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イルミンスールの迷宮!?

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イルミンスールの迷宮!?

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1.いざ、根の中へ

「ルー・・・・・・スン・・・ミ・・・・・・ルイ・・・・・・デスゥ」

 校長のエリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)が、祭壇でおごそかに呪文を唱えている。
 これは、世界樹の根に至る門を開くための儀式だ。

 イルミンスール魔法学校の本体ともいうべき世界樹の根が、いつごろからか、悪しき寄生虫によって食い荒らされているという。
 放っておけば枯れてしまうかもしれない。

 そこで、エリザベートの呼びかけに応じた生徒たちが、これから世界樹イルミンスールの根に入り、根の奥に栄養剤を投与して樹を回復させようとしているのだ。

 やがて、エリザベートの祈りが終わると、巨樹は、それに応えるかのように「ゴゴゴ・・・・・・」と静かな音を立てて、胎内への門を開いた。

 制限時間は2時間。この間にミッションを果たさなければならない。

「さあ、行こうぜ!」

 ナイトのエル・ウィンド(える・うぃんど)は、先頭に立って根の中に入っていった。

 他の生徒たちも、隊列を組んで整然と入っていく。

 先頭を歩くのは、寄生虫撃破パーティだ。メンバーは以下の面々。

エル・ウィンド、ホワイト・カラー(ほわいと・からー)
瓜生 コウ(うりゅう・こう)リナス・レンフェア(りなす・れんふぇあ)
周藤 鈴花(すどう・れいか)ルーツィンデ・クラウジウス(るーつぃんで・くらうじうす)
白波 理沙(しらなみ・りさ)チェルシー・ニール(ちぇるしー・にーる)
ソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)雪国 ベア(ゆきぐに・べあ)
ブレイズ・カーマイクル(ぶれいず・かーまいくる)ロージー・テレジア(ろーじー・てれじあ)
生琉里 一葉(ふるさと・いちは)ラッセ・ハールス(らっせ・はーるす)
篠月 流玖(しのづき・るく)ミル・テーア(みる・てーあ)
御影 春菜(みかげ・はるな)
水神 樹(みなかみ・いつき)カノン・コート(かのん・こーと)
クルード・フォルスマイヤー(くるーど・ふぉるすまいやー)ユニ・ウェスペルタティア(ゆに・うぇすぺるたてぃあ)
ファタ・オルガナ(ふぁた・おるがな)ジェーン・ドゥ(じぇーん・どぅ)
日紫喜 あづま(ひしき・あづま)ローランド・シェフィールド(ろーらんど・しぇふぃーるど)
デズモンド・バロウズ(でずもんど・ばろうず)アルフレッド・スペンサー(あるふれっど・すぺんさー)


 続けて、本ミッションの命脈を握る、栄養剤運搬班のメンバーたち。

御宮 万宗(おみや・ばんしゅう)
峰谷 恵(みねたに・けい)エーファ・フトゥヌシエル(えーふぁ・ふとぅぬしえる)
如月 陽平(きさらぎ・ようへい)
羽瀬川 セト(はせがわ・せと)エレミア・ファフニール(えれみあ・ふぁふにーる)
アレフ・アスティア(あれふ・あすてぃあ)レイ・レイニー(れい・れいにー)
緋桜 ケイ(ひおう・けい)悠久ノ カナタ(とわの・かなた)
ナナ・ノルデン(なな・のるでん)ズィーベン・ズューデン(ずぃーべん・ずゅーでん)
モニカ・ヘンダーソン(もにか・へんだーそん)
フィッツ・ビンゲン(ふぃっつ・びんげん)ルーザス・シュヴァンツ(るーざす・しゅばんつ)
エリオット・グライアス(えりおっと・ぐらいあす)メリエル・ウェインレイド(めりえる・うぇいんれいど)
本郷 涼介(ほんごう・りょうすけ)クレア・ワイズマン(くれあ・わいずまん)
狭山 珠樹(さやま・たまき)新田 実(にった・みのる)
天枷 るしあ(あまかせ・るしあ)
メイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)セシリア・ライト(せしりあ・らいと)
和綴 季彦(わつづり・ときひこ)デュアリス・スプリングノート(でゅありす・すぷりんぐのーと)
和原 樹(なぎはら・いつき)フォルクス・カーネリア(ふぉるくす・かーねりあ)
東雲 いちる(しののめ・いちる)ギルベルト・アークウェイ(ぎるべると・あーくうぇい)
リリサイズ・エプシマティオ(りりさいず・えぷしまてぃお)リヴァーヌ・ペプトミナ(りう゛ぁーぬ・ぺぷとみな)
ロベルタ・オークリィ(ろべるた・おーくりぃ)

