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オオカミさんにご用心

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オオカミさんにご用心
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リアクション

「ふぅ……」
 蒼灯 鴉(そうひ・からす)は部屋の露天風呂に浸かりながら、日本酒をちびりちびりとやっていた。
(良い木炭があると思ってアスカを誘ったが……微妙だったのか? 妙におどおどしていたような……)
 鴉は温泉旅行に誘ったときの嬉しそうな師王 アスカ(しおう・あすか)と、旅館に着いてからのぎこちない笑顔を思い浮かべ、首を傾げていた。
(まあ、良いか……あとで風呂から上がったらアスカ誘って散歩にでも行ってみよう)
 鴉はおちょこが空になると、温泉に浮かべている桶の中から徳利を取り出し、おちょこに日本酒を注いだ。
「ん……?」
 鴉は湯煙の向こうに現れた人影を見て、目をこすった。
(あ〜……オレも酒弱くなったな。アスカの幻影が見えるなんて……しかも、タオル巻いてるだけの恰好なんて……欲求不満か?)
 鴉はもう一度、目を凝らしてみるが、幻影は消えない。
「鴉……」
「なっ……!? アスカ!?」
 アスカはタオルを巻いたまま湯船に浸かり、鴉の横に腰を下ろした。
「りょ、旅館の人に聞いて……その……部屋の露天風呂なら混浴だって言うから……その〜……色々頑張ってみようかなぁ〜と」
(せっかくの良い雰囲気なんだから彼女サービスしないとよねぇ〜……!)
 真っ赤になってうつむくアスカを見て、固まる鴉。
(あ、あれぇ? もしかしていきなりだったから引いちゃった……?)
 心配になるアスカだったが、もちろんそんなことはない。
(か、可愛い……じゃなくて……視線をどこにそらせば……!?)
 鴉は逃げ場を探すように視線を色々なところへと向ける。
(酒! は、せっかくなのに……飲んでたら悪いよな。温泉!)
 そう思って温泉を見てしまったのがいけなかった。
 鴉は温泉に映った満月を見てしまい、オオカミの耳としっぽが生えてきてしまった。
「あれ……? 鴉、そんな耳してたっけ〜? なんか……ケモ耳みたい……」
 異変に気が付いたアスカはじっと鴉の耳を見つめる。
 そして、オオカミの耳をつんつんと触り始めた。
「おお〜……」
 つんつんするとぴくぴく動くさまが楽しいらしい。
 アスカは興味深そうに何度もつんつんして、反応を楽しんでいる。
「あの……アスカさん。心配してくれてるみたいなんですが……耳触るのやめてください」
 必至に色々と我慢している鴉は何故か敬語になってしまっている。
 それに、顔を背けて、体を少し震わせているようにも見える。
「ん〜、もうちょっとだけ〜」
 そう言うと、アスカはまた耳をつっつく。
「……あー、ダメだ」
 鴉は突然アスカの方に振り向く。
「え?」
 アスカは鴉に左手で右手首を掴まれる。
 鴉の真剣なまなざしにどきりと心臓が跳ねるアスカ。
「我慢がきかねぇ……。アスカ悪い……後で殴って良いから触らせろ」
 鴉はアスカにゆっくりと顔を近づけると、触れるか触れないかのキスをする。
 キスをしたことで止まらなくなった鴉はアスカの口の中に自分の舌を入れ、歯茎をゆっくりとなぞった。
 下の歯茎をなぞり終わると、唇を離す鴉。
 アスカの顔は温泉の熱気なのか、今のキスでなのか頬が上気し、潤んだ瞳になっていた。
「アスカ……」
 鴉はそう囁くと、唇をアスカのほんのりピンク色になっている首筋に持って行く。
 鎖骨よりも少し上くらいのところを甘噛みすると、アスカから声が漏れる。
「ん……」
 しかし、ここで鴉の行動が止まってしまった。
「ん? 鴉……?」
 鴉をよく見ると、顔を真っ赤にしてしまっている。
 どうやら酔いとのぼせでダウンしてしまったようだ。
「だ、大丈夫!?」
 慌てて、温泉から引きずり出し、なんとか部屋へと運ぶアスカだった。
 結局その後鴉が目覚めることはなく、気が付いたら朝になっていたという。