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テロリスト強襲!? 学園の危機!!

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テロリスト強襲!? 学園の危機!!

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第四幕:事件解決

「掃討完了……」
 校舎の屋上、無骨なパワードアーマーに身を包んだ男が倒れ伏しているテロリストたちを見やって呟いた。大洞 剛太郎(おおほら・ごうたろう)だ。彼の後ろにはソフィア・クレメント(そふぃあ・くれめんと)の姿もある。
「相変わらずひどいですわ」
 ソフィアは剛太郎の行いに文句を言った。
「何を言うのですか。自分の行動は最善でありましょう」
「私を囮にしておいてよく言いますわ」
 そうなのだ。彼はソフィアに囮役となってもらい、注意が彼女に向いている間に敵を攻撃するという手法でここまで来ていた。
 だが彼女の身体に外傷は見当たらない。
「敵さんが本気で撃ってこなかったおかげで助かりましたわ」
 ソフィアは思い出すように先ほどの光景に思いを馳せた。

 屋上の扉を開けた直後のことである。
「おまえ! なぜこんなところにいる!?」
 目の前にはこちらに銃口を向けているテロリスト二人の姿があった。
「いえ……ちょっと道に迷いまして――」
 ソフィアはそう言うとフェンスに背中を預けながら反対側へと向かう。
「勝手に動くんじゃない!」
 テロリストたちがさきほどソフィアが出てきた扉に背を向けた時である。
 剛太郎が屋上へ姿を現したのだ。そこからの行動は的確と言う他はない。
 相手の手足を狙い、武器を落とさせるとそのまま近づき首めがけて銃を振りかぶる。
 敵を殺さず、昏倒させるだけに留める方法を彼は選んでいた。

 そして今に至るのである。
「わかってます? あれ私がいきなり撃たれてたら大変だったんですよ!!」
「あなたなら耐えてくれると信じておりました」
 その一言に思うところがあったのか、背を向けるとソフィアは言った。
「都合の良い人ですわね」
 光栄でありますと答える剛太郎の背後、気を失っていたはずのテロリストが彼に向かって銃を構えている姿をソフィアは視界の端に捉えた。
「剛太郎さ――」
 言葉は空からやってきた人物によって遮られた。
「蒼い空からやって来て、仲間の未来を護る者! 仮面ツァンダーソークー参上!!」
 口上を述べてポーズを決めたのは風森 巽(かぜもり・たつみ)だ。
 彼の足元には銃を構えたまま目を回しているテロリストの姿がある。
「ひどい現場を見てしまいました!」
 剛太郎が言うとソフィアが頷いた。
「背中に着地とはひどいですわ」
「我としたことがつい……ところで貴公ら、危ないところであったな」
「その点に関しては礼を言いますわ」
「礼はいらぬ。ところで先ほど仲間から連絡があったのだが貴公らはいかがする?」
 風森の言葉に何の事だと首をかしげる二人。
「あそこにいる御凪から連絡があった。人質たちは体育館にいると。そして地下に閉じ込められている人たちもいるらしい」
 彼の視線の先には校舎に向かっている御凪たちの姿があった。
 携帯電話を持っているところを見ると他の仲間達にも連絡をしているようだ。
「決まっています。人質を助けにいきましょう」
「では自分が先導しましょう!」
 大洞は言うが早いか、階段から下の様子を探りながら階下へと向かい始めた。



幕間:残された人々

「一時間くらい経ったかな?」
「どうだろうな。こう何も見えないところでじっとしてると感覚がぶれるからな」
 ダリルと柊が話していると扉の外が騒がしくなってきた。
「誰か助けにきてくれた!?」
「こんなところを見られるのルーはちょっと恥ずかしいなあ」
「そんなこと言っておる場合じゃなかろう」
 ルカルカのマイペースな発言にアレーティアがため息混じりに言った。
「危ないですから扉から離れていてくださいね!」
 声がした直後のことである。
 キィィィ、という高い音がセキュリティルームに響いた。
「ぞわぞわするからやめて!」
 柊は言うが答える声はない。
 しばらくすると扉が開いた。
 セキュリティールームの外にいたのは狩生を初めとする面々だった。
 知っている人物や知らない人物、正義のヒーローみたいな人を含め様々な仲間がそこにいた。
「んじゃ、最後の大仕事に行きましょうか」
 誰かが言った言葉に皆が頷いた。
 向かう先は体育館。人質のいる場所である。

