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リアクション
話は15分ほど前に遡る。
甲陣営の『旗』が立てられた本陣周辺には誰一人の姿も見えなかった。
これまでに進攻してきた者が居ないというものまた事実、しかし理由はそれだけではない、そう! 罠を仕掛けて待ち構えていたのです!
近くの茂みに身を潜めて笹野 朔夜(ささの・さくや)は待っていた。ゲーム開始から夜がとっぷり深くなるまで、もうすぐ朝になろうとしている今の今まで、ずっとずっとに待っていて―――さすがに不安になった。
「こ……」
「……?」
すぐ横の木の上に身を潜めている笹野 冬月(ささの・ふゆつき)は、イヤホンマイクを軽く押して耳をすました。
「こ……」
「こ?」
「来ないですね」
「…………」
ようやく聞き取れた言葉がこれとは。というか、よくここまでこのセリフを言わずに我慢していたものだ。
「あの、これ僕たち『夕暮れのかくれんぼ、置いてきぼりエディション』なのでは……?」
「…………何を言っているのか、とりあえず、さっぱりだな」
とは言ったものの、確かにここまで誰も来ないというのはオカシイ。終了の合図もまだだし、見逃したとも考えにくい。
その時だった。
「ん? あれは?」
何者かが近づいてくる。暗がりの中なので人影としか言えないが、とにかくに携帯で朔夜に伝えた。
「本当ですね! そう、そのまま、そのまま直進です」
仕掛けた罠に人がかかる! 待ちに待った瞬間が―――そう思っていたのに……。
暗がりの中ではっきりとは見えなくても分かる、それは人ではないと……だって足音がガッチャンガッチャンって言ってるんだもの。
朔夜が力無く口を開けた時、上空から一帯にエアガンの銃弾が掃射された。
「あぁっ!」
銃撃により、ワイヤーとクラッカーが一斉に発動してしまった。
「はぁっ!!」
ガッチャンガッチャンと足音を立てて歩む。『武者人形』は見事に落とし穴にはまっていった。
「そ、そんなぁ……」
わずか数秒で、仕掛けた罠の全てが発動してしまった……。
思わず立ち上がったとき、後頭部に何かが触れた。
「えっ?」
「はぁい、動かないでね〜」
それが銃口だと気付くのに少しかかった。ルカルカ・ルー(るかるか・るー)にエアガンを突きつけられていた。
「旗の周りに誰も居なかったら、間違いなく罠だもんね。一斉に掃除しちゃったよ」
「そ、掃除って」
目だけで見上げてみれば、冬月も拘束されていた。首に鷹村 真一郎(たかむら・しんいちろう)の太い腕が回されている。
「他愛無いな。これで終いか?」
「そうだよ、悪かったな」
冬月は声を荒げて言った。「みんなパッフェルと戦いたくて行っちまったんだよ」
仕掛けた罠は全て開き、本陣を守る人員2人も捕獲した。つまり―――本陣制圧?
「え? こんなにあっさり?」
「しかし、筋は通っている」
2人を拘束したままルカルカと真一郎が茂みから出た時にはセシリア・ファフレータ(せしりあ・ふぁふれーた)が無人の『旗』に駆け寄って、思い切り殴り倒した後だった。
パッフェルを含む乙陣営の面々が戦場にて『殲滅』するより前に、ルカルカたちが本陣の『旗』を倒すのが先だった。つまり今回のサバゲーは実は乙陣営の勝利だったわけである。
これほど劇的でドラマティックな大逆転劇が未だかつてあっただろうか―――
以上、現場からの報告でした。
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