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リアクション
2 宝玉を求めて
「その姿、とても素敵ですね」
巫女姿の大岡 永谷(おおおか・とと)に向かって竜胆が言った。
「そうかな?」
永谷が照れたように笑う。
「ええ。とても似合ってます」
「俺もたまには、女の子らしくお淑やかになった方がいいのかなと思って。それに、和風にした方が悪目立ちにくいと言うのもあるけど……」
国軍の軍人としてではなく、竜胆を個人的に守りたいと思うからこその行動なんだ。と、永谷は心の中で言葉を続けた。
今、竜胆達は日下部屋敷を出て珠姫の祠に向かっているところだ。危険を伴う旅のはずなのだが、林の中の小道はとても美しく危険な旅である事をついつい忘れそうになる。しかし……
「油断するな」
と十兵衛が言った。
「六角配下の忍びの残党を見かけたと、ハヤテから報告が入っている」
「大丈夫です。あれから、私も剣の修行を続けて来たのですから、六角の残党など怖れるにたりません」
言い返す竜胆に十兵衛が「まだまだ」と答えた。
「もう!」
竜胆は膨れた。
「十兵衛は相変わらず厳しすぎる」
すると永谷が笑って答えた。
「十兵衛さんの言う事も一理あるよ。相手は忍者なんだぜ」
「でも、自分の身ぐらい、自分で守れるようにならなければ」
「確かに、竜胆は、世継ぎとして強くならなければいけないのも確かだけど、その前に斃れてしまっては、元も子もないぜ」
「それは、そうですけど……」
「そんなに、守られることを負担に思うなよ。俺としては最後のとどめを竜胆にやってもらうつもりだから、そこに連れていくことが重要なんだ。それまでは、おとなしく守られてくれ」
「……わかりました」
竜胆が答えると
「ハイ」
永谷がお守りを差し出した。
「これは?」
竜胆が首をかしげる。
「禁猟区がかけてあるから危険になったらすぐに分かる」
「……分かりました。大切にします」
と、竜胆はお守りを受け取った。
「なあ、レキ。道中で美味しい団子屋はないかのお」
ミア・マハ(みあ・まは)がのんきにパートナーのレキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)に話しかけた。
「こんな林の中では無理かのう?」
別に油断しているわけでない。ヘタに緊張させては最後まで気力が持たぬだろうと考え、警戒していることをおくびにも出さないようにしているだけだ。そのために、なるべく楽しい会話に話を咲かせようとつとめている。
一方のレキは、殺気看破で周囲を警戒しながら進んでいた。しかし、ミアと同じくそういう素振りは全く見せない様にしている。
「そうだね。ボクはお団子もいいけど、和風スイーツもいいな。きなこの和プリンとか」
「おお。いいのう。和風スイーツなら、わらわは、こしあんのモンブランが食べたいのう」
「抹茶パフェもいいな」
「何やら腹が減って来た……」
すっかり二人で盛り上がっている。
その姿を見て、木の上のつぶやく声がした。
「スキだらけ……。私達が見張っている事に気付いていないんだわ。かわいそうに」
「まったく、馬鹿な奴らだ。とてもお頭を倒した敵とは思えんのう」
「さっさと、片付けるか」
「ああ、戦いなんて嫌。こんなことになったのも、全部私のせいよ……」
言うまでもない。六角配下の忍びの残党だ。
「行くぞ!」
忍び達は目と目で合図すると、隠形の術を唱えて一行に襲いかかって行った。
「来た!」
レキはいち早くその気配に気付いた。そして、近づいて来た何者かに向かって『財天去私』を打ち込む。一同には、その姿がいきなり壁を殴っているように見えた。
「何をしているのじゃ? レキ」
首をかしげたミアに、姿を隠した忍びが刃を構えて襲いかかってくる。あわや、切り裂かれんというその時……
ゴォ!
炎のうねりを上げて『炎の聖霊』が現れ、ミアに襲いかからんとする忍びに向かって炎を浴びせかける。
「そうか。来たんじゃな」
ミアはつぶやくと、神の目を展開! 隠形の術が解かれて忍び達の姿があらわになる。
「レキ! 一緒に魔法攻撃行くよ」
ミアは叫ぶとサンダーブラストを唱えた。忍び達は雷に感電し痺れて動けなくなる。ミアが魔法の威力を抑えたために、この程度ですんだようだ。
「よし!」
レキはうなずき、『ブリザード』を唱えた。氷の嵐が敵に襲いかかっていく。その寒さに忍び達は震えて動けなくなった。
「手加減して凍りつかぬ様にしたはずだが、霜焼けくらいにはなるかもしれんな。許せ」
レキは震えている忍び達に向かって言った。
その、ほぼ同じ頃。竜胆の持っているお守りが光った。
「永谷さん! これ……」
竜胆が叫ぶ。
「敵だ……!」
永谷がヴァーチャースピアを構えて叫ぶ。
ヒュンヒュンヒュン!
何かが音を立てて竜胆を狙ってくる。
「危ない!」
永谷は叫ぶと竜胆の前に立ちはだかりファランクスを展開。ヴァーチャーシールドに手裏剣があたり落ちて行く。
「こしゃくな!」
木の上から忍びが襲いかかってくる! 永谷はとっさにヴァーチャースピアを構えて降りてくる敵の足をはらった。忍びはバランスを崩してその場に転倒。すかさず永谷が柄をみぞおちに打ち込む。
「ぐぅ……」
忍びは白目を向いて気絶した。
「これで、全員倒したね!」
レキがロープを持って駆け寄ってきた。そして、動けなくなった忍び達をぐるぐるに巻くと、
「警察……じゃなくて『おかっぴき』を呼んでくるよ!」
と、その場を駆け出した。
「ああ……みんな捕まってしまった」
木の上に一人残されたくのいちがつぶやく。
「もう、忍びなんて……くのいちなんて……いや! そうだわ! 今日で忍びなんてやめよう! そうよ! 今思い出したわ! 私、本当は魔法少女になりたかったの!」
そう言うと、くのいちは1人、イルミンスールを目指して駆けて行った。
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