                                 ■

「俺とやりあうならもっと腕を磨くんだな!」
 叫ぶと相手の懐に潜り込み、人体の急所を的確に打ち抜く。
「くそっ……がぁ!!」
 相対しているのは健闘 勇刃(けんとう・ゆうじん)とテロリストだ。
 ライフルを構えるテロリストに対して、健闘は素早い動きで近づき近接戦闘に持ち込んだ。相手の獲物を理解した上での戦術だった。
「こっちは終わったわ」
 そう言い、健闘に視線を送ったのは枸橘 茨(からたち・いばら))だ。その隣には熱海 緋葉(あたみ・あけば)の姿もある。
「茨がやってくれたよ!」
「緋葉さんが援護してくれたからよ」
 笑みを浮かべる二人。
 健闘はその様子を横に見つつ、相対しているテロリストに突撃した。
「これで終わりだ!!」
 叫ぶ。その時にはテロリストの視界から健闘の姿が消えていた。
 相手の横に飛び込み、背後に回ったのだ。隙だらけの背中が健闘の目の前にあった。
「よっと」
 頸動脈を狙い手刀を打ち込む。
 彼らの足元には倒れ伏すテロリストの姿があった。
 その様子を見ていたのであろう。近づく人影が彼らに声をかけた。
「見事じゃのう」
 炎のように赤い髪の女がそこにいた。
 織田 信長(おだ・のぶなが)だ。後から来たのは桜葉 忍(さくらば・しのぶ)である。
「俺を置いて行くなんてひどいな」
「ついて来ておるじゃろうが、問題ない」
 互いに自己紹介をしあう。
「それで忍はどうするんだ?」
「俺たちは人質を助けにいくさ」
「なら同行しよう。真人からも連絡あったしな。場所は知ってるか?」
「ああ、俺の方にも連絡があったからな」

                                 ■

 体育館の前、中の様子を窺っている人がいた。
 杜守 柚(ともり・ゆず)杜守 三月(ともり・みつき)だ。
 彼女たちは雅羅が体育館に連れ込まれるのを目撃していたのであった。
 しかしカーテンが閉め切られており、外から中の様子を見ることはできない。
「見学してただけなのに大変なことになっちゃいました」
「そうだね。でもあれから一時間くらいずっとこうしてるけど、どうする?」
 三月の言葉に柚が首を振る。意訳するとわからない、だ。
「僕がヒプノシスで眠らせている間に救出っていうのもありだけど……」
 中の様子が分からないのがネックであった。
「二、三人程度なら行けそうなんだけどね」
「困りましたよ……」
 右往左往していると彼女たちに近づく者がいた。
 健闘たちだ。彼らは社守たちに話しかけた。
「手伝いに来たぜ」
「た、助かります。中の様子が見えなくてどうしたものかと……」
 話し合うこと数分。計画が決まった。
「じゃあ行くよ!」

「あら?」
 雅羅は体育館に入ってきたテロリストを見て思わず声を上げた。
 そのテロリストは健闘を捕まえてきたのか、彼を連れてやってきたのだ。
 しかし――
(やけに小さい子ね……)
 それもそのはずだ。なにせ格好はテロリストの服装そのままだが、中身は柚である。
 身長が160cmに満たない彼女では不格好にもほどがあった。
 もちろんそんな彼女を本物のテロリストが見逃すはずもなく……。
「お前、なぜ一人で行動している?」
(そっちかよ!?)
 尾瀬が心の中でツッコミを入れる。
 ウイシアたちも同じことを思ったのか苦笑していた。
「……っ!?」
 近づいてくるテロリストの姿を見て柚が身体をこわばらせた。
 手を伸ばせば届く距離になったときである。

