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リアクション
第6章 料理対決昼食乃部
「それでは、お料理対決昼食部門を始めるとするかの。
せいぜいがんばるでありんす〜」
「美味しい新メニューを期待しておりますわ」
ハイナと房姫からの激励を受けて、参加者は料理にとりかかる。
それにしてもハイナ、言葉の使い方を間違っているような。。。
「えぇ〜あぁ〜昼食部門のリポーターを務めます。
よろしくお願いいたします」
こちらも歩き始めたのは、なんとゲイルである。
ハイナと房姫の命令とあらば、拒否権なんてないのだから。
「さて……ぇ?
まずは料理名と意気込みを訊いてこい……わかりました。
ということで、お聴かせいただきたいのですが」
「私達は『山の幸セット』をつくらせていただきます。
やるからには最優秀賞を目指したいです。
それと、自分が考えてつくったお料理を多くの人に食べてもらって、笑顔になって欲しいです」
「鈴鹿もはりきっておるようだし、ほかの参加者の料理ともども楽しみじゃのう。
あ、わらわは基本、料理はせぬがの。
秋の新めにゅー、楽しみにしておれ」
まずは、度会 鈴鹿(わたらい・すずか)と織部 イル(おりべ・いる)のコンビに訊ねてみた。
これはまた、なかなか希望をふくらませる受け答えである。
「では次ですが……なにやらすでに、まがまがしい気配を感じますな。
料理名と意気込みを教えていただけますかな」
「名前かぁ……『和風定食』とかでいいですか?
今回は、兄さんに私の料理の腕を見直させるチャンスだと考えて参加を決めました。
私を、女の子として認めさせたいのです」
「ふむ、改造人間咲耶よ、お前が調理場に立っているとは珍しいですな。
ククク、学食でバイオテロでも起こすのですか?」
「そんなことありませんわ!
企画がとおれば、兄さんも私の料理を殺人的だとかバイオテロだとか言えなくなりますからね!」
「とおれば、か……料理の下手さだけは誰にも負けない咲耶が?
明日は大雨でしょうね。
無理でしょうが、せいぜいがんばってください」
独り調理台の前に立ち、自信たっぷりに答える高天原 咲耶(たかまがはら・さくや)。
だが、入り口に現れたドクター・ハデス(どくたー・はです)の言葉によって、急に危うい雰囲気が漂う。
「さて、最後はこの3名ですな。
料理名と意気込みをどうぞ」
「料理名は『マホロパフェ』だよ。
こんな感じの!」
「目指すならトップを目指そうと思っている」
「楽しみにしていてくださいね」
「一応つくるのは私なんだけど、類さんと黒羽さんのおかげで出られるようになったんだ。
お料理も、3人で話し合って決めたんだよ」
「いえ、ほぼすべてグェンドリスが考えたのですけれどもね」
「そうそう、俺達はちょっと手伝っただけだから」
〜回想はじまり〜
「新メニューかぁ……」
(ちょっとやってみたい気もするけど、勝手に行動したら類さんに迷惑がかかるよね)
「新メニューか……その企画、乗ってやってもいい」
「おぉ……って、ええ!?
参加してもいいの?」
「別に、グェンが出たそうだったからとか、そんなんじゃないからな?
勘違いするなよ」
「ありがとう!
類さん!」
「今回はお前に全部任せるから、存分にやってこい。
目指すなら、トップを目指すぞ」
「そうだね!
やるからには一番を目指してみるね!」
「おい黒羽、お前も一緒に行くぞ」
「私に手伝えと?
ふふ、これはつけておきますわね?」
「えっと、じゃあお料理なんだけど。
マホロバって和っぽい洋のイメージがあるから、こういう感じのはどうかな?」
「よく描けたスケッチですわね」
「そうだなぁ……ここにこう……こんなのどうだ?」
「それまた美味しそうですね」
「うん、いいかも!
あともっと、ここもこうしちゃおうかなぁ……」
〜回想おわり〜
グェンドリス・リーメンバー(ぐぇんどりす・りーめんばー)のスケッチによると、つくろうとしているのはスイーツのようだ。
七篠 類(ななしの・たぐい)と尾長 黒羽(おなが・くろは)が、グェンドリスをがっちり支える。
「材料はこんな感じ〜」
「ふむ……そば、麺つゆ、ゼラチン、白玉粉、胡麻豆腐、天かす、サワークリーム、トマトに長ネギですか。
これでどのような甘味ができるのか、まったく想像がつきませんな」
「全部、類さんと黒羽さんが、近くのスーパーで購入してきてくれたんだよ」
「グェンドリスが調理に集中できるように、それくらいはしてやらないとな」
「のちほど美味しいパフェを食べさせていただけるのでしょうから、これくらいはね」
「2人ともありがとう!