 イルミンスールの根に必要な栄養剤の量は1000リットル。
 ひとり約50リットルずつ持っているので、トータルでは十分満たしている。

 運搬班の先頭に立つのはエリオット・グライアス。

 逆に、班の最後尾を行くのは御宮 万宗。彼は、台車に200リットル程の栄養剤を乗せてガラガラと引っ張っている。
 これは、途中で栄養剤を失うかもしれない班員の為の予備としてだ。

 そして、後を行く護衛メンバーたちが、彼のフォローにあたった。

 狭山 珠樹も、栄養剤をフリーズドライして粉状にしたものを、追肥用として携行している。

 パートナーの新田 実は、そんな珠樹を見てつぶやいた。

「『世界樹の記憶に触れることができれば、どうしてみのるんが封印されたのか、手がかりが掴めるかも』ってタマがいうから手を貸してやるか。
ビュリって魔女っ娘にフラれて落ち込んでる顔も見飽きたしな。
タマと契約しようなんて変わり者はミーくらいしかいないのさ」

 さらに新田 実は、後ろで見送るエリザに向かって言い放った。
「でも、世界樹の奴にどうしてエリザと契約したのかは聞いてみたいな」

 これを聞いた狭山 珠樹が
「みのるん、エリザ様にタメ口きくもんじゃないですわ!」
と叱ったのだが、その言葉が終わらないうちに、新田 実は箒で根の中に入ってしまった。
 やれやれ・・・・・・

 東雲 いちるは、いざ出発しようとしたら、
「うっ、栄養剤って結構重いですね。」
と、しり込みしてしまった。

 見かねたギルベルト・アークウェイがすかさずフォロー。

「ふらふらしているぞしずる。まったく。俺が少し持ってやるからこっちにわたしなさい。」

「え、ギルさんも持って行ってくれるんですか? ありがとうございます。
学園の世界樹ですもの、枯らせたくないですよね。
よし、じゃあ箒につるして持って行きますよー。」

 そういって東雲 いちるは、30リットルだけ持っていくことにした。

「今回は他の人間と協力するが…しずるも馴染めればいいが…。
まぁ、何かあったらしずるの方を優先させてもらう。本人には言わないが。
俺は結構、しずるを気に入っているのだ。」

 ギルベルト・アークウェイは、言葉の上では厳しいことを言っているが、こうやってパートナーのいちるをいつも見守っているのだ。

 御影 春菜とロベルタ・オークリィは、栄養剤を100リットル持っていこうと思ったが、いざ運ぼうとすると重すぎて運べなかった。

 残念だが、ここはみんなと同じ50リットルに減らして出発することにした。


 運搬班の前後を固めるのが、護衛および昆虫・モンスター退治班の勇士たちだ。

メニエス・レイン(めにえす・れいん)ミストラル・フォーセット(みすとらる・ふぉーせっと)
白砂 司(しらすな・つかさ)ロレンシア・パウ(ろれんしあ・ぱう)
シャーロット・マウザー(しゃーろっと・まうざー)
ジーナ・ユキノシタ(じーな・ゆきのした)
クロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)
水橋 エリス(みずばし・えりす)リッシュ・アーク(りっしゅ・あーく)
御剣 カズマ(みつるぎ・かずま)
カレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)ジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)
アルツール・ライヘンベルガー(あるつーる・らいへんべるがー)エヴァ・ブラッケ(えう゛ぁ・ぶらっけ)
ユーニス・シェフィールド(ゆーにす・しぇふぃーるど)
愛沢 ミサ(あいざわ・みさ)
織機 誠(おりはた・まこと)
八神 九十九(やがみ・つくも)ウルキ ソル(うるき・そる)

 しんがりを務める八神 九十九は、振り返ってエリザベートに尋ねた。

「根の中にいるのは悪い虫ばかりではないと思います。だから、良い虫の見分け方を教えてくれませんか?」

「そういえばそうでしたね。
基本的に、攻撃してこない虫は悪くないですぅ〜」

「わかりました。では、行ってきます」

 しかし、そのまま出発するのかと思ったら、九十九、今度はアーデルハイト・ワルプルギス(あーでるはいと・わるぷるぎす)にひそひそと、エリザベートに聞こえないように話しかけている。

