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【十二の星の華】シャンバラを守護する者 その2

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【十二の星の華】シャンバラを守護する者 その2

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第1章


 村を火達磨にし、ホイップ・ノーン(ほいっぷ・のーん)の杖を盗んでいったおやじのバイクのタイヤ痕を確認すると、どうやら西の方へと向かっているようだ。
「――ホワイト……協力してほしい」
 エル・ウィンド(える・うぃんど)はパートナーであるホワイト・カラー(ほわいと・からー)に電話をし、簡単に説明すると協力を仰いだ。
 ホワイトは快く承諾してくれ、すぐに向かってくれるようだ。
 どうやらエルを心配し、近くまで来ていたらしい。
 エルは電話を切ると友人の方へと向いた。
「本当ならホイップちゃんの身を護っていたい。だが、ボクが彼女に頼まれたことは杖の奪還だ。護衛は陣さん、藍澤さんや他の皆に任せた。ボクは必ず杖を送り届ける!」
 エルが力強く言う。
「エルさんに頼まれたんや、任せとけ!」
 七枷 陣(ななかせ・じん)が元気よく返す。
「私も微力ながら精いっぱい守らせて頂きます」
 小尾田 真奈(おびた・まな)は陣の隣で言いながら頷いた。
「タダ働きはしない主義なんだが……おまえがそういうなら、な」
 レン・オズワルド(れん・おずわるど)はサングラスをくいっと上げて告げた。
「うん、行ってくるね!」
 エルは勢いよく馬へとまたがるとタイヤ痕を目印に走り出した。


「おっぱいとは張りがあっても柔らかくなくっちゃあいけないぜ。D70のバストが泣いている……なぁ? ガンマよ……」
 軍用バイクにまたがり、ブラックコートの内側に入っているガンマ・レイ(がんま・れい)弥涼 総司(いすず・そうじ)が嘆かわしいとばかりに言葉を吐いた。
「はは、オマエといると本当に退屈しねぇぜ。俺様にとって胸は丁度良いウォーターベッドぐらいな感じだが、たしかにタプタプ揺れてる方が気持ちいいな」
 ガンマは総司に少し同意を示した。
「ああ、そうだ。おっぱいは揺れてこそナンボだぜ!」
 総司はぐぐっと自分の拳を握りしめた。
「じゃ、そのおっぱいを取り返しに行くとするか」
「おう!」
 総司は気合いを入れてバイクを発進させようとした。
「我も乗せてはくれないか?」
 行こうとしたバイクを引きとめたのは百合園女学院制服を着た毒島 大佐(ぶすじま・たいさ)だ。
「さっき事情を聞いたばかりなのだが、おやじを我も追おうと思ってな。だが、我には乗り物がなく困っていたのだ」
 そう言われ、総司はすぐに了承した。
「助かる」
 サイドカーへと乗り込み、大佐は礼を言う。
「なに、女性なら大歓迎さ」
 総司は言うと今度こそ本当にバイクを発進させた。
「……我は男だぞ?」
 大佐の言葉にショックを受け、総司がハンドル操作を誤りかけたのは言うまでもない。
「本当、オマエといると飽きねぇぜ」
 ガンマはそんな様子も楽しんでいるようだ。


「グランさんは行かないッスか?」
 石化したホイップを見つめていた宿屋の青年主人グラン・リージュにサレン・シルフィーユ(されん・しるふぃーゆ)が質問をした。
「ボクはホイップちゃんの側に居ます……乗り物もないですし、皆さんの足手まといになってしまいますから。それに……ホイップちゃんが心配で……」
 サレンの問いに、グランはそう答えた。
「そうッスか。私はあのおやじに怒りの鉄槌を食らわしてくるッス! 自分の私欲のために幼い命を奪うなんて……許せないッス!」
 サレンはホイップをちらりと見てからバイクにまたがり、おやじを追いかけた。
「……皆さん、頑張って下さい」
 おやじを追いかけて行った皆を見つめ、グランはそう呟いた。


 石化ホイップの側の茂みでは軍用バイクに乗ったメイコ・雷動(めいこ・らいどう)マコト・闇音(まこと・やみね)が様子をうかがっていた。
 イルミンスール魔法学校でエル達の話しを教室の隅で聞いて、隠れてついてきていたのだ。
「大変な事になっちまってる……サイドカーが付いていたんじゃおやじに追いつけない。まこち! そっちは一人で行ってくれ。あたしはこの石像を守る」
 メイコはサイドカーを外す。
「任せておけ」
 マコトはサイドカーが外されたのを確認し、ゆっくりと気づかれないように他のメンバーの跡を付けて行った。


 おやじの跡を追うのは、明るい場所にいる者たちばかりではない。
 ひっそりと見つめる目が幾つもあった。


 火事を興味なさそうに傍観していたのは、メニエス・レイン(めにえす・れいん)ロザリアス・レミーナ(ろざりあす・れみーな)だ。
 2人は現在、隠れ身を使いながら箒で空を飛んでいた。
 勿論、木々の影に隠れてもいるので見つかる事はそうそうないだろう。
「あの杖が欲しいわ」
 メニエスは口の端を釣りあげ、妖艶な微笑を湛えながらおやじが走って行った方向を見ている。
「行くわよ、ロザ!」
「うん! おねーちゃんの物はおねーちゃんのもの。この世の物は全部おねーちゃんの物だもんね!」
 2人は更に慎重におやじ達を追いかけて行った。


「良いねぇ。是非家に飾りたいな〜!」
 少し離れた場所から石化ホイップに賛辞の声を上げたのはマッシュ・ザ・ペトリファイアー(まっしゅ・ざぺとりふぁいあー)だ。
「あんな背徳心の欠片もない良い子ちゃんに興味はないな」
 マッシュの言葉をシャノン・マレフィキウム(しゃのん・まれふぃきうむ)が一刀両断した。
「そうですか? 苦悶の表情とまではいかないですけど、少し憂いを帯びていて――」
「そんなことより、行くぞ」
 石化について熱く語ろうとしたのをシャノンは遮った。
「はーい」
「ああ、それと……」
 小型飛空艇の上からマッシュへと振り返る。
「その巨大甲虫では羽音が大きすぎる。こちらに移れ」
 自分が乗っていた巨大甲虫を木々と茂みに隠してからシャノンの後ろへと乗る。
 2人は音もなく、静かにおやじ達へと距離を縮めて行った。