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とりかえばや男の娘 三回

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とりかえばや男の娘 三回
とりかえばや男の娘 三回 とりかえばや男の娘 三回

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 一方、竜胆達はひたすら洞窟を駆けていった。

 チェーンソーを持った奈落人達が竜胆に襲いかかって来た。
「ああ!」
 藤麻をかばいながら逃げ回る竜胆。そののど元にチェーンソーの刃が迫る。
「てめえ、いい加減にしろ!」
 猪川 勇平(いがわ・ゆうへい)が飛び込んで来た。言葉遣いの悪さはまとっている魔鎧ウルカ・ライネル(うるか・らいねる)のものだが、ともかく勇平は光条兵器を構え竜胆に襲いかかる奈落人に向かって突っ込んでいく。
 
「ここは、俺たちにまかせて、先に行って下さい!」
 勇平の言葉で叫ぶ。

「お願いします!」
 竜胆は藤麻の手を引き先を急いでいった。

「しかし……」
 勇平はつぶやいた。
「意気込んだのはいいけど、かなりの数だな……。まあ、俺だけじゃないし、何とかなるだろう……」
 勇平は、光条兵器を構えてつぶやく。
 奈落人達は次々と勇平に襲いかかって来た。勇平は、アルティマ・トゥーレで奈落人達を攻撃。武器から冷気を放たれ奈落人達を攻撃。奈落人達が次々に倒れて行く。

「やるじゃねえか」
 ウルカの声がする。
「まあ、こんなもんだぜ」
 勇平が得意げに言った時。

「ああ!」
 竜胆の悲鳴が聞こえた。振り向くと、ナイフを持った男が竜胆に斬りつけようとしているのが見える。勇平は、奈落の鉄鎖を唱えた。男の付近の重力が重くなり男の体が地面に吸い寄せられる。その隙を狙って勇平は男に接近。そして、うずくまったその背中に光条兵器を浴びせる。
 ところが、男はいきなり立ち上がり、勇平にナイフを突き立てる。

「つ……!」

 油断した。腕を斬られたようだ。

「勇平、大丈夫ですか?」
 ウイシア・レイニア(ういしあ・れいにあ)が駆け寄って来てヒールを唱えた。勇平の腕の傷がみるみる塞がっていく。

「大丈夫だ。さあ、早く竜胆さん逃げて下さい」

 勇平は、そう言うと再び剣を構え直す。そして、ナイフ男に斬り掛かっていった。
「さあ、早く行って下さい」
 ウイシアも竜胆に向かって叫ぶ。
「絶対、ここを守り抜きますわ!」

 後は勇平達にまかせて、竜胆は藤麻の手を引き、先を急いでいった。

 それを見届けると勇平はナイフ男に斬り掛かっていく。ナイフ男の攻撃をかわし、懐に入り、その腹に光条兵器を突き立てた。



 こうして、竜胆達はどんどん洞窟の奥へ、奥へと進んでいった。その間も奈落人達の攻撃がやむ事はない。
「しつこい奴らだ。一体、どれだけいるのであろう?」
 草薙 武尊(くさなぎ・たける)が舌打ちする。
「分かりません。それより、みんな無事なのでしょうか?」
 竜胆が答える。
 襲ってくる奈落人があまりにも多すぎて、夢中になって逃げるうちに、皆とはぐれてしまったのだ。
「ふふ……奴らも双宮の剣を手に入れるために必死だからな」
 藤麻が言った。そして、なぜかクスクスと笑っている。そして、
「そうだ……奴らは妄執の虜だからな。元の姿で地上に帰りたいという……愚かな奴らよ」
 と言うと、さらにクスクスと笑い続けた。
「兄上?」
 竜胆は、いぶかしげに藤麻の顔を見た。
「どうしたのです? いつもの兄上らしからぬ物の言いようをして……」
 射抜くような竜胆の瞳に、藤麻ははっと我を取り戻したs。そして、同時に苦しみはじめた。
「やめろ……私に話しかけるな」
「兄上?」
「いいから、触るな」
「いかがなされたのです? 兄上」
「いいから、もう、放っておいてくれ」
 藤麻がそう叫んだ時。
「ヤーヴェ様。ここにおられたのですね」

 青白い顔の男が近づいて来て言った。全身黒ずくめの痩せた男だ。

「なんだ? おまえは?」
 藤麻は男を見た。
「私はヤーヴェじゃない」
「へっへっ。隠さなくてもいいのです。私には見えるのですよ。あなたの背中の業火が」
「なに?」
 藤麻が青ざめた顔で後ろを向く。しかし、そこには藤麻の影より他何もなかった。