それじゃあ『麺つゆゼリー』のつくり方を紹介するね。
まず、ゼラチンを水に入れてふやかすよ。
鍋に麺つゆとふやかしたゼラチンを入れて、弱火で溶かしていくんだ。
このとき、沸騰させないように注意してね。
ゼラチンが溶けたらパットに流し込んで、冷蔵庫へゴー!
1、2時間くらいして固まったらパットから取り出して、包丁でマス目状に切るんだよ。
切る前に1度、パットはぬるま湯につけてね。
そのほうが、形を崩す確立が低いんだって」
「へぇ、グェンドリスは物知りだな!」
「本当に……変な知識をたくさん持っていますわね」
「む〜、黒羽さんのイジワル〜!」
「冗談ですわ」
「そうだよね……そんなこと本気で思ってないよね、あははは。
続いて『トマトシャーベット』にいってみよう!
トマトは、お湯にくぐらせて皮と種を除くよ。
4等分くらいにしたら、砂糖、レモン汁と一緒に、ミキサーにかけるね。
それを氷用の型に流し入れて、冷凍庫へ。
この型を使うとブロック状のまま出せるから、便利だよ。
凍ったらできあがり!」
「こういう一工夫があると、つくる人達も楽になる。
よく考えついたな」
「えへへ〜それじゃあ最後に、白玉をつくるよ!
まず、白玉粉に少しづつ水を加えて、耳たぶくらいの柔らかさになるまでこねるんだ!
よいしょ、よいしょ……」
「ほっ、よっ……」
「少し、わたくしには、ハードな作業ですわ……」
「そしたら次に、生地を一口大の大きさに丸めてね。
ころころころ〜って!
じゃあこれを、沸騰させておいたお湯のなかに投入っ!
浮き上がってから1分くらい待って、冷水にとるよ」
「冷水はここでいいか?」
「うん、大丈夫!
ありがとう、類さん!」
「熱いですわ……」
「ちなみに、今回は食感を考えて、もちもちしている白玉粉を使ったんだ!」
「日本人はもちもちとした食感が好きだからな」
「えぇ、明倫館にいる生徒の多くも、これには満足でしょう」
「そしたら、このお湯でそばもゆでちゃうよ☆」
「グェンドリス、そばもあがったら冷やすんだよな?」
「はい」
「類さん、おそばは確か洗うのですわ。
ですわよね、グェンドリス」
「さすが黒羽さん、そのとおりです!」
「とっ、当然ですわ!
さ、いよいよ完成ですわね!」
「はい。
パフェの容器に、茹でたそば、麺つゆゼリー、白玉、胡麻豆腐、天かす、サワークリームの順に入れて。
トップはトマトシャーベットの赤で飾るよ。
そばと麺つゆゼリーにサワークリームを混ぜることで、あっさりなんだけど少しまろやかな味になるんだ。
天かす、胡麻豆腐、白玉、トマトシャーベット……どれをとっても食感の違いを楽しめると思うな。
特にシャーベットは、あまり固くないからね。
お好みで薬味も用意してるから、ご自由にどうぞ☆
あ、お店で出すときは、そば以外をつくりおきしておくと楽チンだと思うよ」
白いお皿に飾られた、透明の細長いグラス。
誰もが予想だにしなかっただろう、和風パフェの完成だ。
早速、試食に入ろう……ん?
「……ここで、美味しいご飯が、いっぱい食べられると、聞きました。
お願いします、試食係をやらせてください」
「おっ、お主は……鉄の胃袋を持つ大喰い早喰いのフードファイター・玲か!?
久方ぶりじゃのう。
ミナギも元気そうで、なによりでありんす」
「……遠路、はるばる、帰ってきました……懐かしいですね。
……お願い……切腹でもなんでもしますから……ミルクさんが」
「誰がミルクだ!
あたしはミナギだっってんの!
いくらミルク好きだからといってそれは許せないわ!
だって、あたしは『主人公』なんだから!」
「……切腹は冗談だとして……本当にご飯を食べさせてください……正直、お腹空いて死にそうです……」
「しかしのぅ……」
「よいではありませんか。
2名くらい増えたところで、混乱したりはしませんから」
「そう……かのう。
けど房姫が言うなら、それもよいじゃろうて。
玲、我が姫に感謝するのじゃぞ」
「……あっ……ありがとう、ございます。
『一飯の恩』ということで、なにかあれば、助力します。
約束、です!」
「ふふ〜ん♪
なんだったら、あたしも試食係、引き受けてやってもいいわ?
