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枕返しをする妖怪座敷わらしを捕まえろ!

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枕返しをする妖怪座敷わらしを捕まえろ!

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第8章 続・捕まえる?はぐする?いえ鬼ごっこです

「旅館じゃなくてただの温泉なのか」
 泊まるところがなく、和原 樹(なぎはら・いつき)はがっくりと肩を落とす。
「そう気を落とすな。休める部屋はいくつかあるんだからな」
 フォルクス・カーネリア(ふぉるくす・かーねりあ)が樹の肩をポンポンと叩き、男女共有で休める場所へ行く。
「毛布があるみただから3人分借りてきた、その和室で休もう」
「私・・・ここがいい」
 川の字になって眠ったふりをし、ショコラッテ・ブラウニー(しょこらって・ぶらうにー)は真ん中で寝転がる。
「あ、枕元に置いておかないと分からないよな」
 休む前にお饅頭と冷やし飴を、枕元にお供えしておく。
 3人がウトウトし始めた頃、ソロ・・・ソロリと誰かの足音が近づいてくる。
「(来たのか?)」
 ディテクトエビルで察知したフォルクスは目を閉じたまま、眠ったふりを続けて隣にいる樹とショコラッテの裾を引っ張り、座敷わらしがやってきたと教える。
「こんなところで3人も寝てる。この子たちの枕も返しちゃおうっと」
 クスクスと笑いながらフォルクスたちに迫る。
「(お菓子に気づかない!?それとも無視されているのか!」
 樹の枕元にあるお菓子をまったく見ず、座敷わらしは枕元へ迫っていく。
 もしかしたら枕を返されてしまうかもしれないと、樹たちは仕方なく起きる。
「こんなところに、お菓子があるな樹」
 座敷わらしに気づいてもらえるように、フォルクスはわざとらしく言う。
「あぁー、それはお供え用に置いておいたんだ。ほらお供えものだよ、あげる」
 樹が渡そうと少女にする。
「待って!これでなんとか・・・もう少しここにいてくれないか。俺たちと話そう」
 警戒する彼女にお菓子を入れた包みを握らせる。
「離してっ。わらしは豊作や観光に来る人ようにしてあげたのに。それなのに、忘れるなんて酷い。村人にお供えものをしないとどうなるか分からせてやるんだからっ」
「たしかに・・・お供えものを忘れるなんてよくないな。しかもちゃんと見返りを上げていてもくれないんじゃ・・・」
 ムスッと怒る相手を、樹が宥めようとする。
「ここの住民たちも悪気があったわけではない。そろそろ許してやってはどうだろうか?」
 話せそうな頃合を見計らい、フォルクスは長屋の村人を悪夢から解放するように言う。
「やだもん」
 プイッとそっぽを向き、あっさり拒否する。
「(ぁあっ、まったく!どうしたら機嫌を直してくれるというんだ!?)」
 不機嫌な妖怪の少女を見つめ、フォルクスはお手上げ状態になる。
「フォル兄・・・私ね・・・。どうして忘れたの、気づいてくれないのって、恨む気持ちも少しは分かるの」
「―・・・うっ。(たしかにそれはそうだがっ)」
 黙って話しを聞いていたショコラッテが口を開き、彼女に言われたフォルクスは口を閉じてしまう。
「ねぇ・・・一緒に遊ぼう」
 ショコラッテは座敷わらしの裾を引っ張り、何かして遊ぼうと声をかける。
「私、あやとりが上手くできないの。でも1人じゃ練習できないし・・・教えてもらえたら嬉しい」
「うん・・・ちょっとだけなら」
「どうやるの?」
 ショコラッテはもって来た紐を持って教わる準備をする。
「まず人差し指と親指、それぞれ両方紐をかけて」
「こう・・・?」
「うん。でね、親指と人さし指に紐をかけて、人差し指のところの真ん中を親指でそれぞれとるの」
「真ん中・・・これね」
「人差し指と親指にある紐を、人さし指で互いにとって」
「出来た・・・」
「親指と人差し指にかけて、バッテンに交差しているところがあるの分かるかな?」
 座敷わらしの説明にショコラッテはこくりと頷く。
「人差し指にかかってるのを、人差し指で押さえて・・・。親指と人差し指の後ろにある紐を2本外すの」
「ちょっと・・・難しい。―・・・出来た」
「まっすぐ親指にかかっている上の方を人差し指でとってみて」
「うん・・・今度のは簡単」
「次はちょっと難しいかも。左手のひもを全部外して」
「―・・・うん」
 ショコラッテは崩さないようにそっと紐を外す。
「右手の人差し指の外側と、親指の内側にかかている紐を、左手の親指と人差し指を入れて手を戻すんだよ」
「―・・・難しい・・・」
「バッテンぽくなっている人差し指の内側にある紐を、人差し指で押さえて。親指と人差し指の後ろにある紐を、今度は上の方だけ外してみて」
「外した・・・。真ん中が・・・、ひし形みたい・・・」
「左手の親指と右手の人差し指にかかっている1本の糸を、両手の小指を下から入れるの。それが出来たら親指にかかっている2本の外して両手を広げてみて」
「出来た・・・」
「上手く出来たなショコラッテ!」
 黙っていたフォルクスが彼女を褒める。
「これ何ていうんだ?」
 樹があやとりの技の名前がなんなのか聞く。
「山の上のお月さんだよ」
「へぇ〜たしかに山とお月様に見えるな」
「遊んでくれたから・・・。これ、お礼・・・」
 ショコラッテが座敷わらしに妖精スイーツを手渡す。
「美味しそう、ありがとう」
「ねぇ今、あっちから声が聞こえなかった?」
「行ってみましょう」
 美羽と由宇が休憩室の廊下を歩く。
「このままでは捕まえられないかもしれません」
「どうしようか・・・」
「私とアレンくんが社の塀のところに隠れて、そこで捕まえます。捕まえられなかったとしても、追い追い込めるかもしれません」
「そうね・・・」
 ヒソヒソ声で話して美羽はそのまま温泉の休憩所辺りを探し、由宇はアレンと一緒に社へ向かう。
「どこにいるんですかー?出てらっしゃい♪」
「あの人がだいぶ脅威だわ」
 ほとんど望が怖くて逃げている座敷わらしが、また彼女の姿を見たら逃げてしまうのではと美羽が警戒する。
「ぁあっ、見つけました!お待ちになってください〜」
 樹たちがいる和室に望が乗り込む。
「行っちゃった・・・」
 望に怯えて座敷わらしが逃げ出してしまい、ショコラッテが寂しそうに呟く。
「くぅ、先に見つけられちゃった。早く追いかけなきゃ」
 美羽は望より先に座敷わらしを捕まえようと外へ出る。



