。
例えば、大浴場周囲の岩場の影に潜んでいるかも知れない。
例えば、脱衣所に忍び込んでいるかも知れない。
例えば、遠方に見える山々から望遠鏡で見ているかも知れない。
奴らが何時、何処に現れても残さず焼却する。
その意思がガートルードをここに立たせているのだ。
「ミナのやつ、何処に行ったんだ?」
意識を取り戻したミナの為に水を汲みに行っていた泉 椿だったが、水を汲んで戻るとミナは何処かへと消えていた。
嫌な予感がした椿は大浴場にやってきたのだ。
ミナの姿を探していると、周囲を見回しているガートルードに気付いた。
この人ならミナを見ているかも知れない。
「あの、ちょっと聞きたいんだけど……」
ミナの外見的特長を説明する。
「いいえ、残念ですが……もし見かけましたら、何か伝えておきますか?」
「いや、いい……アイツのことだから余計な迷惑をかけるだろうしな……」
もう既に誰かに迷惑をかけているかも知れない……そう思うと頭が痛くなる椿だった。
「早く見つかると良いですね……」
いったいどんな人物なのだろう……気になったガートルードが周囲を探してみると……
「? ……あれは……いったい……」
ボートが湯船に浮かんでいた……誰かが持ち込んだおもちゃだろうか? ……妙に気になる。
よく観察してみると、ボートは一定の法則性を持って動き回っていた……それは入浴中の女性が必ずボートの正面に来るような動き……
「!!」
たちまちガートルードの勘がその可能性を告げる……盗撮だ、間違いない。
「……見つけましたよ、変態! この私が今、焼却して差し上げます!」
その宣言とともに杖を構えるガートルード、攻撃魔法の術式が展開されていく……
(くっ、見つかりましたか……)
まだダンボールの中にいたエッツェル・アザトースに戦慄が走る。
ガートルードはエッツェルにまったく気付いていないのだが、完全に誤解していた。
(このままでは狙い撃ちになります、逃げなければ……)
ダンボールの内側、緊急用と書かれた部分に手を伸ばす……その数秒後、ダンボールは爆砕した。
「よくぞ見破りました、ですがこのまま捕まる私ではありませんよ!」
ダンボールから開放され、自由を得たエッツェルが大浴場を駆け回る。
「まさかもう一人いるとは……迂闊でした……ですが、やらせません!」
新たな変態へと標的を切り替えるガートルード。
一方、ボートの方はというと……
「見つけたぞ、ミナ」
「つ、椿さん?!」
ボートを操って盗撮していた犯人、ミナを椿が確保していた。
「ああ、その画像データだけはお許しを……」
「こんなもの消去だ、消去」
ミナの悲痛な叫びが響きわたった。
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