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とりかえばや男の娘 三回

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とりかえばや男の娘 三回
とりかえばや男の娘 三回 とりかえばや男の娘 三回

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 聖剣の完成 

 いよいよ、双宮の剣は聖剣として蘇った。各々の持つ錆びた聖剣が光を放ち美しく蘇る。それで、聖剣保持者は一斉にヤーヴェに戦いを挑んでいった。

 ズシャア! 

 ザク!

 ズガ!

 聖剣を身に受けて苦しむヤーヴェ。しかし、それでも倒すにはいたらない。

「なぜ」

 竜胆が青ざめる。

「無駄な事だ」

 全身からどす黒い炎をあふれさせながらヤーヴェが笑う。

「なるほど、5つまでの封印を解いた事はほめてやる。しかし、その剣の力を真に解放するには全ての封印を解かねばならぬ。そこまでやらねばわしは倒されぬと言っただろう」

「だったら、全部の封印解いちゃえばいいだけじゃないの」
 ラブ・リトル(らぶ・りとる)が言う。
「聖剣を抜いてヤーヴェを倒せば、皆で笑ってハッピーエンドじゃないの。シンプルよね♪ よーし! あたしが聖剣を抜いちゃうわよ〜♪」
 それから、ラブは竜胆の裾をつかんで言った。
「ねえ、竜胆、あたし小さいからあんたの肩に乗せて、石像のところまで連れてって」
「いいですよ」
 竜胆は頷くと、ラブを肩にのせて石像に向かって走り出した。

「させるか」

 ヤーヴェは竜胆達を石像に近づかせまいと稲妻を放った。

「危ない!」

 コア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)が対電フィールドを敷設。ラブと竜胆の電気に対する耐性が上がる。

「邪魔をするな!」

 ヤーヴェは口から毒を吐いた。コアは【冥府の瘴気】で皆の盾となり耐える。
 しかし、一応【エンデュア】をつけて火への耐性をつけているとはいえ、その炎の熱さに、コアの体の熱も高まって来る。その苦痛に耐えながらコアは叫んだ。

「ラブ……皆、聖剣を頼んだぞ…!」

 ラブと竜胆は、ヤーヴェ攻撃をくぐり抜けて無事に石像までたどり着いた。そして、宝玉を捧げ、石像の問いに答える。

「一番大事な事は……あたしにとって生きる上で一番大切なのは歌よ! 歌を唄って全部を足元にひれ伏させるの♪
 一番嬉しかった事は……目が覚めてから一番嬉しかったのは…世界に歌があった事! あと、皆に会えた事かな?
 一番哀しかった事は……一番悲しかった事…? そんなの決まってるじゃない。ハーティオンのバカとかが、自分を犠牲にしてでも何かをやろうとする事!
 そんな事する奴はバカよ! 残された方の気持ちを何も考えてない!
 あのバカだって、結局こないだ牢屋から皆に助けてもらえなきゃ拷問でどうなってたかわかりゃしないんだから!

 そりゃね皆でハッピーエンドなんて話が簡単にある訳無いわよ!
 でもね、皆でハッピーエンド目指してこそ、最後に唄って気持ちよくなれるってもんじゃないの!」

 そして、ラブは竜胆を見ると言った。

「いい、竜胆!誰かを犠牲にして勝ってもね、そんなのちっとも嬉しくないんだからね! あのバカみたいなのは絶対見習ったらダメ! 藤麻もハーティオンのバカも、皆助けてこそ一人前の男よ!」

 すると、石像が答えた。

 ……汝の言葉、胸に響いた。聖剣の欠片を受け取るがいい。

 こうして、ラブは6本目の剣を手に入れた。



「私たちも行かなければ」
 アルトリア・セイバー(あるとりあ・せいばー)は先ほど竜胆から受け取った宝玉を持って走り出した。
「封印を解くんですか?」
 ルーシェリア・クレセント(るーしぇりあ・くれせんと)が尋ねる。
「もちろんです。竜胆殿や藤麻殿達を救うためにも一刻も早く全ての封印を解いてしまわなければ」