「あれは望ちゃんか?で・・・あれが例の妖怪!?」
 七枷 陣(ななかせ・じん)は笑いながら座敷わらしを捕まえようとしている望を見つける。
「たとえ相手が望ちゃんでも、無理に捕まえようとしてるなら止めなきゃな。―・・・なっ何か笑顔が・・・怖いぃいっ!」
 妖怪を追いかけている彼女の微笑みが、まるで連れ攫おうとしているような、危ない笑顔になっている。
「座敷わらし!捕まったら何されるか分からん、早くこっちへ・・・ぶへっ!!」
 護しようと両腕を広げるが、少女に頭を踏み台にされる。
「ごめんねおじさん」
 彼女はそう言い走り去って行く。
「もう何やってるの陣くん!ちゃんとキャッチしてよねっ」
 保護に失敗したリーズ・ディライド(りーず・でぃらいど)が陣を怒鳴りつける。
「そんなこと言ったてなぁ。こっちは頭を踏まれた上に、オレをおじ・・・おじっ・・・・・・どぁああーっきりきりまーい!」
 ムッとした顔をするリーズに陣が反論していると、猛スピードで走り去る望が起こす烈風に吹き飛ばされる。
「くそっ何だってこんな目に・・・。んぎゃああぁ、きりきりまぁあいパート2!!」
 今度は美羽が走る速度で起こった風に煽られ、路上の上でくるくると回る。
「こっちが善意で保護しようとしたり、捕まえるのを優しく止めようとしているっつーのに。何だこの仕打ちはぁあっ」
「陣くん・・・」
「―・・・はっ!分かってるって・・・」
 鋭い目つきでリーズに睨まれ、陣はしゅんとする。
 捕縛を止めようと望たちを追いかけていく。
「こら、望ちゃんたち!いいかげん追い回すのをやめろって、いやがっているじゃんか」
 バーストダッシュで彼女たちに追いつき、奈落の鉄鎖で望の足に絡ませて路上へ落とす。
「きゃぁあっ」
 止められた望はあっけなく、ベタンッと地べたに落ちる。
「もう1人は・・・あれ?どこに行ったんだ?」
「何ぼけーっとしてるの陣くん。社の方に行っちゃったよ」
「んじゃ追いかけるか」
「待ちなさいっ!」
 ゆらりと立ち上がった望が凄まじい憤怒のオーラを纏い、陣を睨みつける。
「どうして私の邪魔をするんですか!?」
「そりゃ無理やり捕まえようとしてるから止めただけだっつーの」
「私があんな可愛い子を無理やりですか?心外ですね!この私が幼い心を傷つけるかもしれないことをするわけないじゃないですか」
「だったら何で追いかけたんだ?」
「他の皆様と一緒に、鬼ごっこをしているだけです」
「鬼ごっこ?望ちゃんが?」
 陣はじーっと訝しげな目で彼女を見る。
「酷いです!そんな人を疑うような目で見るなんて」
「いやだって・・・何だか顔が・・・怖かったし」
 望が座敷わらしを追いかけている姿が非常に異常だと言う。
「怖い?とりあえずそれは七枷様の目の錯覚だととっておきます」
「錯覚か?」
 彼女の言葉にどうも腑に落ちないという顔をする。
「鬼ごっこだって。どうする陣くん」
「うぅー・・・そういってんじゃ無理に止められないじゃないか」
「まぁとりあえず皆、社の方に行ってるみたいだから行ってみよう」
「そうやね・・・」
 陣はとぼとぼと社へ歩く。



