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君と僕らの野菜戦争

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君と僕らの野菜戦争
君と僕らの野菜戦争 君と僕らの野菜戦争

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「このままでは、雪だるまの権威は失墜し、私たちは路頭に迷うことになります」
 ここは、農場の片隅の仮設テント。
 雪だるま王国女王を名乗る赤羽 美央(あかばね・みお)は、国民たちを前に宣言します。
「これ以上の野菜たちの暴挙を許してはいけません。早々に介入し、私たちの力を見せるのです」
 この場に集まってきていた雪だるま王国の国民で、彼女の台詞に異を唱える者はいません。
 雪だるまには少し早い季節だと思うのですが。
 季節感だの場所柄だの、そんなことは女王様である彼女にとって瑣末なこと。
 ただ一つ重要なことは、彼らが危機感を抱いているということなのです。
「何とかなさい、クロセル」
「もちろんですとも、美央さん」
 雪だるま王国騎士団長ことクロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)は、女王様のお言葉を恭しく賜ったのでありました。
「野菜の方の収穫はわが国民の手にによって順調に進んでおりますし、料理の準備も出来ております。なんら憂慮なされますな」
「そうは言うものの、気に食わないのですよ」
 美央は機嫌悪そうに膨れます。
「そもそも、野菜に顔や手足があるということ事態がおかしいのです。まるで雪だるまの座を奪おうとしているようではないですか」
「少々痛めつけてやれば、彼らとて己が立場をわきまえましょう。そちらの方も問題ないかと。ただ……」
 クロセルは複雑な面持ちで進言します。
「国民の士気がいささか下がっておるようでございます。それが不安の原因でしょう。なに、ボーナスでも支給すれば、士気など上昇いたします」
「ボーナス? わが王国にそんな余裕があるとでも?」
「そちらもお任せください。すでにボーナスを支給する準備は出来ております」
 自信ありげなクロセルの表情に、美央も安心して任せることに決めたようです。
「そうか。全てあなたにお任せします。よい報告だけ盛ってきなさい」
「もちろんですとも」
 クロセルは、雪だるま王国の民を喜ばせるために、準備を開始します。
 後ほどみなの前に姿を現すでしょう。
「……」
 さて、あとはやることもなし。
 美央は椅子に深く腰かけてぼんやりとします。
 そういえば、この辺りは冬になるととても質のよい雪が降るそうです。
 雪が積もったら遊びに来てもいいかもしれません。
 そんなことを考えながら、美央はうつらうつらまどろんでおりました。
 ……。