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勇者、募集します ~大樹の不思議な冒険?~

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勇者、募集します ~大樹の不思議な冒険?~

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第6章(4)
 
 
 それぞれの働きでイズルートには水が戻り、そして疫病が去った。
 そして篁 大樹達はこの戦いで犠牲となった和泉 絵梨奈(いずみ・えりな)を教会へと運び込んだのだが――
 
「この娘はまだ『命の輝き』が残っとるな。今なら十分生き返るで」
 教会の主、神官の長である大久保 泰輔(おおくぼ・たいすけ)が素敵な笑顔でそう言い放った。
「いや〜、やっぱ勇者っちゅ〜ても死んでしまう時もあるからなぁ。そんな時こそ僕の出番やで〜」
「……え、何この流れ? 何か前のページまでと世界違わない?」
「細かい事は気にせんでえぇやないか。それより復活って事でえぇんか?」
「あぁ、頼みたいけど……ちなみに、所持金の半分を取られたりとかは……?」
「ん? 何や、そんなボッタクリがいるんか?」
「エアーズでちょっと……」
「あぁ〜、あのクロイヌか。あいつは守銭奴やからな〜」
 泰輔の言葉からするに、どうやら椎名 真(しいな・まこと)椎葉 諒(しいば・りょう)の二人とは知り合いらしい。
「安心してえぇで! うちは良心的やからな。ご奉仕価格で蘇生するで」
「あ、やっぱ金は取るんだ。それでどのくらい?」
「そら色々や。松・竹・梅と豊富なコースをご用意してるで〜」
「何でコースがあるんだよ!?」
「当然やろ。安いほど灰になったりロストの危険があったりするもんなんや。それに高いほど豪奢になって行くんやで」
「豪奢?」
 泰輔が指差した方を見る。そちらにはこの村には不釣合いなほど立派なパイプオルガンが置かれていた。そこには専属のオルガニストであるフランツ・シューベルト(ふらんつ・しゅーべると)が座っている。
「僕の演奏は松なら松、竹なら竹用の復活の音楽があります。もちろん松ならこのパイプオルガンの全てを駆使した演奏をお見せしますよ」
「そこだけ派手にやられてもなぁ……ちなみに梅は?」
「…………」
 フランツが指一本で演奏を始める。一応それっぽい音楽ではあるのだが。
「やる気ねぇな!?」
「松を選べば良いのですよ。確実に復活できますしね」
「あぁもう、何かどうでもいいや……」
 結局松コースによって絵梨奈は派手な祝福と演奏とともに復活を果たした。その際彼女を乗っ取っていたジャック・メイルホッパー(じやっく・めいるほっぱー)の存在が危ぶまれたものの、復活の儀式による聖なる光を受け、鎧ごと滅んでいった為に事なきを得た。
 ――そして、復活費用は大樹の所持金から引かれるのであった。
 
 
「本当にありがとうございます、勇者様。お陰でこの村は再び立ち上がれそうです」
 その日、勇者達は蓮見 朱里(はすみ・しゅり)達の歓待を受ける事になった。滅びかけていた村だった為に大したもてなしは出来ないものの、せめて感謝の気持ちだけでもという朱里達の思いによっての宴だった。
「私からもお礼を言わせて下さい。まだ全てが元通りになった訳ではありませんが、そう遠くないうちにかつての姿を取り戻す事が出来ると思います」
 九条 ジェライザ・ローズ(くじょう・じぇらいざろーず)の言う通り何もかもが解決した訳では無い。疫病そのものは無くなったとは言え、永い間寝たきりだった事により別の病気を発症した人達がまだ残っているのである。そういった者達の治療が残ってはいるのだが、可能であればもう少し治療に携われる者がいれば楽になるというのは確かだった。
「だったら、エアーズのあいつらに頼めばいいんじゃねぇか?」
 そんな飛鳥 菊(あすか・きく)の言葉が出たのはローズの口から今後の状況を聞いた時だった。エアーズで埋葬屋と蘇生屋を行っていた真と諒の二人は教会を去る前、こんな事を言っていたからだ。
 
『もし君達がこれから訪れる場所で無念の死を迎えたり、生に苦しむ町や村があったらこのカササギの足に場所を書いた紙をくくり、飛ばしてくれないか? 時間はかかるかもしれないし、全てを弔いきる事なんて不可能かもしれないけど……俺達二人、出来る限りの事はさせてもらうから』
『まぁ、そうなった時の代金はツケといてやるよ……来世までな』
『あ、ちなみにクロイヌはプリンが報酬でも引き受けるよ』
 
「そういやそんな事言ってたな……最後のがよく分かんねぇけど」
「細かい事は気にすんな大樹。って訳だが、どうする?」
「はい、その方達が良いのであれば、是非お願いします」
 ローズが菊からカササギの入った鳥かごを受け取り、イズルートの場所を書いた。翌朝に大空へと飛ばせば、きっと彼らの下まで辿り着いてくれるだろう。
 
 宴もたけなわとなった頃、朱里が棚から一つのアイテムを取り出してきた。
「これは私達がクレアニスにいた頃にある方から頂いた物です。私達にも使い方の分からない物ですが、その方からは『いつかこれを渡したいと思った相手に渡せば、その相手の危機を救う事が出来るだろう』と言われています。満足なもてなしも出来ない私達ですので、よろしければどうか、こちらをお持ち下さい」
「本当は僕が同行出来ればいいんだろうけど……」
 アイン・ブラウ(あいん・ぶらう)が言うが、それは無理な話だ。彼は腕を怪我しているし、何より妻と護るべき村人がいるこの地を離れる事など出来ないからだ。
「だから、それを受け取ってくれ。どうか君達の行く末が良い物となるように」
 二人の厚意をありがたく受け取る勇者達。朱里達の開いてくれた宴はささやかながらも、勇者達の力となるのだった――