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とりかえばや男の娘 三回

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とりかえばや男の娘 三回
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6 邪鬼の最期 

 紫月 唯斗(しづき・ゆいと)が最後の封印解除のために駆けていく。
 途中、襲い来る奈落人達を次々になぎ倒して駆けていく。
 陰陽拳士の彼としては悪鬼を放っておく事は出来なかった。
『悪鬼封滅は俺の仕事だ。奴の因縁はこれ以降俺が背負ってやる。日下部のヤーヴェとの因縁、根元から断ち切る為にもヤーヴェ自身をなんとかしないとな。必ず、双宮の剣を聖剣として手に入れよう』
 と、彼は思っていた。
 石像の前にたどり着くと、唯斗は宝玉を捧げ、3つの質問に答えた。

「生きる上で一番大切な事は、皆が楽しく過ごせる事。
 一番嬉しかった事は、今この時に生まれて生きている事。
 生まれてから一番悲しかった事は、自分の力不足で誰かを泣かせてしまった事」

 すると、石像が答えた。

 ……汝の言葉、胸に響いた。聖剣の欠片を受け取るがいい。そして、今聖剣は完全な形に成れり。

 唯斗の手の中に巨大な光が現れる。それは目映く光りながら、一振りの剣の形になった。

 その剣を掲げて唯斗は叫ぶ。

「我が名は紫月唯斗、陰陽拳士として悪鬼を封滅する者。ヤーヴェ、お前に止めを刺す者の名だ
 しっかり覚えて逝くと良い。神速を持って両断する
 日下部の者達よ、お前達のヤーヴェとの因縁。今この時より俺が全て背負う

 だから、好きに生きてくれよ、何にも囚われる事無くさ。それが希望さ」

 唯斗の言葉が終わると同時に、全ての聖剣保持者の手の中で剣が目映い光を放ちはじめた。

「美しい……これが、本当の聖剣の輝きか……?」
 竜胆が感歎の声を漏らす。

 すると、獅子神 ささらが言った。
「さあ、竜胆さん。一緒に聖剣をとって、藤麻さんに憑いてる鬼を倒しましょうか」
「え?」
 驚く竜胆の手を携えてささらが言う。
「……竜胆さん、大丈夫。あなたも藤麻さんもヤーヴェなんかに負けません。……もう立派な漢でしょ?」
「はい!」
 竜胆は頷くと、ささらとともに聖剣を持ちヤーヴェの腹に剣を突き立てた。

 それを見て、芦原郁乃も走り出す。
「他者を否定して、自分を利することしか考えないヤーヴェ。本来であれば彼であってもわかりあう機会を窺うべきなのだろうけれど……日下部家の兄弟の穏やかな日々を過ごすためには……二人で穏やかに過ごすためには時間が足りなんだヤーヴェの無念はわたしが受け取るから、申し訳ないけれど倒させてもらうよ」
 そして、郁乃はヤーヴェの背中に剣を突き立てた。

 ラブ・リトルは自分よりも大きな聖剣を構えながら叫んだ。
「あたしに力を貸しなさいよ聖剣! ヤーヴェを倒して藤麻もハーティオンも助けて! 最後に皆で唄って笑って! この冒険を忘れられない思い出にしてやるんだから!」
 そして、ヤーヴェの目に聖剣を突き立てた。

 そして、リアトリス・ブルーウォーターが、セルマ・アリスが、木曾 義仲が、アルトリア・セイバー、セレアナ・ミアキスが紫月唯斗が、聖剣を構えてヤーヴェに飛びかかっていく。

「う……うわああああああ……」

 ヤーヴェは体中に聖剣を突き立てられ、苦しみもがく。体中に聖なる光が稲妻のように走りヤーヴェの体がどんどん小さくなっていく。

「おのれ、珠姫、珠姫……なぜ、わしの気持ちに答えん?」

 ヤーヴェは断末魔の叫びをあげると、最後は人間ほどの大きさになってその場に崩れ落ちた。そこにあったのは、惨めな男の亡がらだった。

「これが、邪鬼の正体か」
 藤麻がその亡がらを見下ろしてため息をついた。
「ヤーヴェは珠姫が好きだったのかもしれませんね」
 竜胆の言葉に、
「恋の恨みで、このような化け物に成り果てたか。しかし、今は静かに眠るがいい……」
 藤麻はそう答えると、静かに手を合わせた。

 それから、一同は聖剣を手に石室を去った。
 そして、その後を追って行くひとつの姿があった。奈落人、殺戮本能 エスだ。彼は、エヴァルト・マルトリッツの後を追いかけてくようだ……。