 青白い顔の男がいう。

「それよりヤーヴェ様。私はここでずっとあなたを待っていたのですよ。あなたに蘇らせてもらうために」
「なんだと?」
「見て下さい。ホラ、これが双宮の剣です」
 男はそういうと一振りの剣を差し出した。錆び付いて刃こぼれのある古い剣だ。
「それが、双宮の剣だって?」
 藤麻はうつろな目で竜胆を見た。
「何だ、既に敵が手に入れてしまったか。ならば、もう、私が助かる術もないという事か」
「そんなはずございません」
 竜胆が力強く突っぱねる。
「あのようなものが本物の剣であるはずがございません。騙されないで下さい兄上!」
「なにを言うのです。これは、正真正銘の本物ですよ。さあ、ヤーヴェ様。一刻も早く私を蘇らせて下さい」
「騙されちゃいけない」
 どこからか声がした。
「そいつは、嘘をついている。その剣は偽物だ。そいつは、依頼人の私を殺してまで、地上に復活しようとしてるんだ」
 声は、男の足元から聞こえる。
「うるさい! 黙れ」
 男は、足元に倒れている女の心臓をさした。
「ぎゃあ!」
 女が悲鳴を上げる。男は血塗るられた剣を持って藤麻に迫って来た。
「さあ、私を蘇らせて下さい。早く、早く」
「や……やめろ」
 藤麻は息も絶え絶えに抵抗する。
 すると、男はますます藤麻の近くまで迫って来て言った。
「ヤーヴェ様、どうしたのです? ああ、分かりました。あなたのかりそめの器の主であるその者が邪魔をして出て来れないのですね? ならば私がその者の心臓を突いて差し上げましょう」
 そういうと、男は血塗るられた剣を藤麻に向かって突き立てようとした。
「兄上!」
 竜胆が叫んだその時

 バン、バーン!

 武尊の手の中で碧血のカーマインが火を噴いた。弾が男の肩に当たり、血がほとばしる。

「何をする!」

 男は剣を捨てて振り返ると、自らも拳銃を取り出して武尊に向かって撃った。武尊はバーストダッシュで弾を避け、竜胆に向かって叫んだ。
「竜胆殿、此処は我に任せて先に行け」
 すると、
「逃がすか!」
 すかさず、男が銃口を竜胆達に向ける。その足元に武尊は一発打ち込んだ。男が怒り狂った顔を向ける。
「どこを見ている? おまえの相手は我だ」
「ちくしょう」
 男は、武尊に向かって銃を撃った。武尊は身をかわしながら、竜胆に行けと合図を送った。

 竜胆はうなずくと、藤麻の体をかかえて走り出した。
 その直後、武尊は再び碧血のカーマインをぶっ放す。男は物陰に身を隠し、そこから武尊めがけて乱射した。バーストダッシュで低空を飛ぶように移動しながら銃弾を避ける武尊。

「ちくしょう。なんて、すばしっこい奴だ?」

 男は舌打ちしながら武尊を狙い続けた。しかし、弾を入れ替えている間に、ついに男は武尊の姿を見失ってしまった。

 それきり静寂がひろがる。

「どこに消えた?」

 男は、隠れていた物陰からゆっくりと姿を現し、武尊の姿を探した。しかし、誰の姿も見えない。あるのは先ほど自分が刺し殺した女の姿だけだ。

「うん?」

 その時、男は奇妙なものに気がついた。横たわる女の足元に何かが落ちているのだ。光る珠のように見える。

「……なんだ? あれは?」

 男は、好奇心にかられて近づいて行った。そして、元依頼人の側に立ち、足元の珠を拾おうとすると、

 パーン!

 背後から音がして、男の手から血がほとばしり、拳銃が地に落ちた。

「!?」

 振り返った男に武尊は先制攻撃で近づき、そして、足元の剣を拾うと、男のみぞおちに一発入れた。

「ぐは!」

 男は、悲鳴を上げ

「俺……としたことが……油断…し…」

 白目を剥いて倒れる。

「……安心しろ。とどめはさしていない」

 武尊は倒れてしまった男に向かって言う。

「そのうち、諒殿達が回収しに来るだろう」

 そして、珠姫の宝玉を拾うと竜胆達の後を追って歩きはじめた。



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