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らばーず・いん・きゃんぱす

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リアクション


●今年最大のリア充!

「さっすが大学、食堂だってたっくさんあるんだなー!」
 真白 雪白(ましろ・ゆきしろ)も今日は見学者、真黒 由二黒(まくろ・ゆにくろ)と二人でキャンパスを闊歩している。空京大学は広い。まだ拡張工事も予定されているので、学部間移動のためにモノレールを敷設しようという計画もあるくらいだ。
 当然、学食の数だって多い。なんとなくおいしそう、という理由で二人は農学部食堂を目指していたのだが、途上の購買で妙なものを見つけていた。
「ね、クロクロ、これなんだろ? 『空大限定生カレーキャラメル』だって!」
「今から学食にカレー食べに行くのにそんなの買うの? だいたいこれ、『まずくて売れてません』ってポップが付いてるじゃない」
「いいのいいのカレーは別腹っ、カレーカレー♪ そういえばここの学食、噂では裏メニューに『超激甘』ってのがあるらしいよ? リンゴと蜂蜜が『嫌になっちゃうくらい』入ってるんだって!」
「なんかもうそれ聞いてるだけでお腹が膨れてきたわ……」
 などと言葉を返しながらも、由二黒は雪白がはしゃいでいることを喜んでいた。超激甘やカレーキャラメルはともかくとして、雪白が大学を気に入って将来進学を選んでくれればなお嬉しいと思う。なぜなら由二黒も、彼女の家族も、本当は雪白が兵役につくことに反対しているのだ。
(「言ってきく性格じゃないから、彼女自身が今日の見学で将来について考えてくれるといいんだけど……」)
 と想う由二黒を、雪白が大きな声で現実に引き戻した。
「買った、買ったよー! 生カレーキャラメル」
 スキップしそうなくらい喜んで雪白は駆けだす。
「これ噛みながら超激甘カレー食べるのってどうかな?」
「すごく遠慮したい……う?」
 追いかけようとした由二黒だったが、背中に白いゴム状のものに貼り付かれて転んでしまった。黒いゴスロリ服だったのが目を惹いたらしい。
「うわなにこれ! こらやめろ!」
 一方で雪白も災難にあっていた。キャラメルの包みに褐色のゴムが飛びついてきてその半分以上を囓り取ったのだ。
「これはケンカを売られたな? ちびでも教導団。自分の身は自分で守るのが基本!」
 きっと眉を上げ雪白は銃を抜いた。
「手出ししたことを後悔させてあげる! 射殺! 射殺!」
 学校内であることを忘れ、レーザーガトリングのトリガーを、目にも止まらぬ速度で引いて引いて引きまくった。光線は絶え間なく飛びゴムをズタズタにする。同様に由二黒も怪ゴムをひっぺがして、
「真面目な気持ちで来たのに何、この空気読まない怪物は! ふざけてるの?」
 と、ファイアストームでこんがり焼いたのである。
「シロシロ大丈夫? 怪我してない?」
 由二黒は自分の着衣が乱れていることに構わず、雪白に抱きついた。
「うん、平気……あっ、でも何か飛んでくる!」
 二人は抱き合ったままごろごろと転がって難を逃れた。
 二人がコンマ五秒前までいた場所に、今度は桃色の怪ゴムが落下してぷるぷると震えている。
「リアジュウシネーー!」
 桃ゴムは身を捩ってバカなことを絶叫する。その端っこを、びたん! と踏んで、由二黒は挑発的に言った。
「はっ、なによそれ僻んでるの!? そりゃね、僻む気持ちはわかるわ。私には血の繋がってない……あ、ここ重要よ、血の繋がっていないちょーカワイイいもうと☆ がいるものね」
 そのまま撃ち抜けば速やかに倒せただろうが、由二黒はあえて足を離し、ぴしゃりと相手を指さして告げる。
「かかって来なさい桃色の変なゴム! 今年最大のリア充が相手をしてあげるわ!」
「シ、シネーー!」
 飛来してくるのを巧みにかわして、もう一度、由二黒は強力な火炎を浴びせる。
「冥土の土産に持って行きなさい、この言葉を……『私の妹がこんなに可愛いわけがない!』
 炎は耳を聾すほどにうねり、桃色ゴムを瞬時にして焼き尽くしてしまった。