 石像に向かっていく二人をヤーヴェがめざとく見つけた。そして、大きな手を広げ、二人の行く手を遮る。
「先に進めないですぅ」
 ルーシェリアが叫ぶ。
「まったく、いまいましい邪鬼ですね。あれだけの人間に攻撃されても、私たちの妨害ができるとは……」
「仕方ないですぅ。ここは私にまかせて、アルトリアちゃん一人で封印を解きに行くですぅ」
 そう言うと、ルーシェリアはエンデュアで炎への耐性をたかめ、女王のソードブレイカーを手にランスバレストで目の前の手のひらを攻撃した。短剣が刺さりそこから、炎が吹き出す。その激痛に、ヤーヴェは思わず手を上げた。その隙を狙い、アルトリアは石像に向かって駆けていく。
「頼みます。ルーシェリア殿達の頑張りに応えるためにも、必ず封印を解いてみせます!」
「行かせるか!」
 ヤーヴェがアルトリアを捕まえようと再び腕を振り上げる。しかし、それより先に、ルーシェリアがレティ・インジェクターにまたがって、ヤーヴェの目の前に現れる。
「な……」

 驚くヤーヴェの顔面に、ルーシェリアはチェインスマイトを繰り出した。

「くそ! 邪魔な小バエめ!」

 ヤーヴェはルーシェリアを叩き潰そうとする。その攻撃を巧みにかわしてルーシェリアはチェインマストを繰り出し続けた。


 その間に、アルトリアは石像の元へとたどり着く。そして、宝玉を石像に捧げ、3つの質問に答える。


「一番大切な事。パートナーのルーシェリア殿を守り、共に生きていくこと。
 嬉しかった事。ルーシェリア殿というパートナーを見つけたこと。
 哀しかった事。生まれ変わった後、(英霊になる前の)生前の仲間達に会うことができないとわかった時。……ただ何人かは自分と同じように英霊になったらしく、会える時が楽しみでもあります」

 すると、石像が言った。
 ……汝の言葉、胸に響いた。聖剣の欠片を受け取るがいい。

 こうして、アルトリアは7本目の剣を手に入れた。

 セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)は対物ライフルをヤーヴェに向けて撃ちまくった。パートナーのセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)に封印を解かせるための時間稼ぎである。
 彼女がこの邪鬼討伐へと加わったのは、竜胆達とここまで関わったのだから最後まで付き合うというのもあるが、それ以上に奈落人に憑依されて最愛の恋人を自らの手で殺しかけた……その事への恨みが強い。
「あたしたちを引き裂こうとしただけでなく、皆の誰かを想う心を無残に蹂躙したことが許せないのよ!」
 セレンはそういいながらライフルを撃ちまくった。

 もし、彼女が三つの質問に答えるなら、こう答えただろう。

「愛しいセレアナといつまでも変わらずに共に在り続けたい。いつまでもずっとセレアナのことを愛していたい。
 互いのことをともに必要としていること、それが心で判りあえた瞬間。
 そんな彼女のことを、何度か傷つけてしまったこと。特に、この前の件は例え憑依されたこととはいえ、否、だからこそ、自己嫌悪が募るし立つ瀬がない」

 セレンはさらに[フォースフィールド]を展開すると[女王の加護]で防御力を高め、さらにレビテートで空中浮遊して機動性を高め、[ミラージュ]で自分の幻影を周囲に出しヤーヴェの攻撃への攻撃に抵抗力を得た。
 ヤーヴェはセレンの幻影に惑わされ戸惑っている。不完全とはいえ聖剣を身に受けたダメージも心身に来ているようだ。ヤーヴェを攪乱しながら、セレンは急所を狙って対物ライフルを撃ち続けた。

 
 その間にセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)は石像に向かって走っていた。
 セレアナは、前回のことがあってからというもの、何処か臆病な気持ちになってしまっている自分に嫌悪感を抱いている。今度は自分が憑依されてセレンを襲うんじゃないか、と……が、ヤーヴェを倒さない限りは、自分が受けた心の傷を乗り越えられない事も判っているので、意を決して戦いに臨んだのだ。

 彼女は石像に宝玉を捧げると、3つの質問に答えた。

「大切な事。愛する恋人と例え死んだとしても決して離れずに共にありたい。
 嬉しかった事。互いの想いが通じあえたとき、それが一番幸せな瞬間。
 悲しかった事。それらが失われそうになった時の、自分の無力感が辛かった」

 随分身勝手と思うが、偽らざる想いでもある。

 しかし、石像は答えた。
 ……汝の言葉、胸に響いた。聖剣の欠片を受け取るがいい。

 こうして、セレアナは8本目の剣を手に入れた。

 そして、残されるは最後の一つ。