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「 水中での戦い!人魚と魚人の協奏歌 」(第1回/全2回)

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「 水中での戦い!人魚と魚人の協奏歌 」(第1回/全2回)

リアクション

 浮島の数々において陸上戦を繰り広げている生徒の中には、先の本陣付近での混乱を見て、様子を伺いに戻って来る者も居たのであるが、その中の一人、
ノエル・カサブランカス(のえる・かさぶらんかす)と共に戻って来たメイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)は本陣の無事を確認すると、アリシアに提案をしていた。
「キュアポイゾンを試してみたいのですが」
 魚人たちの変貌が、毒性のある何かが原因であるならば、キュアポイゾンで正気に戻るはずである。アリシアは検証を行う事を許可した上で、スキルの発動をウェイル・アクレイン(うぇいる・あくれいん)のパートナーでプリーストのフェリシア・レイフェリネ(ふぇりしあ・れいふぇりね)に、またスキルをかけられる対象を、葉月 ショウ(はづき・しょう)遠野 歌菜(とおの・かな)が気絶させたまま連れ戻って来た魚人に決め指示した。
 魚人にキュアポイゾンがかけられる。それでも魚人の体、表面には何の変化もなかった。
 クロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)ロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)が構える中、氷術で固められたエペを抜き取り、ショウの雷術と顔面への水で魚人の目を覚ませてたが、目は真っ赤に血走ったまま、すぐに襲いかかろうとした。
 キュアポイゾンが効かなかった、それはつまり毒性のある何かが原因では無い事を意味していた。
 魚人は再びに取り押さえられていた。アリシアは水質調査を行っていたのだが、どうであろうか。原因を探る為の検討はまだまだ続きそうである。


 ところ変わって、ここはイルミンスール魔法学校の図書館である。チーム「真実の探索者」の面々は、それぞれに探し調べた本と情報を持ち寄り、照合している所であった。
 セイバーのセレスティア・エンジュ(せれすてぃあ・えんじゅ)が本を開き見せる。
「湾の歴史を調べましても、いつ整備されたのか、どんな技術が使われたのか、と言った事しか分かりませんでした。やはり……」
 続けて話したはプリーストのエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)であるが、開いて見せた写真も、その内容も、セレスティアが続けようとした内容と、ほぼ同一であったようだ。
「湾について調べると『 青刀の双岩 』についての伝説や言い伝えばかりが目に付く。例えばここ、『 大いなる力の源、その断片を封じた 』とある」
 それを聞いてバトラーのルカルカ・ルー(るかるか・るー)も本を見開き見せ、そこにパートナーのダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)カルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)も加わった。
「それなら、ここ、ね、『 再びに争い起こるであるなら大いなる力が目覚める事だろう 』って。大いなる力って何の事かな?」
「俺はそれよりも、争い起こるであるなら力が目覚める、の方が気になる。争いなら既に起きてしまっている事だ」
「そうか、なんか良く分かんないけど、何となくヤバいんじゃねぇの?何かが目覚めるんだろ?もうすぐ」
 ルカルカはセレスティア、そしてエースと瞳を交わすと、携帯電話を取り出した。
 青刀の双岩には何かが封印されている、そしてその封印は争いを糧にする事で解かれてしまうようであるからして、つまり、魚人同士の争いも、魚人対生徒たちの争いも今すぐ止める必要があるようなのだ。
 チーム「真実の探索者」の現地調査組へと連絡を入れた。そして今すぐに青刀の双岩へと向かうように伝えたのだった。


 同じく図書館で調べ物をしていたは、メイドのナナ・ノルデン(なな・のるでん)とパートナーのズィーベン・ズューデン(ずぃーべん・ずゅーでん)であるが、2人は思うような成果を上げられてはいなかった。
 ノーム教諭は今回の騒動について「裏で暗躍している者がいるのでは」の問いに明確な答え、すなわち否定をしなかったのだ。
 魚人たちの様子が変わった事、暴れ出した事が誰かの謀だとしたら。魚人たちを操る術が必要になるのだが、多量の魚人たちに同様の操作術をかける方法が、ちっとも見つからないのである、検討もつかなかった。
「はぁ、やはり考え方を変えるべきなのでしょうか」
 ナナがため息をついた時、甲高くも、しっかりとした声が館内に響き渡った。声の主はニジオール・リワン、イルミンスール魔法学校の音楽講師の一人である。
 リワンは、館内で携帯電話を使用していたルカルカ・ルー(るかるか・るー)に注意をしていたようだが、ナナの視線はリワンが抱えていた本のタイトルに釘づけになっていた。
「リワン先生、この本、どういう事ですか?」
「どういう事って? どうしたの急に」
 リワンが持つ本のタイトルは『 響音が与える精神への影響と関係性 』とあった。
「精神に影響を与える響音の中には、歌声も含まれるのですか?」
「歌声? もちろん含まれるわ。歌声に魔力を込める事で、その効果はより強力になる…… って、ちょっと」
 ナナとズィーベンは顔を見合わせてから、リワンの本を取り開いていった。目的の文字を探してゆくが…… 、あった!
「歌の種類や声によっては、聞く者の戦意を高めるものも存在する、とあるよ」
「えぇ、人魚の歌声なら、そこに魔力が込められるなら、魚人たちの戦意を一気に一様に高める事も可能という事に…… 、でも……」
 その推測が成り立つならば、人魚たちが魚人たちの戦意を高めて争わせているという事になる。これまでは仲良かったのに、人魚と魚人との間に争いがあったのであろうか、そしてそれ故に同士討ちをさせているとでも言うのであろうか。
 真実味を帯びてきた結論に、ナナは傾げたままの首はしばらく戻せそうもないように思えていた。


 魚人たちの氷術が届かない程の上空から、小型飛空艇に乗りて湾内を捜索していた島村 幸(しまむら・さち)とパートナーのガートナ・トライストル(がーとな・とらいすとる)であったが、不意にガートナが湾の隅、岩場周辺の海を指差した。そこには一つの頭部を見る事が出来た。
 高度を下げて近寄りた。水面から頭を出していたのは人魚は怯えながらもメルティスと名乗った。
「あなた一人ですか? 他の人魚たちは、どこに居るのです?」
「岩場の洞窟に横穴があるんです、そこにみんな居ます」
 魚人たちの暴走に巻き込まれないように避難していたのだが、海上の様子がおかしいと感じ、メルティスが様子を見に来たという事の様である。
「という事は、他の人魚たちにも異変は無いのですね?」
「えぇ、急に可笑しくなったのは魚人たちと、ルファニーだけです」
「ルファニーが? 一体どういう事ですか?」
 メルティスは魚人たちが暴れるよりも先にルファニーが誰とも話さなくなった事、そして仲間内から離れて行った事を、更にはルファニーが姿を見せなくなってから急に魚人たちが暴れ出した、という事を思い出しながらに幸に話した。
 どういう事だ? 今の話だとルファニーが魚人たちをけしかけて互いに戦わせた、とも取れるが、そんな事をする理由とは一体なんだろう。
「いいえ、私たちとルファニー、または魚人たちとの間にもトラブルは無かったと思います」
 となれば、ますますに動機が分からない。
 争いの種が無いルファニーが魚人たちを争わせる理由。真実に辿りつかずして、この謎を解くは難題である、そう、難題であるのであった。