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抱きついたらダメ?

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抱きついたらダメ?

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 さらに進んだ部屋では、相楽 心亜(さがら・ここあ)椥辻 久遠(なぎつじ・くおん)がトラップの解除に夢中になっていた。
「あと……ちょっと」
 心亜が慎重に地面に見える歯車をいじっていた。
 心亜はトレジャーセンスで宝を探しに来たつもりが、トラップを引き当ててしまっていた。
 「カチリ」という音を立てながら、一つずつ歯車のパズルを解いていく。
 無論、少しでも手元が狂えばトラップは発動してしまう。
「くっしゅん」
「あ……」
 不穏なくしゃみが心亜の後ろで響いた。
 同時に鉄がぶつかる大きな音。
「ごっ、ごめん! 大丈夫だった!?」
 久遠が慌てて心亜に謝る。腕はしっかり心亜に抱きついていた。
「う〜ん、大丈夫だけどこっちがまずいよね〜」
 久遠の問いかけに心亜はさっきまでいじっていた歯車を指さした。
 先ほどまで綺麗にはめられていたはずの歯車が、まるでおもちゃ箱の用に乱雑に積み重なっていた。
「ごめんっ!? どっ、ど、どうしようこれ!!」
「んー、とりあえず離れてくれないかな?」
「ごっ、ごめん!!」
 久遠は慌てて、心亜の体から離れる。
 突然、天井から金属音がし始める。その音に二人は天井を見上げた。
「てっ、天井!?」
 高さ10メートルはある大きな天井は、ゆっくりと地面に向かって降りてきている。
「うーん、逃げる?」
「そ、そうだね! 急いで出口に――」
 心亜の提案に、久遠はさっき入ってきた回廊へ戻ろうとする。
 だが、回廊の入り口に上から石で出来たシャッターがゆっくりと閉まっていっていた。
「ええ!? これだと逃げられないよ!?」
 慌てふためく久遠。対照的に落ち着いて心亜は深いため息をついた。
 だが、回廊の方から走り寄る音が聞こえてくる。
「うおおおおおお!」
 閉まりかけたシャッターから、叫びながら健闘 勇刃(けんとう・ゆうじん)が体をひねらせて入ってくる。
 その腰には天鐘 咲夜(あまがね・さきや)が抱きついていた。
 天井が降りてくる重い音の中、目を点とさせながら心亜と久遠は勇刃達を見ていた。
「あの……ここ、もうすぐ天井が降りてきますよ?」
 心亜が天井を指さしながら説明する。
「道がたたれそうだったからつい」
 状況を把握するために天井を見ると、勇刃はそこに大きな穴があることに気がつく。
「あの穴はなんだ?」
「さあ?」
 咲夜も天井を見る。その黒い穴は突然動き出したかのように見えた。
「え、なんかあの穴動いてません?」
 穴は、空に舞い姿を現した。
 左右に揺れ動くその黒い飛行物体はノラコウモリの大群だった。
「げっ、ノラコウモリか!」
 勇刃が構えを取る。
 心亜と久遠はトラップの歯車へと向かった。
「勇刃さん、ノラコウモリをおねがいしますね。私達はこの天井を止めます」
 勇刃は深く頷いた。
 その間にもコウモリが勇刃へと向かってくる。
 勇刃は歴戦の武術で、まずは一匹目を倒す。
 だが、未だに背中に咲夜が抱きついたままなため、大きく動くことは出来なかった。
 それでも、勇刃は咲夜をふりほどく必要もなかった。
「ふ、ノラコウモリくらいじゃ、俺は動じないな!」
 余裕とばかりに向かってくるノラコウモリ達を素手で倒していく。
「健闘くん、後ろです!」
「しまった」
 抱きついたまま咲夜が叫んだ。
 後ろ飛んでくるコウモリに迅速には対応できない。
「危ない!」
 咲夜のオートガードが勇刃を守るように展開された。
 ノラコウモリがガードによってはじき返され、甲高い声を上げながらうろたえる。
 勇刃はさっと振り返ると、最後のノラコウモリを素手で殴り倒した。
「ふう……ありがとう、咲夜。君が居ないとどうなってたことやらだぜ」
「え、そ、そんなに褒めないでください!」
 勇刃の褒めの言葉に咲夜は顔を真っ赤にした。
 そんなやりとりをしていると、天井はゆっくりと音を上げて元に戻っていく。
 心亜はトラップの解除に成功したようだった。
 心亜達はトラップの先へと急いだ。