「クマラ!座敷わらしちゃんがいたぞ」
「え!?どこどこ!あーっ本当だっ」
 エースが指差す方を見て、クマラは草むらへ走って行く。
「足が速くて追いつかないよー。むーっ、また見失っちゃった」
「まだ近くにいるはずだ、諦めるなっ」
「うん!オイラ鬼ごっこだし追いかけなきゃ。捕まえちゃうよ〜、座敷わらしちゃんどこかなー?」
 逃げる少女を探してエースと一緒に、どんどんと草むらを進む。



「もうすぐ来そうですよアレンくん。準備はいいですか?」
 ブラックコートを着て気配を隠しているパートナーに由宇が声をかける。
「うん、いつでも!」
 アレンは社の近くにある塀へ身を寄せて潜む。
「来ますよ。いっせいのー・・・それーっ!!」
 塀に隠れている由宇が座敷わらしに飛びかかる。
「あうっ」
 さっと逃げられてしまい、地面へ転んでしまう。
「起きてくださいっ」
 クリスが眠りかけている綺人たちを、斧頭でベシベシッと叩き起こす。
「だけどこれで終わりじゃないんですよっ」
「誰!?わぁあ」
 潜んでいるアレンに腕を捕まれてしまった。
「やっと追いついたわ!」
 逃げられないように、美羽がもう片方の腕を掴む。
「そこにいたんですね。今行きますから待っててくださいねー♪」
 もの凄いスピードで望が駆け寄ってい来る。
「やだぁあっ」
 あまりの恐怖に座敷わらしが悲鳴を上げる。
「何か飛んでくる・・・うわぁああ!?」
「きゃぁああーっ!!」
 望は少女の胴体にしがみつき、アレンと美羽を巻き込んで、ごろごろと地面へ転がる。
「あーっ、いたー。座敷わらしちゃん捕まえたっ」
 追いつくことが出来たクマラが、ニコッと笑いかける。
「むぅう・・・っ」
 妖怪の少女はあっとゆう間に生徒たちに囲まれてしまった。