「あああああああぁぁぁーーーっ!!」

 尾瀬が突然叫び声を上げた。

 皆の視線を集め、口を押さえる仕草で笑みを隠しながら言った。
「つい叫びたくなっただけだしぃ。こっち見んなよ……危ないぜ?」
 テロリストはハッとして柚に振り返る。
「っと、不用心だ!」
 健闘の言葉通り不用心であった。
 銃という武器は直線的な攻撃しかできない。ゆえに少しでも射線が逸れてしまうと目標に対して効果はない。
 そのような武器を持って敵対する者に近づくというのは言ってしまえば自殺行為であった。
 さらに敵に背を向けたのだ。不用心以外のなにものでもない。
「がはっ!?」
 健闘の拳が相手の鳩尾に沈み込む、身体をくの字に曲げたところに手にした銃器で後頭部を殴りつけた。
「撃つだけが銃の使い道じゃないぞ……行けっ!」
 気を失い、テロリストが倒れこむのに合わせて枸橘と熱海が体育館へとなだれ込んだ。
「人質を取ろうとしても無駄よ!」
 枸橘が人質に駆け寄るテロリストに向かい、日本刀を振り下ろす。
 鈍い音とともにテロリストが床にたたきつけられた。
「まあ取られても斬られるのはあなただけなのですけど」
 あと敵が何人いるのかと枸橘が素早く体育館内を見回した。
 体育館の四隅に二組ずつ、テロリストの姿を確認する。
(計八人……思ったより多いわね)
 彼女の思考を読んだのか、健闘は叫んだ。
「後ろは無視しろ前の四人を狙え!」
 入口側にいた四人のテロリストは笑みを浮かべると健闘たちの背中に向けて銃を構えた。
 しかしそれが間違いだと気付いた時には遅かった。
「僕を忘れてもらっちゃ困るんだよ!」
「私もいるぞ!」
 三月と織田が背を向けたテロリストたちに強襲する。
「時間差攻撃ってのは基本だけど、それだけに効果的だ」
 桜庭は奇襲に成功した現場の状況を見て笑みをこぼした。
 彼の背後、集まってきた他の仲間たちが体育館に向かってきているのが見える。
「この様子を見るにそろそろいいんじゃありません?」
 その光景を見ていた雅羅が近くに座って様子を眺めている教員に話しかけた。
「そうだねえ。雅羅クンの言う通りもう十分かな」
 体育館に乱入してきた大勢の人物たちを見渡しながら言った。
 教員がいつのまにやら手にしていたマイクに向かって話し始めた。
「あー……マイテス、マイテス。テロリスト役のみなさんお疲れさまでした。本日の実践形式の防犯訓練は終了と致します。一般学生の皆様におかれましては突然のご無礼、申し訳ございません。今回の事件は防犯訓練です。繰り返します――」
 教員の声が校舎中に響く。
 今回の事件に携わった全ての人々が手足を止めて放送に聞き入っていた。
「やっぱりねえ……」
 この事件に関して疑問を抱いていた人が呟いた。
 こうしてテロリストによる分校占拠事件は幕を閉じた。



幕間:忘れられた人々

 校舎の外。見張りの仕事を言い渡された二人に訓練終了の知らせは聞こえなかった。
 彼らの立っている昇降口付近にスピーカーを設置していなかったためである。
 当然、彼らは事件が終わったことを知らなかった。
 彼ら、斎賀と辿楼院はじっと誰かが侵入してこないか見張りを続けていた。
「なあ……」
 斎賀が辿楼院に声をかけた。
「なんじゃ?」
「俺たちいつまでここに突っ立ってればいいんだ?」
「交代要員が来るまでじゃな」
「楽しいかと思ってついてきたらこれだよ……つまんねえ!!」
 騒ぐ斎賀を横目に空を仰ぎながら辿楼院は言った。
「仕事は基本的に面白くないものじゃて。これも仕事じゃからのう……」
 空はどこまでも遠く澄んでいた。