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リアクション
一方。保健室の周りを調べていたコア・ハーティオンが首を傾げた。
「この保健室から誘拐されていったはずだが……その痕跡がまるで見受けられない」
顎に手を当て、思考を巡らせる。
「つまり……ユキが犯人に抵抗せずついていった可能性が高いということだ。脅されたか、あるいは――」
言いかけた時、携帯電話が震えた。
『ハーティオン? コピー機を調べた結果だけど』
高天原鈿女からの連絡。コア・ハーティオンは頷いた。
「ああ。どうだった?」
『あのチラシをコピーした形跡はなかったわ。外部から持ち込まれた可能性が高い――そう思って、調べてみたけど』
「ふむ」
『怪しい人物が二人、浮かび上がったわ』
「二人……」
『一人は小柄な、白いパーカーを着た人。もう一人は生徒で、運動部に所属している男子のようだけど、名前までは……』
「リスト、できたわよ!」
軽やかに飛んで、ラブ・リトルがやって来た。
「見てみて、ほら!」
得意げに胸を張って、リストをコア・ハーティオンへと突きつける。
「これがチラシのまかれた夜にアリバイのない、起木保に不満持ってる奴リストよ!」
「その中に、運動部の男子はいるか?」
「うん! この唖久灯って奴ね!」
「あとカンケーないけど、退職した先生がこの間来たっていう情報も聞いたわ」
「その人の服装は分かるか?」
「んー、白っぽかったとか」
『……ハーティオン!』
「ああ。容疑者はこの二人のようだ」
瞳を光らせ、リストを見遣った。
「あとは、ユキの行方だが……」
『怪しい二人が出入りしている場所なら、リサーチ済みよ』
「よし、ではそこへ向かうとするか」
「うん! 行こー!」
コア・ハーティオンがラブ・リトルを伴い、歩き出す。溜池キャンパスの、外へ――。
校庭の片隅のベンチ。
水着にコートを羽織った二人が腰かけて語り合っていた。
「起木保に不満を持ってる人は多かったけど……過激派となると、そこまでいなかったわね……」
「かなり絞れるはずよ。そうすると……」
「唖久灯を筆頭に……男子数十人くらいね」
セレンフィリティ・シャーレットとセレアナ・ミアキスは確認するように頷きあいながら話し合う。
「確か誰かが……唖久灯って人、この学校近くの洞窟に出入りしてるって、言ってた気がする」
「確かに、そう聞いたけど……」
「じゃあ、行ってみよう! 白雪がいるかもしれないし」
セレンフィリティ・シャーレットはそう言って立ち上がった。
「え、でもまだ確かな情報じゃないのよ? それでも?」
「どうにかなるはずよ。ほら、行こう!」
セレアナ・ミアキスの手を引き、セレンフィリティ・シャーレットは洞窟へ向けて歩き出した。
一方、溜池周辺。
「なるほどねぇ。ありがとう」
清泉北都が話を終え、メモをとる。
「北都、聞き込みの結果を報告しよう」
モーベット・ヴァイナスが駆け寄ってきて、眼鏡をくいっと上げた。
「うん、頼むよー」
彼は、唖久灯という者が、起木保を恨んでいること、何名かの男子生徒が同じく起木保に不満があることを報告した。
「ここまでは、僕の得た情報とあんまり変わらないねぇ」
「あと一つ、情報がある」
「何?」
「学校を辞めた先生が、昨日この溜池キャンパスに来ていたそうだ」
「そっか……そうだねぇ……」
得た情報すべてを浮かべて、腕を組む清泉北都。
「……あ、そうかぁ」
ポン、と手を叩いて、彼は得意げに微笑んだ。
「犯人はきっと……あの人だと思う。早速、先生に連絡しないとねぇ」
携帯電話を取り出し、起木保の番号へとかけた。
「だいぶ情報が集まりましたね」
「そうですわね。ここで、少し整理してみますわ」
加岳里志成と左文字小夜が、記憶をたどりながら話し始める。
「不満を持っているのは、過去の事件にかかわりがある方々と、それによる二次被害を受けた方々ですわよね?」
「唖久灯という人も、二次被害を受けた人の一人です。しかし……」
うーむ、と唸って加岳里志成は続けた。
「ここまでの行動をすることを考えると、直接的被害を受けた人の可能性が高いですね」
「ということは、事件の直接の関係者……事件の時の容疑者などが怪しいですわね」
「一番被害をこうむったのは……あの人ですね」
「きっと、間違いないと思いますわ」
「早速、先生に連絡してみましょう」
そう言って、携帯電話をとりだした。
「やはり思った通りです」
頷いて御風真人は空を見上げる。
「首謀者が、分かりました」
その言葉は、保健室の外で話を聞いていた本郷翔も発していた。
保健室のドアを開け、振り返った起木保に告げる。
彼の耳には携帯電話と、固定電話の二つ。
「真犯人は――」
二匹の足音と、それを追う一人の足音。
御神楽舞花は、お供のパラミタドーベルマンと、賢狼と共に駆けていた。
彼女は【ダウジング】を使い、白雪を探し当てようとしているのだった。
「情報によると……白雪さんが夜、白い人に連れられて学校の外……北側に出て行ったとか……」
赤い瞳を細め、長い金の髪を振って、スキル発動に集中する。
歩みを進めて……ふと、反応を感じた。
「こっちみたいですね。行きますよ、二人共!」
二匹が元気な鳴き声を上げる。
そのまま走り出すと、二匹も続いていく。
暮れ始めた陽が、走り出す影を照らしていく――。
溜池キャンパス裏口の茂みのあたり。
緋桜ケイは、ソア・ウェンボリスと連絡を取っていた。
『ケイ、犯人らしき人がわかりました! その人は――』
「本当か!? あの人が……」
『私も、まさかとは思いましたけど、確かなようです』
「そうか……あとは、この目で確かめて白雪を助けるだけだな」
『そうですね』
「じゃあ、また――」
通話を終えてふと、茂みの下に目を向ける。
「これは……!」
その影にある、紙を拾い上げる。
それは起木保を糾弾する内容の、チラシ。その下の方には、紙飛行機のイラストもある。
「これが、そのチラシか! じゃあ早速……」
オーソドックスな紙飛行機形を折り上げ、ヒュン、と飛ばしてみる。
本来、重力に従って下降していくはずの紙飛行機は、上昇して飛んで行く。
「思った通りだ。佐々良さんに連絡しないとな」
携帯電話を取り出しながら、飛行機を追って走り出す。
「連絡ありがとねぇ。うん、こっちも見つけたよ」
佐々良縁もパートナー二人と共に、平たく折りあげた紙飛行機を追いかけながら応じる。
「犯人の目星とか、白雪ちゃんの居場所とか、色々情報は貰ってるよー」
「あ、縁! チラシ見つけたんだね!」
「歌菜ちゃん! そだよー」
「俺にも見せてくれ」
「もう一枚見つけたから、あげるね!」
佐々良皐月からチラシを受け取った月崎羽純は、【サイコメトリ】を発動し、チラシを調べた。
「なるほど……首謀者は起木保にかなり縁の深い人物みたいだ」
佐々良縁達が紙飛行機を追う姿を見送りながら、彼は黒い瞳を光らせた。
「紙飛行機の主……あの人のもとへ向かってるんやな。俺もついて行ってみよか」
「あっちに何かありそうね。行ってみようっと」
七枷陣と、ルカルカ・ルーがそれぞれ、佐々良縁達に続く。
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