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葦原明倫館の食堂・秋の新めにゅ~開発企画☆

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葦原明倫館の食堂・秋の新めにゅ~開発企画☆

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第4章  少年女装大作戦


「あ、セルマ君達、こんにちはー。
 一緒に新メニューの相談しようよー?」

 ここは、陰陽科棟の中庭である。
 普段は忍の訓練に使われるこの場所も、学校が休みなのでもぬけの殻。
 日当たり良好な中庭に、鏡 氷雨(かがみ・ひさめ)達はレジャーシートを敷こうとしていた。

「あ、氷雨さん。
 ……ちょうどいいや。
 一度女将さんのお世話になってるし、考えてみようかな」

 そこへとおりかかったのが、セルマ・アリス(せるま・ありす)達。
 出会えば必ずいじられるのだが、そんなこと、忘れていた。。。

「天気もいいし、お菓子でも食べながらしようねー。
 飲み物もあるからねー」
「って準備万端だね……そのお菓子は?」
「お菓子なくてどうやって相談するの??」
「……ああ、なるほど。
 なんとなくなっと……いやなんでもないです。
 細かくは突っ込みません」

 セルマの疑問に、氷雨は首をかしげる。
 どうやらお菓子の存在は、ごく自然なものらしい。

「食堂の新メニューですか。
 そうですね、どういったものがいいのでしょう?」
(ああ、もしつくるなら……紫焔さんに気に入ってもらえるものがいいかな……って私ったらなに考えて!)

 パートナーがやる気になったのを見てとり、リンゼイ・アリス(りんぜい・ありす)も着席。

「あ、こんにちは」

 するとリンゼイの隣に、敦賀 紫焔(つるが・しえん)が座ってきた。
 お菓子の入ったかごを、すっと差し出す。

「……皆様……こんにちは……」

 いつものように、アイス・ドロップ(あいす・どろっぷ)は丁寧なお辞儀をした。
 シートの隅っこの、日陰の部分に陣取ってみる。
 結果、皆とは少し距離をとることに。

「ほうほう、面白そうだけど僕なにも思い浮かばないかもよ?」

 そんなアイスの横には、ヴィランビット・ロア(う゛ぃらんびっと・ろあ)の姿。
 いつのまにやら、お菓子とともに現れていた。

「まだ俺はこの募集を知ったばかりで、たいしてなにも思いついていないんですが……氷雨さんはなにか考えましたか?」
「うんっ!
 ボク新メニューって言うのは、こう……『新メニュー入りました!!!』って感じが必要だと思うんだ」
「なるほど」
「そのためにはやっぱりインパクト!
 んでインパクトって言えば見た目だと思ってねー」

 気まずそうなセルマにたいして、自信満々の氷雨。
 ちなみにインパクトのあたりを補足すると『パチンコの新台入りました風のノリ』らしい。

「ボク、試作をつくってきたんだー」
「試作?
 早いですね!?
 なにができたんでしょう。
 ちょっと楽しみ……」

 るんるん鼻歌を歌いながら、氷雨はカバンを探る。
 にっこりしてとりだしたのは、純銀の『明らかにやばそうな』箱。
 開けたその中身を、期待を持って覗いたのに。。。

「って……あれ?」
「……なんというかある意味予想できたはずなのにこの展開を回避したくて想像することを止めていたような気がします……」
「コレ……デローンだ……持ってくるの間違った!」
「やっぱりでろーんなんですか!?」
「……まぁいいや、デローンも食べ物だし」
「もう食べ物あつかい確定なんですね!?」
「多分コレも新作だし、問題ないよね。
 じゃあ、セルマ君が食べてー」
「え?
 なぜに俺が食べることに?」
「いやなの?」
「さすがにそれはちょっとね……だってでろーんですし」
「じゃあ、この新作のデローンを食べるか女装するか選ぶのです!!!」
「そこでなぜ女装が入るのですか!?」
「なんでって?
 そんなのセルマ君に似合うからだよ」
「ええー」
「さぁさ、遠慮せずに」
「うーん、どうしてもなら……こっち?」
「よしよし。
 それではこの衣装を託そう」
「じゃあ……ちょっと着替えてきます」
(ってなんか最近、どんどん女装に抵抗感がなくなってきてるような……)
「うん、行ってらっしゃ〜い」

