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リアクション
宮殿内・攻防
ズズゥ――ン……。
空爆の音。
宮殿内に響き渡っては、短い振動を起こして行く。
だが要塞撤退の影響もあって、宮殿を囲むイコンの数は少ない。
「それより問題は、追手の『東シャンバラ軍』の方だわ！」
宮殿入口に辿り着いた面々は入口から外を眺めた。
彼方に砂煙――「東シャンバラ軍」のものだろう。
追いつかれるのは時間の問題だ。
「私は……私と羽入は、ここで東側の動きを見張ります！」
蒼白な顔で、鷹野 栗（たかの・まろん）は告げた。
狼のミルヤスと剛雁のトトが、栗を護るように囲む。
「アイシャさんだって、覚悟を決めたんです……私だって！！」
「で、でも、栗！ あなた１人では流石に……」
「大丈夫、１人じゃないですよ！ アイシャさん」
【西シャンバラ・ロイヤルガード】ジョシュア・グリーン（じょしゅあ・ぐりーん）がアイシャの肩を叩いた。
傍らに、神尾 惣介（かみお・そうすけ）。
「我らも残る！」
【理子’ｓラフネックス】の青 野武（せい・やぶ）は青 ノニ・十八号（せい・のにじゅうはちごう）伴い、前に出る。
「理子様のためにも、それが最善の選択であろうしな」
「ありがとうございます！」
栗は勇者達に丁重に一礼する。
「６人もいれば心強いことでしょうし……」
「決まったな、アイシャ」
羽入 綾香（はにゅう・あやか）は振り返りざまアイシャに、いや、西側一行に告げた。
「『玉座の間』に急ごうぞ！
『東』の情報は伝令を飛ばすでな、さ、早く！」
そうして、宮殿内最初の攻防は開始されたのであった。
「来たよ！ 皆！」
ジョシュアは宮殿の入り口を目指す、東側軍勢を指さした。
「栗さんと綾香さんは後方に。形勢が不利になったら、すぐ伝令を飛ばして下さい。攻撃の方は……」
「我輩から行くとしよう！ ジョシュア」
野武は十八号とともに、入口付近で躊躇する東シャンバラ軍に迎撃を仕掛ける。
「戴冠式万歳！ ぬぉわはははははははははは！」
弾幕援護で敵の視界をふさぎ、その間に十八号に攻撃を促す。
「今だ！ 十八号。怒りを込めて全弾発射せよ！」
「はい！ お父さん」
ドドドドドドドドドドドドッ！
「２４連ミサイルポッド（六連ミサイルポッド×４つ分）」で、正面の敵を粉砕する。
正面突破を図ろうとしていた東側勢は、蜂の子を散らすように上下左右へ逃れる。
だが敵の数は圧倒的に多い。
「所詮は多勢に無勢だな」
「でもここで諦めたら、アイシャさんの決心が無駄になってしまう！」
ジョシュアはサッと周囲を見渡した。
当座の敵に対しては、ファイアストームで入口をふさいで入れないようにしながら。
「何か……そう、例えば……まだ生きている王都の防衛システムとか、活用出来ないのかな？」
「防衛システム？ そうか！ その手があったぜ！」
惣介は動き回って、防衛システムの場所を探す。
ソニックブレードやツインスラッシュで、侵入してきた東側勢達を倒し続けながら……。
だが侵入者に反応して、空間から現れたそれは、逆にジョシュア達を敵とみなして攻撃を仕掛けるのだった。
正面の東シャンバラ軍と、背後からの防衛システムの攻撃にさらされ、４名は玉砕した。
「くっ、ここまでかっ！」
ジョシュアは女王の加護で東側とシステムからの攻撃を避けつつ、栗達に向かっては叫ぶ。
「逃げて下さい！ そして、伝えて！
『入口は、２つの敵によって突破されてしまいました！』、と」
「分かったわ、死なないで！ ジョシュア、野武」
栗は、伝令役の綾香に向けてトトを飛ばす。
「羽入の、アイシャさん達の下へ！ 早く！」
■
だが、狂った防衛システムの餌食になったのは、ジョシュア達ばかりではなかった。
「なぜ？ 私達は狙われなければならないの？」
十二星華の１人――パッフェル・シャウラ（ぱっふぇる・しゃうら）は憔悴し切った様子で、呟いた。
「私達は敵ではないわ！
国家神となるべきお方を、お連れしたというのに！！」
眉をしかめる。
物理的、魔法的に高度に洗練された防御システムは、次々と幽霊のように現れては攻撃を繰り返し、また消えてゆく。
そして宮殿内は、とてつもなく広い。
４次元的な空間の中に、「部屋」という名の建物が宙を漂っているのだ。
しかも、その数は尋常ではない。
「玉座の間」を捜しつつ、西側軍は必死に応戦する。
「忘れたのかしら？ パッフェル。
アイシャさんはまだ国家神ではないのですわ」
アイシャを庇いつつ、ティセラ・リーブラ（てぃせら・りーぶら）は険しい顔で先を見据えた。
「ネフェルティティ様……彼女が捕らわれてしまったから、こんなことに」
綾香がトトを伴い、一行に「入口陥落」の知らせをもたらしたのは、直後のことだった。
「そうか、入口は突破されてしまったのだな？ ……御苦労だった」
