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双子の魔道書

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双子の魔道書

リアクション

 第 5 章

 ルカルカが【超加速】を突撃する教導団員全員にかけると、真っ先にセレンフィリティが乱撃ソニックブレードで見張りの破落戸2人を倒してしまった。
「昇進早々、あたしってハードに働いてると思わない? セレアナ」
「普通よ、セレン。何もハードじゃないわ、普通だから」
 教導団では調べ物をし、探索には連絡係として動き、敵陣突入には先陣を切る。これのどこがハードではないというのという視線を一生懸命セレアナに送るセレンフィリティだが、集まる悪党や用心棒に防御を固めるためセレアナが【女王の加護】をかける。
「熱い視線に応えてあげたいけど、今は青の書を助け出すためにこいつらを捕縛しないとね……援護するわセレン、いくわよ!」
 ラピッドショットを二丁拳銃で構えたセレアナは近付く用心棒を牽制射撃し、怯んだ隙を見逃さずにセレンフィリティが斬りこんでいく。すぐ後ろにはルカルカとダリル、鉄心、ティーとイコナ、イーシャンが続いた。


「……ふん、どうやら来おったか」
 研究者がいるであろう部屋の前まで用心棒を配置していたせいか、逆に教導団員にその位置を教えてしまっているらしい事に漸く気付いた研究者が慌て始めた。
「まだ、青の書を見せてもらっていないというのに……慌てないで下さい、私達がいるのですから」
 刹那とファンドラ、イブは気配を消し去りそれぞれ教導団側の死角の位置を取ると勢いよく扉が開け放たれた。扉の前には用心棒とみられる男数人が転がっている。
「……アンジャック・ソエリー研究員」
 イーシャンが研究員の名を呟くと、ティーが【トリップ・ザ・ワールド】で結界を作り、イーシャンとイコナを守る。
「アンジャック・ソエリー。青の書誘拐容疑でシャンバラ教導団へ連行するわ!」
 ルカルカが一歩踏み出すと突然部屋の中で煙幕が立ち込め、咄嗟に口元を覆うと研究員が【毒虫の群れ】を放つ。
「……っ、まずい! アブソリュート・ゼロ!」
 毒虫の群れが襲い来る前に鉄心が氷の壁を作り出し、何とか到達を防いだものの煙幕で互いの位置がわからずにいると突然現れた刹那がセレンフィリティの死角から【ブラインドナイブス】を仕掛ける。
「セレン! 左から来るわ、剣を縦に構えて!」
 セレアナの叫びに咄嗟に剣を構えて直撃を防ぎ、間近に見た姿に目を見開く。
「辿楼院……刹那っ」
「……ほう、おぬしらか」
 攻撃を防がれた刹那は舞うように空を蹴り、煙幕の中に姿を隠す。
「あいつが用心棒で雇われていたなんて……ああ、もうこの煙幕鬱陶しいわね!」
 苛立ちを隠せないセレンフィリティとセレアナだが、鉄心が【殺気看破】で周囲を探る。刹那の他に1つの気配がこちらに敵意を向けていると察して、ティーとイコナに守りを強化するように伝えるとまず司令塔である研究者の取り押さえにかかろうとした。

 チュイン――――……

 ポイントシフトで一気に距離を詰めようとした鉄心の真横を擦り抜けるように弾道が走る。敵意を確認した位置とは違うものの、研究者を守るように破落戸達が鉄心へ向かってくる。
「任務遂行中……引続キ、実行シマス」
 【カモフラージュ】で姿を隠したまま、陽動射撃で鉄心の足を止めたイブは次の標的にルカルカとダリルを狙う。
「標的確認シマス……確認、【シャープシューター】」
 イブがスナイパーライフルの引き金を引こうとすると、突然ライフルを弾かれてしまう。一瞬、動作が乱れたイブは素早く向かってきた弾道を読み込み邪魔をした存在を確かめた。
「窓ノ外ニ……ナニカ、敵認識中……」
 ガシャン! と窓ガラスが割れる音がすると部屋を覆っていた煙幕が外へ漏れていき、その窓からひょいと顔を覗かせたのは吹雪である。
「ふぅ、すごい煙幕であります……赤の書は無事でありますね!」
 ティーの作る結界に守られたイーシャンとイコナの姿を確認すると漸く視界が晴れて、姿を隠している刹那達以外の研究者の姿が現れる。

「……ほんっとナメた真似をしてくれるわね」
 セレンフィリティが星印の剣を、セレアナがラピッドショットを両手に構えて研究者へ銃口を向ける。同時にダン! と鉄心が破落戸達を勢いよく床に叩きつける音とイコナの応援、ティーの【天使のレクイエム】が戦意を落としていくと残った研究者は再度【毒虫の群れ】を放とうとしました。
「させないわ、【Pキャンセラー】!」
 ポイントシフトで研究者の背後に回り込んだルカルカが【毒虫の群れ】を無効化してしまう。発動しなかった魔法に焦りを濃くする研究者へダリルが足を銃で撃ち、転がる研究者へ手錠をかけた。
「ぐっ……、痛いじゃ、ないか! 本気で撃ったな!」
「意志有る者を道具として扱う事は許さん」
 言いながら後ろ手に手錠をかけ、自力では起きられないようにするとダリルへ向けて反論する。
「魔道書は道具じゃないか! 使われる為の存在に……っぎゃああ!」
「……うわぁ、大人しくしないとまた撃たれるよ……って、遅かったみたい」
 ダリルは研究者を無言で見下ろすと片方の足も銃で撃ち抜いた。研究者の言葉にイコナはイーシャンの上着をギュッと握り、イーシャンもイコナの頭をそっと撫でるのだった。

「誘拐犯は制圧したわ! シャウラ、青の書救出を実行開始!」
「了解!」
 その瞬間、研究所の裏口が派手に壊されシャウラとナオキ、海が先陣を切って突入した。