「暇だったら一緒に遊び・・・・・・、もとい、モンスター退治に行かない?」

 だが、アーデルハイトからは
「ババをからかうんじゃない!」
とたしなめられてしまった。

 若く見えても5000歳なのだ・・・・・・。


 カレン・クレスティアとジュレール・リーヴェンディは、護衛チームながら、栄養剤を50リットル持ってきていた。
 こちらも、最終的に投与量が足りなくなった時のための予備としてだ。みんな準備がいい。

「だってさ、横道からでっかい虫が不意打ちしてきたら、栄養剤を運搬してる人達が危ないでしょ?
先にそういうのを見つけておけば安心だよ」
と、カレン・クレスティアは言うが、本音は違うようだ。

「ここにしかいない様な変わった昆虫モンスターを見つけたら、角の一本でも持って帰って、研究材料にするんだから」

 こう思いながら、カレンは門が開いた瞬間、ジュレを乗せて、空飛ぶ箒でスタートダッシュし、ひたすら奥の方を目指していった。


 さて、ここに、みんなと行動をともにしない人間がひとりいた。
 波羅蜜多実業高等学校の生徒で、ローグ(盗賊)のナガン ウェルロッド(ながん・うぇるろっど)だ。

「ヒャハヒヒ!!パラ実で売ってる奴よりキくぜぇえええ!」

 なんと、ナガンは、イルミンスールの根に注入するはずの栄養剤を、自分が飲んでいる!?
 どうやら、栄養剤を飲むことで、自分が強くなると思っているらしい。

「ヒャハヒヒヒ! おっと金になりそうなコイツも貰えるだけ貰っておかないとな。どうせタダだし!」

 根の奥には、世界樹の力の源があるに違いない!
 そう考えたナガンは、持てるだけの栄養剤を山と抱え、さらなる力を求めて根の中に入っていった。


 メンバーがあらかた根の中に入っていった後、ハァハァと息を切らせながら日下部 社(くさかべ・やしろ)望月 寺美(もちづき・てらみ)がやってきた。

「エリザ様、遅くなってすんまへ〜ん。
もうみんな根の中に入っちゃいましたよね。
お詫びと言っては何ですが、エリザ様のお手伝いをさせてもらえまへんか?」

 すると横からムジカ・ウィーズル(むじか・うぃーずる)が口を挟んだ。

「だったら、私たちの”ホース作戦”を手伝ってくれない?」

「ホース作戦!?」

 ホース作戦というのは、藤原 和人(ふじわら・かずと)の発案で、運搬メンバーになにかあって栄養剤が足りなくなったとき、ホースを使って直接根の奥にドバーッと送り込もうというものだ。

 藤原 和人が続けていった。

「ホースは4kmの長さが必要なんだ。だから、これらを集めるのを手伝ってもらえないかな?」

 エリザもそれに同意して言った。

「そうそう、和人とムジカのお手伝いをしてあげなさい」

「わかりました。じゃあ和人・ムジカ、協力するよ」

 こうして、日下部 社と望月 寺美がホース集めに加わった。

「せやけど、そんな長いホースなんて聞いたことあらへんよ。圧力の問題とか大丈夫なんか?」

 心配そうにいう日下部 社に、藤原 和人は自信を持って答えた。

「それは大丈夫。ムジカが解決してくれたから!」

 ムジカ・ウィーズルは、ヴァルキリーの一族ザンスカール家にまで頭を下げて、ホース作戦を成功させるべく、工面奔走したのだ。
 そういうムジカの健気な努力に、和人は心底感謝しているのであった。

 このホース作戦は、鯨魚戯 閃鷲(いさなぎ・せんじゅ)ウヒュイ・ホロケウ(うひゅい・ほろけう)も加え、敢行された。

 6人がかりで作業をし、数十分かかってようやく4kmのホースが集まった。

「よし、これで準備OK。ムジカ、じゃあ行ってくるぜ。
俺が連絡したら栄養剤を送り出してくれよな!
このホースが活躍するから」

「わかったわ、和人。気をつけて行ってきてね」

 こうして、藤原 和人、鯨魚戯 閃鷲、ウヒュイ・ホロケウがホースを持って根の中に入っていった。

 ムジカ・ウィーズル、日下部 社、望月 寺美の3人は、エリザとともに彼らを見送った。