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【野原キャンパス】吟遊詩人と青ひげ町長の館(前編)

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【野原キャンパス】吟遊詩人と青ひげ町長の館(前編)

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 8.昼・野原キャンパスにて

「さて、昼か。それにしても、今日は散々な目にあったな」
 キャンパスが用意した弁当を【捜索隊】に配りながら、シイナは眉を潜める。
 それはさておき、と席について。
「食べながらになるが、集めた情報を基に考察することにしよう」
 だが我々はただの学生だからな、と続けて。
「【百合園女学院推理研究会蒼空支部】の面々に任せようと思う。専門家に任せた方がよい時もあるからな」

 という訳で、舞、ブリジット、仙姫の【百合園女学院推理研究会蒼空支部】は、食事中にもかかわらず考察を行うこととなった。
 
「……以上から、11個の推論を得ることになるわ!」
 ブリジットは、舞が黒板に書いた文字を指示棒で指し示す。
 黒板には以下の推論が、綺麗な筆跡で書かれてあった。
 
 ・娘達を集めている理由は町長ではなく、「魔術師」が「ダークヴァルキリー」の生贄とするために集めていること。
 ・娘達をわざわざ蝋人形化するのは、その方が鮮度を保てるためだということ。
 ・蝋人形化を解くためには「解呪薬」が必要であること。
 ・「解呪薬」は「魔術師」が持っているらしいこと。
 ・町長と「魔術師」は関係があり、ひょっとしたら「魔術師」に脅され利用されている可能性が高いこと。
 ・町長がパートナーである町長夫人を「魔術師」に人質として捕られているかもしれないこと。
 ・その場所は古代の「鏖殺寺院砦跡」が怪しいこと。
 ・「迷いの森」のトレントは、魔術師の僕であること。
 ・トレントとは、「木の化け物」であること。
 ・ルミーナと「魔術師」は知り合いらしいこと。
 ・ルミーナとオルフェウスの蝋人形には「秘密」があるらしいこと。
 
「何やら面倒臭い推論じゃがのう」
 仙姫が感想を述べる。
「とにかく、やることは多くてしかも鏖殺寺院がらみらしい、ということだけはわかったぞ!」
「言われて嬉しい結論でもないわね」
 美羽は頬杖をつき、その肩にコハクが手を載せて労わる。
「1つだけ、言えることはね」
 とブリジット。
「『迷いの森』は魔術師の手の内にあるのでしょう? 彼は鏖殺寺院の手下なのだから、7校のことは当然良く思ってないわ! という訳で、【青ひげ町長退治】組を即効撤退させるべきだと思うけど?」
「そうだな、トレント達の動きも気になるし……」
「弱点の分からない怪物なんじゃ、なおさらのことね。シイナ、手遅れにならないうちに……てどうしたの? 朔」
 ブリジットの視線の先に、青ざめた朔の顔がある。
「紗月は森側だったか……」
 シイナは携帯電話を素早く操作する。
「早めに撤退させよう! 彼らの帰還を待って対策を立てることにしよう」

 だが、その頃「迷いの森」では既に事件が起こっていた。