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リアクション
「今頃わかっても遅いのでしょうけど」
小型飛行艇で敵機に急速接近をこころみながら、瑠璃は、すでに「天龍」を鞘走らせている。
「あの機体内部は、銃弾がぎっしり詰まっているということなのですね。そうでなければ、この叢牙 瑠璃がプロペラ機10機相手にこれほど手こずるはずもない!」
まるで、それは、いわゆる「壁抜け」といわれる脱出マジックを見るようだった。瑠璃が飛行艇を騎乗する小型飛行艇ごと通り抜けたように見えたのだ。
「双覇武神流…! そうか、瑠璃は、あの古流剣法の継承者だったのか」
どこかの時代にすたれ、今では伝説にすぎない剣法だ、と思っていた御風 黎次(みかぜ・れいじ)である。
瑠璃が小型飛行艇ごと着地してから、機体は、虚空でいきなり真っ二つに分離した。機体は、前部が大地を滑走しながら止まり、後部は空中で爆発しながら、破片を四方に撒き散らしつつ、墜落してくる。
「追い詰められて奥義を見せたか。それが、名刀と伝えられる「天龍」だな」
「それを知ってどうします。たとえば、もう一振りの「冥狼」もまとめて奪うとか」
瑠璃は笑顔を絶やさない娘だ。しかし、一切、スキを見せない。黎次は苦笑した。
「その秘剣があれば安心かもしれないと思った」
「パピーが、でしょう?」
瑠璃は、黎次の整った相貌を見上げる。そうだ。黎次は、そう言いながら、そばにいるパートナー、ノエル・ミゼルドリット(のえる・みぜるどりっと)から光条兵器を受け取った。大剣である。
「「星龍」…ですね」
「こうして俺たちはこの大陸で次々に大きなちからを手にしていくのだろう。でも、俺たちはスーパーマンではない。たった一頭の瀕死のグリフォンの子供さえ救えるかどうかの、いわば、たったそれだけの存在でしかないのだ。それをはきちがえてはならないと、俺は思っている」
黎次は、瑠璃の問いかけに応える代わりに、そう言った。
「私たちにとって、この大陸に瀰漫する魔法力が、人類が手に入れた核兵器のような危険なものになるのか」
「そのためにも、わたくしたちは、言葉と態度で示しつづけねばならないのですわ。人間は、同じ過ちを繰り返さない。それは、わたくしたち若い世代だからこそ可能なのだ、ということを」
同じセイバーの東重城 亜矢子(ひがしじゅうじょう・あやこ)がふたりと肩をならべ、沈み行く太陽と淡い闇のなかをさまよう飛行艇を見上げる。
「敵機は、パピーたちが洞窟に入るのを見届けて、岩盤に体当たりして、洞窟ごとパピーたちを葬り去ろうとしているという情報があります」
では、私が援護に参ります。瑠璃が言った。わたくしたちも、後から行きます。亜矢子も静かに言う。
「支配するとかしないとか、支配されるとかされないとか。そういう歴史をこの大陸に持ち込んではいけないんだ」
黎次は言った。
「俺たちは、後住者だ。先住者はモンスターたちなのだ。その事実を忘れたら、熊が里に下りてくる日を舌なめずりして待ち構えている猟師と同じになるぞ」
俺たち人間は、決して驕ってはならないんだ。
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