 セルマの眼に飛びこんできたのは……えぇ、まぁ、あれですよ。
 氷雨も予想外といった反応をするのだが、さて。
 こうもっていくための『しこみ』だった可能性も。。。
 とにもかくにも、今回もアリスは女装をすることになったのだ。

「……ひーちゃん達……楽しそう……」
「あ、こんにちは。
 アイスさんだっけ?」

 2人のくだりを、笑顔で眺めていたアイス。
 落ち着いたでころですかさず、ヴィランビットが声をかけた。

「……?
 あ、こんにちは……えっと、ヴィランビット様は……皆さんとお話しないで……いいんですか……?」
「僕?
 まぁ、そもそも考えるって言ったのセルマだし、あまり関係ないかなって。
 アイスさんは?」
「……私……料理できないので……新メニュー……思いつきませんでした……だから……お役に立てないんです……」
「そっかぁ」
「……それに……ひーちゃんや……皆様を……眺めているのが……好きなんです……」
「へぇ〜なんで?」
「……あの……皆様……楽しそうで……見てるだけで……楽しいですし……」
「あの2人は確かに笑えるよね〜ん?
 アイスさん、この包帯はなに?」
「……え……これですか……?」

 ふと気になったヴィランビットは、触れない程度に手を近づける。
 瞬間キョトンとするも、顔の包帯に手をやったアイス。
 精一杯の声を、絞り出した。

「……ないので……」
「ない?
 ……そういうことなんだ」

 今度は、ヴィランビットがキョトンとする。
 だがすぐに、アイスの言いたいことを察して。
 アイスの後頭部に手をやると、すっと頭を引きよせ、包帯の上から口吻た。

「……ぁ……あの……」
「なんか痛いのかなって思って、なんとなく」
「……あ……えっと……心配……してくださって……ありがとうございます……」

 腕のなかで、アイスはヴィランビットの顔を見上げる。
 頬を朱に染めながら、お礼にと頭を撫でてみるのだった。

「ふわぁ……」

 氷雨を挟んで、シートの逆サイド。
 陽の光を浴びながら、紫焔が欠伸を漏らす。

「中庭ってぽかぽかしてて気持ちいいよねぇ……」
「はい、とてもいい気分です」
「秋は暑くもなく、寒くもなく、ちょうどいいし……」
「そうですね。
 私も秋は大好きです」
「今日はいい天気だし、日向ぼっこにちょうどいいよね……」
「本当に。
 洗濯物も、よく乾きそうです」
「話し合いもなんか違う方向にいっちゃったし、眠くなってきたし……」
「あら?
 紫焔さん、どうしたんですか?」
(なんだか嬉しそう……??)

 紫焔はすでに、心ここにあらず、といった感じだ。
 リンゼイの表情も、紫焔につられて自然と緩む、

「って、わけで……膝……貸してね」
「え、えええ!!?」
「おやすみ。
 リンちゃん」
「紫焔さん!
 膝で寝ないでくださいっ!
「くぅ……」
「ええ〜もうどうすればいいんですか!?」

 なんの前触れもなく、紫焔がリンゼイの膝を奪った!
 ポスッと頭を落とすと、にっこり。
 そのまますーっと、寝入ってしまった。

「うわ〜ん。
 このままじゃ動けないし、動けないし、動けないしっ!」
(はあ、紫焔さんいつまで寝るつもりなんだろう……)

 ちょこっとだけ声を荒げてみるも、すでに紫焔は夢のなか。
 リンゼイは、耳まで真っ赤になっている。

(……でもちょっとこのままでもいいかなとか……思っちゃった私はなんなのっ!)

 この葛藤のうちにある想いに、まだ名前はつけられないリンゼイ。
 けれど。
 紫焔にたいする気持ちが、またちょっと大きくなったかな。

「わぁ〜やっぱりセルマ君は女の子だよねー」
「新メニューの相談をみんなでするはずが……どうしてこうなった」
「それに最近……セルマ君、女装に抵抗しなくなってきたねー」
「って撮らないでください!!」

 ふわふわ純白の衣装はまるで、天使を思わせる。
 少々げんなりしつつも、戻ってきたセルマ。
 お構いなしで、氷雨は写メをとりまくったのだった。