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カノンを取り戻せ『完結編』

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カノンを取り戻せ『完結編』

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エピソード0




 榊 朝斗(さかき・あさと)が【根回し】でコリマ・ユカギール(こりま・ゆかぎーる)校長の元を訪れると、こう頼み込んだ。
「鏖殺寺院の基地にテレポートで送り込んでいただけないでしょうか?」
 と。
 しかしコリマ校長は
「だめだ」
 と一言断りを入れるのみであった。
「なぜです? 前例があるではないですか!」
「あの時とは緊急性が違う。その上テレポートには準備と金がかかりすぎる。テレポートは許可できん。しかし、【鏖殺寺院の紋章】と平等院鳳凰堂 レオ(びょうどういんほうおうどう・れお)を通じての偽情報の流布ぐらいはしておこう。お膳立てはするから自力で行くがいい」
「わかりました。そういう事なら……では新人の整備士が入ってくるということでお願いします」
「移動手段はあるか? なければ用意するが?」
「いえ、飛行翼があるので大丈夫です」
「ふむ……では退出するがいい。これでも私は忙しい……」
「了解です。失礼しました」
 こうして朝斗は単身鏖殺寺院の基地に潜入した。

 ――鏖殺寺院基地――

 トライブ・ロックスター(とらいぶ・ろっくすたー)は仮面で顔を隠して鮮血副隊長と名乗り、しばらく前から基地を訪れていた。
 その上でレオの後見人としてその立場を保護していた。
 トライブのパートナーの王城 綾瀬(おうじょう・あやせ)は仮面で顔を隠していないので綾瀬の存在でトライブが鮮血副隊長と認められることになった形式である。
 そして、コリマ校長から連絡を受けたレオは、人事のコンピューターに偽データを流し、朝斗が新人の整備士として入ってくるという情報を仕込んだ。

 それから――

「新任のアーサー・サカギです。よろしくお願いします」
 一応偽名を使い【鏖殺寺院の制服】を着て【鏖殺寺院の紋章】を見せ、寺院の基地に乗り込んだ朝斗は、事前にプログラミングしたワームを【銃型HC】に隠し持ちつつイコン整備士として配置されることになったのであった。
 同じように潜入しようとした天真 ヒロユキ(あまざね・ひろゆき)とそのパートナーの貴音・ベアトリーチェ(たかね・べあとりーちぇ)は身分を偽る、制服や紋章の準備をする、偽人事データの流布をするといった準備行動がなかったため、基地に入る段階で怪しまれて追い返された。
 さすがに即処刑ということはなかったものの、準備不足で乗り込むのは無理があったようである。
 そしてイコン整備士として高い技量を見せた朝斗は強化人間や元教官達のイコンを任されるようになり、整備の際に一機ずつレオナルド・ダヴィンチ(れおなるど・だう゛ぃんち)とともに以前データハッキングで手に入れたデータを元に作成されたシステムダウン用のワームを仕掛けて行ったのである。
 さらには自由に動ける範囲内で基地の内部を歩きまわり、【防衛計画】、【記憶術】を用いてマッピングし、【銃型HC】に登録して行った。
 その上で【サイコメトリ】でイコンに誤動作を起こさせる怪電波発生装置について調べた。学校側のイコンは対策済みであるがレオが乗ることになるシュヴァルツ・フリーゲや強化人間のイコンには対策が施されていないためレオが裏切った際やカノンの洗脳が解けて元に戻った場合に備えてのことであった。
 その結果、発生装置は存在しないらしいということがわかった。基地によって違いがあるらしい。
 また、ジープ・ケネス(じーぷ・けねす)も寺院側の人間として基地に乗り込もうとしたがその身分を示すものや実績が見受けられなかったため、これもまた追い返された。普段なら鏖殺寺院に参加したいといえば喜んで受け入れてくれるのだが時期が時期だけにピリピリしているようだった。
 そして、時が過ぎる……