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秋だ! 祭りだ! 曳き山笠だ!

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秋だ! 祭りだ! 曳き山笠だ!

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秋祭り

 
 
「さあ、急転直下、めっきりと秋めいて参りました今日このごろ、ここ空京も、今日は秋祭り一色で染まっております」
 曳き山笠のメイン司会であるシャレード・ムーンが、空京のメインストリートに集まった人たちにむかって実況を始めた。
 沿道はたくさんの人々で埋め尽くされ、様々な出店も並び、パラ実の方々の貴重な収入源となっている。
「夏祭りに続きここ空京で行われた秋祭り、今日はメインイベント、空京のメインストリートでの曳き山笠が行われます。スタートはここ空京大学校庭、そこからメインストリートを通りまして、第一の大曲で大きくカーブします。さらにシャンバラ宮殿前通りを走り、第二の大曲を経て空京神社の参道を駆け抜けてゴールとなります。では、参加山笠の様子を見ていきたいと思います。最初は、ドラゴン山笠です」
 ジーナ・ユキノシタ(じーな・ゆきのした)ガイアス・ミスファーン(がいあす・みすふぁーん)七尾 蒼也(ななお・そうや)が曳くドラゴン山笠は、ユイリ・ウインドリィ(ゆいり・ういんどりぃ)によって張り子のドラゴンを模した大きな物となっていた。翼を畳んで立ちあがっているドラゴンは、パラミタのドラゴンらしくやや擬人化されていて、左手に火龍の杖、右手に水晶玉を持つ、威厳のある姿となっている。本物の竜の牙や爪で、リアル感もバッチリだった。鱗の各所には、光り物が飾られていて思った以上にきらびやかでもある。さらに、ときおり咆哮をあげてキラキラと光るギミックまでもが搭載されていた。
 曳き手三人の他にもペットの剣竜の子供が三匹に、ゴーレムのビスマルク、パラミタ虎のポンカ、パラミタ猪のタロなどが山鉾に繋がれており、山笠というよりは一見すると牛車という感じもしたりする。さすがに曳き手にはなれないティーカップパンダのシンシアと毒蛇のリヨンは段ボールでできたドラゴンの上に乗っていた。ペット総動員の山笠は、ある意味今回最大規模の山笠となっている。
「かなり凝った人形山笠です。その分目立ちますので、他のチームがどう出るかが心配です。ペットたちの頑張りで優勝できるでしょうか。現場の大谷文美さーん、インタビューお願いします」
 シャレード・ムーンが、マイクを中継アナの大谷文美に渡した。
「はい、こちらはドラゴン山笠ですう。お話を聞いてみましょう」
 大谷文美が、リーダーであるジーナ・ユキノシタにマイクをむけた。
「ええと、山笠を皆で楽しく曳く姿を見せることで、ドラゴンやドラゴニュートへ親近感をもってもらいたいと思ってます」
「うむ、ドラゴンはすばらしいからな」
 ジーナ・ユキノシタの言葉に、ドラゴニュートであるガイアス・ミスファーンがうなずいた。
「ジーナさんは俺が守りますから」
 自前で参加する予定だったのが、ジーナ・ユキノシタが自分の山笠で参加するというので急遽協力した七尾蒼也が自信たっぷりに約束する。
「みなさん頑張ってくださいね。応援してますから」
 そう言うユイリ・ウインドリィは、曳き手ではなく併走して応援の予定らしかった。
 
    ★    ★    ★
 
「さて、次は……。ええと、あれ? 参加リストに名前が……」
 シャレード・ムーンが、バタバタと手許の原稿を探し始めた。あわててアシスタントが手書きのメモを持ってくる。
「あっ、失礼いたしました。次の山笠は、雪ノ下 悪食丸(ゆきのした・あくじきまる)さんの雪の下山笠(仮称)です。正規のエントリーはされてないようですが、来年にむけてのお試し参加ということで乱入なされたようです。お試しということなので、リヤカーに近い山車の上にろくりんピック公式タオルを使った簡単な幟が立てられています。どうやら幟山笠のようです。非常にシンプルな分動きやすいとは思いますが、一撃で粉砕されそうでもあります」
「お試しと言っても、やる気は満々だぜ。今後のこともあるからな、目指せ完走!」
 雪ノ下悪食丸が熱く語った。
「燃えてます、雪ノ下悪食丸さん。はたして、様子見で終わるのか、それともちゃっかり優勝までいってしまうのでしょうか」
 
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「さて、次は雪国 ベア(ゆきぐに・べあ)さんの……えっ、違う? 失礼しました。ソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)さんのチームの白熊山笠です」
「ちがーう、俺様の山笠なんだから、俺様がリーダーで……」
 叫ぶ雪国ベアを、ソア・ウェンボリスがポカリとやって黙らせた。
「これは、また大きな人形山笠です。白熊でしょうか。なんでも、両目からレーザーを発射するそうです。いいんでしょうか……」
「はっははははは、すべてを焼き払って、わらわたちだけが空京神社に辿り着いてみせようぞ」
 白熊のハリボテの上で、悠久ノ カナタ(とわの・かなた)が腕組みしたまま颯爽とのたまった。白熊の頭には、振り落とされないようにつかまるための緩世音菩薩像がにょっきりと突き出ていた。ちょっと異様である。
「ノリノリですね」
「ああ、ちょっと怖いというか、嫌な予感はするがな」
 山笠から前に突き出た山鉾に手を添えながら、曳き手であるソア・ウェンボリスと緋桜 ケイ(ひおう・けい)が短く言葉を交わした。
 
    ★    ★    ★
 
「さて、次は夏祭りで行われた喧嘩神輿の優勝チーム、雪だるま山笠の登場です。こちらもまた、大きな人形山笠となっています。巨大な雪だるまのハリボテって……なんだか喧嘩神輿のときの再利用のようです。大丈夫なんでしょうか。少しよれていますし、雪だるまも左に傾いているような気がします。これでは大曲が不利だとは思いますが、とりあえず反時計回りですからなんとか曲がれるとは思いますが」
「ははははははは、天下のお祭り男、クロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)、そいや!!」
 山笠のてっぺんでイルミンスールの制服の裾をはためかせながらクロセル・ラインツァートが名乗りをあげた。
「邪魔でござるよ、クロセル殿。ここは拙者の場所でござる」
「あ〜れ〜」
 童話 スノーマン(どうわ・すのーまん)に突き落とされて、クロセル・ラインツァートが山笠から落下した。
「だ、大丈夫ですか?」
 インタビューしようとしていた大谷文美が、あわててクロセル・ラインツァートに駆け寄る。
「心配ありませーん。慣れてますから」
 シャキンと立ちあがって復活したクロセル・ラインツァートが答えた。
「ははは、体力使うお祭りにあっては、それぐらいでないと勝てませんですね。もちろん、私の出番でもあります。さあ、みなさん一緒に熱く! 激しく! 盛りあがろうではないですか!」
 ルイ・フリード(るい・ふりーど)が、はち切れんばかりの筋肉を期待でムキムキさせながら語った。
「俺たち雪だるま王国は常勝だということを再度証明してみせてやるぜ」
 山笠の後ろについたコルセスカ・ラックスタイン(こるせすか・らっくすたいん)も優勝する気満々だ。
「雪だるま山笠は、優勝候補ナンバーワンとの下馬評も高いですが、何が起こるか分からないのもまたお祭りです。はたして、夏秋連覇はなるのでしょうか」