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リアクション
第 6 章
「何事だ……?」
「外が騒がしいね、何だろ? アニス見てくるね」
シルヴァニーも扉の方へ視線を向けるとそれより早く和輝が室内へ入ってくる。
「潮時だ、リオンもアニスも撤退の用意をしてくれ。青の書からは何か引き出せたか?」
チラリとシルヴァニーへ視線を送った和輝だが、仮面に阻まれてその表情は読めない。和輝が纏ったままのスノーも2人を促す。
「小僧の知識は魔法の規模を拡大させるだけであって、使いようによっては有用であろうな。ただ……もう一つの書を解読する必要がある方式の存在は突き止めた」
「ほう……」
仮面の下で和輝が興味深そうにリオンの言葉を吟味するものの、今は撤退が先だと判断して和輝は銃を装備した。
裏口の見張りを気絶させ、柚とメシエ、ローズが【サイコメトリ】でシルヴァニーが軟禁されている可能性の高い部屋を探る。その周りでは3人を妨害されないよう三月と北都が【超感覚】で敵用心棒や悪党の気配を逃さないよう足音一つでも聞き逃さないように感覚を研ぎ澄ませ、詩穂が【殺気看破】で姿を隠している悪党の気配がないかと見張る。
「ここと、こっちの部屋は違うみたいです……ローズさんの方はどうですか?」
「うーん、ここも違うみたい。シルヴァニー君の手掛かりにはならないようだね、メシエが先を探っているからもしかしたらそっちが当たりかも?」
柚とローズが先を進もうとすると、柚の後ろからゆらりと影が動く。
「柚! 危ない!」
三月が柚とローズを庇うように覆い、彼女達と大剣を振り被った用心棒の間に海が割り込んで妖刀村雨丸で受け止めた。
「くそ……っ、なんて力だ! 頭の中まで筋肉かよ」
大剣と刀がせめぎ合う音が響き、僅かに海が押されると突然力の抜けた用心棒が倒れ込んだ。
「あれ……?」
「【百獣拳】で気絶させたんです、危なかったぁ……」
ホッとしている北都と、それ以上にホッとしている海達は用心棒が気が付く前にと捕縛していく。先を進む一行に追いつくと室内を窺うように気配を消している様子から静かに近付いた。
「……追いつきましたか、どうやらこの部屋のようです。ただ、中の様子を見るとガラの悪い盗賊紛いの輩が4〜5人、それに用心棒らしき者も3人程いるようでね。エースやシャウラと突入の機会を図ってみてはいるが……」
「青の書の位置は……?」
北都が声を潜めて訊ねると、隙間から覗きながら貴仁が答える。
「右側の壁沿いで椅子に座らされています、両手を後ろにしてるのでおそらく拘束されているでしょう……」
「一気に片をつけないと、青の書を盾に取られたら大変やな」
ヒソヒソと相談を進める一同に、シャウラが一つ提案をする。
「なあ、コピー人形使って身代わりにさせとくってどうだ? 見張り共を一時でも青の書から離して、彼を保護した後コピー人形を座らせとけばもし盾に取られてもこっちは遠慮なく攻撃出来る」
ナオキが思い出したかのようにコピー人形を取り出すと、レイチェルが間髪入れず突撃に立候補する。
「では、私達が見張り共を一手に引き受けましょう。泰輔さん、フランツさん、顕仁さん一人ずつ各個撃破を目標にフォーメーションを工夫する手段でいきましょう」
アニスが落ち着かなく部屋の外を気にし始めると、和輝が両手の銃【曙光銃エルドリッジ】を構える。
「さて、俺達はこの辺で退場するとしよう。招かれざる客も来たようだしな」
バン! と勢いよく扉が開け放たれると去ろうとする和輝達に文句を言いかけた見張り達がそちらへと気を逸らしてしまう。その隙にアニスが【ホワイトアウト】で自分達の姿を隠してしまうとついでとばかりに【召喚獣:サンダーバード】を呼び出して見張り達と一緒に泰輔やレイチェル、顕仁に向けて落雷を落とした。
「プレゼントだよ〜♪ 受け取ってね、逃げるんだから追いかけて来ないでよ〜」
「……小僧、貴様とまた会う事があれば次はまともな討論が出来るようにしておく事だ。では私もアニスの雷に合わせてやろう……【天のいかづち】」
追い打ちをかけるようにダンダリオンの書が雷を落とすと、見張り達は動けなくなり泰輔達もうかつに突撃は出来ずにいる内にホワイトアウトが晴れていった頃には和輝とアニス、ダンダリオンの書の姿は消えていた。
「……あの小娘、最後まで俺の事小僧呼ばわりしやがって」
ボソリ、と呟いたシルヴァニーの言葉を境に我に返った見張り達が泰輔やレイチェルに襲いかかる。
「陣形もなにも、ありませんね……このまま小型飛空艇を体当たりさせます」
見張りの先陣と衝突する寸前でレイチェルは飛空艇を飛び降り、同時に光術で目くらましをかけると泰輔が【召喚】を使い、顕仁の姿が消えたと思えば背後に現れると豪快に蹴り飛ばした。
「あー……しかし、召喚の度にこれは何とかならへんかな」
泰輔が右足の三里を擦りながら蹴り飛ばされた見張りの腕を捻り上げた。レイチェルも【ヒプノシス】で眠らせていく。
「よし、青の書へ近付くなら今ですね。シャウラ君、ナオキ君コピー人形を!」
フランツが銃で見張り達を牽制すると、シャウラはシルヴァニーの元へ急いだ。その2人へ近づく見張りには、詩穂が【実践的錯覚】とリターニングダガーを使い、足元を狙っては転ばせて間合を誤魔化しながら援護する。ナオキがコピー人形を取り出して背中のスイッチをシルヴァニーに押させると見る見るうちに彼のコピーが出来上がる。その間に追いついた北都が拘束された両手の縄を解いていくと漸く自由になった事に、シルヴァニーもホッと一息ついた。
「お待たせしてしまいましたねぇ、赤の書……イーシャンがキミを助けてほしいって言ったんだ。ローズさん、彼を診てあげて下さい」
コピー人形を座らせ、青の書を連れて部屋を出ようとしたところでまだ元気な見張りが大剣を手に出入り口を塞ぎにかかる。
「まだ動ける輩が居たか、いいから倒れているがいい」
顕仁が【サイコキネシス】を使い、落ちていた酒瓶を後頭部に直撃させると見張りはそのまま床にうつ伏せで倒れ込んでしまった。
「やり過ぎとちゃうか……顕仁」
「中々眠らぬからな、強制的に眠ってもらったまでの事」
ほぼ、室内にいた見張りの動きを封じるとローズが簡単にシルヴァニーの状態を確認する。拘束されている間に暴れでもしたのか、縄が擦れて擦り傷が出来ている以外は特に外傷はないようだった。
「取り敢えず、擦り傷に薬塗っておくわね。イーシャン君も心配してるから早く顔を見せてあげよう」
「悪い……礼を言うのが遅くなったな、助けてくれてありがとよ。しかし、イーシャンが頼んできたとはいえ面識があるわけでもねえのに……ほんと、世話かけて済まねえ」
ぶっきらぼうに礼を言うシルヴァニーを、イーシャンの所へ連れていこうと歩き出した途端、空間から大量の武器が放たれて足元にいくつもの武器が刺さる。
「まだ連れていかれては困るんですよ……私も彼に用があるのですから」
通路の先から姿を現したファンドラからシルヴァニーを庇うように前に出たエースとメシエ、貴仁を相手に【神の奇跡】で再び、武器を向けようとしていた。
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