玲の審査はねぇ……食べられればオッケーな人だから信用できないもの。
あたしの審査は厳しいわよ!」
「しかたない、させてやってもよいでありんす」
「あら、ありがとうね〜」
ハイナの前に土下座をしたのは、元葦原明倫館生の獅子神 玲(ししがみ・あきら)だった。
なにやらすごい肩書きがついているが、在学中はハイナとフードファイトしていたとか。。。
食以外には無頓着の無関心で、パートナーの名前も平気で間違えるぐらい。
質より量を重要視し、味は濃いめが好き。
ザナドゥの食材以外であれば、どんなゲテモノでも平然と食べられるのだ。
山本 ミナギ(やまもと・みなぎ)ともども、房姫の一声で、特別審査員を務めることとなったのである。
「ということで、まずはパフェをいただくでありんす」
「……いた、だきま、す……」
「いっただきま〜っす!」
「……うむ、悪くないのう」
「まぁ、意外と合いますのね」
自前の漆塗りの箸を出して、玲はシャーベットを一口。
玲にミナギも含めて、審査員達の評価は悪くないようだ。
ねらっていた日本人だけでなく、アメリカ人の味覚にも合ったらしい。
「私もできました。
こっちがコロッケで、これが炊き込みご飯。
それと味噌汁のセットです」
「く……これの試食などをさせられたら、たまったものではない。
こっそり撤退して……」
「ちょっと待ってください。
一緒に試食してみてくださいね、兄さん♪」
「ま、まて!
きちんと味見はしてあるのだろうな?!
せ、せめて食えるかどうかの確認はっ……!」
「そんなもの、必要ありません。
それに、なにかあっても【ヒール】と【ナーシング】があるから安心です」
「いや無理だろうちょっと待ちなさいって!」
「ところで、コロッケ定食って和食なんでしょうか?」
逃げようとしたハデスだが、咲耶に確保されてしまう。
主張は聞き入れられず、笑顔で差し出された定食を試食させられるはめに。。。
「うゎっ、こんなの食えるかッ!」
「なんてことをっ……『食』を冒涜するとは、許せん!
斬り捨て御免っ!」
「だっ、だってっ!
【女王の加護】が発動したのですよっ!
パートナーさんだって無理と仰っているではありませんかっ……きゃ〜っ!」
身の危険を感じたミナギも、涙目でその場を去ろうとした。
だが、ものすごい剣幕で玲に怒られ、やっぱり試食をさせられるはめに。。。
「ぐはっ……」
「いたいっ!」
悲鳴やらうめき声やらが、家庭科室に響き渡る。
試食の結果、各料理はハデスによって次のように命名された。
タバスコと唐辛子の赤色が毒々しい、『イチコロコロッケ』。
口のなかでパチパチ弾ける、新食感な『火薬ごはん』。
そして、さまざまな素材がカオスなことになっている『神のみぞ汁』と。
味については……とても、言葉では表現できないものであった。
「さ……最後は、まともで、あろうのう……?」
「はい、お任せください!
山菜おこわおにぎりアーンドきのこのあんかけうどんです♪」
「鈴鹿、いろいろと説明をしてさしあげるのだよ」
「あ、そうですね!
まずは材料からです。
おにぎりが、ぜんまいやわらびなどの山菜、もち米、昆布といりこでとっただし、たくあん、紅葉の葉です。
うどんは、旬のきのこを数種類、片栗粉、猪肉、長ネギ、小麦粉と、あと鰹節や小魚でとっただし、調味料ですね。
材料の入手先ですが、山菜やきのこ、猪、紅葉の葉などは、イル様に山で採ってきていただきました」
「この『パラミタ山菜』には美肌に効果のある成分。
こちらの『パラミタきのこ』には各種びたみんがバランスよく含まれておるので、美容の方も期待できるぞえ。
ちなみに猪は、弓矢で狩ってきたのじゃよ」
「そのほかは、葦原城下のお店で買いました。
本日は涼しいので、ぬるめの玄米茶をご一緒にお出ししますね」
「いい香り、いただきますね」
「よかった……安心して食べられるお料理がでてまいりましたわね」
「こりゃ美味そうだ!」
鈴鹿は『料理』、イルは『薬学』。
それぞれの特技を活かした、素晴らしい役割分担がなされた結果が、この料理だ。
山菜を混ぜ込んだおこわおにぎりは、2個で1セット。
皿の端には、たくあんを乗せた紅葉の葉が添えられている。
一方のうどんは、きのこを具にしたあんのうえに、焼き豚風にした猪肉、刻みネギが乗せられていた。
ハイナと房姫に続き、ミナギと玲も、まずはおにぎりを一口。
皆の表情が、ほわ〜っと緩んだ。
「なるほど。
この香りはおにぎりに塗られたお醤油だったのですわね」
「モチモチしたおこわと山菜の食感が楽しいのう」
「このうどんも、あんと肉はしっかりした味つけなのに、おだしは魚であっさりなのですね」
「へぇ〜そうなのか。
ミナギ、よく分かるな」
「双方とも、アク抜きや臭み抜きなどの下処理を丁寧におこなっています。
どなたでも食べやすい味つけを心がけました。
決して豪華ではありませんが、食べる方の笑顔を思い浮かべて、愛情を込めてつくりました。
皆様ががこれを食べて、お腹も心もいっぱいになってくれたらとても嬉しいです」
「より美味しく、楽しく食していただけるとよいの」
これにて、試食タイムは終了。
参加者も含めて、皆でエントリー作品に舌鼓を打つのであった。
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