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リアクション
■第12章 第4のドア(2)
「きゃあっ…!!」
ごう、と追い風が吹き抜けたあと。
そんな小さな悲鳴が、背後で起きた。
「ティエン!!」
「真人っ!!」
「うそっ……レイナ!?」
後衛にいた3人が、ばたばたと倒れた。
その背後から現れたのは、六花を振り切ったセシリア。
仮面の奥の口は、三日月状に笑っている。
「てめェ、裏切ったのか!?」
3つの「LOST」の赤い点滅をすり抜けて悠々と歩を進めるセシリアに、カインが牙を剥き出し、走った。彼の繰り出すウォーハンマーをセシリアはブレイドガードで受け止め、六花を叩きつける。
「裏切ったのではありません。最初からあなたたちの味方ではなかっただけです」
彼女の返答を、耳にすることができたかどうか。
セシリアが剣を引き戻す前にカインは消え、「LOST」の赤い点滅だけが残った。
「モレク側だったっていうのか!」
「ふふっ。違います。わたしは……言うなれば、破壊神の巫女。
戦いに勝利者など不要なのですよ。この世では、死と破壊のみが救いなのです」
あなた方に、今それを授けてあげましょう。
「……ふざッけんなあッ!!」
逆上した陣がクロスファイアを放つ。バーストダッシュで距離を詰めようとする彼に、セシリアは迅雷斬をぶつけた。
「陣ーーーーっ!!」
ユピリアの悲鳴が空を走る。
「LOST」の赤い点滅。
呆然と、ユピリアは陣の消えた空間を見つめた。
「……許さない。許すものですかーっ!!」
「よくも真人を!!」
それぞれの得物を手に、2人は駆け出す。
絶対にあの女、殺してやる――セルファもユピリアも怒りに我を忘れ、すっかり失念していた。ウィザードはもう1人生き残っていたのだということを。
「うわあっ!! セルファねえちゃんっっ」
トーマの悲鳴が背後で起きる。
「トーマっ!?」
そちらを振り返ったセルファに見えたのは、彼を庇おうとした霜月ごと飲み込んだ、ファイアストームの猛き火炎だった。
「トーマ!!」
炎が通りすぎたあとには何もない。氷の欠片ひとつ。みんな、消えてしまった。
あるのは「LOST」の赤い点滅が2つ…。
「そんな…」
自分たちの勝利を確信したのは、ほんの数分前ではなかったか?
「セルファ、集中して! 来る!!」
ユピリアの鋭い声がした。
セシリアの放つ迅雷斬を紙一重で飛び越え、氷壁を蹴り、グレートソードを全力で突き込む。だがセシリアのブレイドガードは崩せなかった。
「くっ…!」
すぐさま距離をとり、セルファの横につく。
「同時に行くわよ」
「了解!」
2人は距離をとり、タイミングを合わせて2方向から同時攻撃を仕掛ける。これならブレイドガードはどちらか1人にしか使えない。
彼女たちの剣がセシリアをとらえたかに見えた一瞬――セシリアは鬼神力を発動させ、そのおそるべき膂力で竜巻のごとく六花を振り切った。
ウィザードとの戦いで消耗していなければ、あるいは…。
2人は胴を割られ、声もなく地に沈んだ。
「LOST」の赤い点滅が浮かび、2人の姿が消える。
これで、残るはセシリアのみ。
セシリアは部屋中を見渡した。いつの間にかあの鼓膜を裂かんばかりの演奏は消え、しん、と静まり返っている。
「――ああ。そこにいたんですね」
崩れた氷壁の上に立つウィザードの姿に、六花を床に突き立てると、仮面をはずしてにっこりほほ笑んだ。
どこか、夢見る子どものような、無邪気な笑顔だ。
テットの放つファイアストームに向かい、セシリア――伊吹 藤乃(いぶき・ふじの)はまるで、愛しい者を抱きとめるように両手を広げた。
この世では、死と破壊が救いなのです――――
藤乃が消失し、「LOST」の赤い点滅が消える。
空に浮かんだ王冠のような「WINNER」の文字は青い。
これにより、モレク側の勝利は確定した。
ひらひらと氷の上に舞い落ちたカードを拾い上げる手。
――――――4室目、LOSE。
「……あれ?」
6室目、玉座のモレクが4室目の状況を感じ取って、頬杖をはずした。
今感じ取ったのは本当にあったことか……いまひとつ信じがたい思いで、金の目をぱちぱちさせる。
だが、本当だ。決着はついた。
「なんだ、もう負けちゃったのか。人間たちも意外とだらしないなぁ。
――ってことは、あとは消化試合かぁ」
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