バーストダッシュで駆けつけてきた労をねぎらうと、羅英照は綾香を一行の中央に匿った。
彼は金鋭峰団長から、本作戦における宮殿内攻防の全権を委譲されている。
「羅隊長！」
皇甫 伽羅（こうほ・きゃら）が進言する。
「ここは、我が【理子’ｓラフネックス】にお任せを。
忌々しい防衛システムは、私の同士が盾となって打ち砕いてみせますですぅ！」
そうして、伽羅はアクィラ・グラッツィアーニ（あくぃら・ぐらっつぃあーに）とアカリ・ゴッテスキュステ（あかり・ごってすきゅすて）の２名を最前衛に据えたのであった。
「では、任せたぞ！ アクィラ、アカリ。
我が教導団の名に恥じぬ働きを、な」
「は、隊長！ 俺達２人にお任せを！」
「来る！」
アクィラは浮遊する建物の１つに手を置き、バランスを取りつつ上方を睨んだ。
防衛システムは火器で行く手を阻み、魔法陣で２人の動きを封じようと試みる。
だが、ギリギリのところでアクィラはいずれも回避した。
ほとんど勘であったが。
「これも【女王の加護】のお陰だね！」
「感心している場合じゃないでしょ！ アクィラ、畳み掛けるわよ！」
アカリは【弾幕援護】を使い、その煙で防衛システムを一時欺く。
「さ、今のうちよ、皆！ 『玉座の間』へ！」
「アクィラ、アカリ！ すまない！ 先に行くぞ！」
一行は２人が斬り開いた道を通る。
だがもたついている間に、東シャンバラ軍に追いつかれてしまった。
「左右に分かれたぞ！」
「前後から挟み打ちか！！」
数名の東軍勢は西側勢をかわし、行く手に立ちふさがる。
「ここは、あたし達が行くわよ！ シャーロット、奉先」
「ええ、セイニィ」
シャーロット・モリアーティ（しゃーろっと・もりあーてぃ）は穏やかな笑みで、２人の背を守る。
奪魂のカーマインを構えて。
「私達で、『玉座の間』への道――運命を切り開きましょう！」
敵が現れる。
呂布 奉先（りょふ・ほうせん）が２人の名を呼んで、躍り出る。
「先陣は、俺とセイニィで行くぜ！」
ザンッ！
奉先は愛用の方天戟――”方天画戟”を片手に、次々と目の前の敵を倒して行く。
邪魔ものは消え去り、道が開ける。
「俺達に挑んでくるのはいいが、おまえらじゃ役不足だっ！」
「奉先、危ない！」
セイニィ・アルギエバ（せいにぃ・あるぎえば）は星双剣グレートキャッツで銃撃をかわす。
すかさずシャーロットが応戦する。
「この調子ですよ。さっ、進みましょう！」
「うむ、アクィラ、アカリの両名もさることながら、セイニィら３名の働きも良い動きだ」
だが、と英照は腕組みして唸る。
いかがされましたか？ と李 梅琳（り・めいりん）。
「何か、御懸念でもおありなのでしょうか？ 羅隊長殿」
「時間がな……」
英照は眉をひそめた。
「……かかり過ぎている。アイリスが１人でなければ、厄介なことになる。
ネフェルティティ様も一緒だろうが……『玉座の間』の建物など、皆目見当もつかん」
「では、俺の配下の者をお使い下さい、羅隊長」
英照に進言したのは【西シャンバラ・ロイヤルガード】の松平 岩造（まつだいら・がんぞう）。
「【龍雷連隊】隊長代行の甲賀三郎は切れ者です。
必ずや『玉座の間』を探し出し、硬直状態を打開できるはず」
白羽の矢が立ったのは、【龍雷連隊】のレイヴ・リンクス（れいう゛・りんくす）
とレイナ・アルフィー（れいな・あるふぃー）だ。
「ええ、わかりましたよ。
『玉座の間』とやらを捜せばよいのですね？ 三郎さん」
携帯を切ると、レイヴはレイナにすぐ指示した。
「あの建物を、１つずつクリアリングして行きます！
ネフェルティティさんが捕らわれている『玉座の間』を捜すために。
準備はいいですか？ レイナさん」
２人は戦場の中建物の扉を開け、次々とクリアリングして行く。
『ここも違う！ 上に向かいます！』
『ＯＫ！ レイヴ！ いま行くよ！』
【精神感応】でのやり取りだけで、東シャンバラ軍や防御システムの放火と、無数に飛び交う建物の群れに立ち向かう。
「あれよ！」
誰かが叫んだ。十二星華の１人のようだ。
２人の目の前に、黄金に輝く城のような建物が現れる。
「『玉座の間』――っ！！」
見つけましたああああああああああああああああああっ！
２人は三郎や英照達に向かって両手を振る。
観音開きの大きな扉を、重そうに開けてゆく……。
ギギギギギギギギギィ――……バタン……ッ。
西シャンバラ軍の面々だけを飲み込んで、扉は閉ざされた。
取り残された東シャンバラ軍の面々に、防御システムの放火と、空爆の轟音が降り注ぐ……。
……こうして、アイシャ達一行は「玉座の間」の内に入り込むことが出来た。
だが英照の予想は当たり、アイリスとその仲間達は、既に戦いの準備を万全に整えて待ち構えている。
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