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家に帰るとゴンザレスが死んだふりをしています。

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     ◆

 ラナロック邸敷地内――その言葉は誰に向けられるでもなく、ただ空を彷徨い、そして風に消えて行く。
 恨みとも、妬みとも、将又憧れとも、喜びともとれるその声。独白――。

「何故だ……なぜだナゼダっ!! NA☆ZE☆NA☆NO☆DA!!!!」

 最初はゆっくり呟くように。途中からは矢継ぎ早。

「舞踏会、社交パーティ、etc……それは我々薔薇学の専売特許! 更に言うのであればこの……この私を置いて他にはないと言うのに! それを何故!? 何故声がかからん!」

 尚も続く、呪詛の言葉。

「今思えばおかしかったのだ……そう、おかしかったのだ! 重要だから二回言ってしまったが。しかし、そう! パーティと称するパーティに呼ばれぬなど、最早それはパーティではないのだ! くそ……しかし負けん、負けんぞ! そんな陰謀は決して無視だ! そんな企みは断じて許すまい! って言うか正直なところ是が非でも出たい! パーティに参加して、脚光を浴びたい! 寧ろ皆に後ろ指さされてでもひそひそ話されたい! 負けるものか、此処で負けてなるものか!」

 独白。

「私に目が二個しかないと思った事が運のツキなのだ……私に目が二個しかないと思ったのが運のツキなのだよ! ぬかったなっ! あっはっはっはっは!」

 高笑い。

「そう……この俺様が、この俺様がこの俺様がぁっ! それこそこそこそと行うパーティにこそこそと参加するとは皆、努々思わぬだろう! が! しかし、俺様は参加するぞ!」

 徐に、彼――変熊 仮面(へんくま・かめん)は、何処からともなく。本当に何処からともなく、って言うか何処からが全く分からないが、ウォウルとラナロックの作成したパーティのチラシを取り出した。
「何々……住所は此処だ。そうだろう、だってちゃんと表札見たし。場所はあってる。時間は、おっとあと十五分で始まってしまうな。だがしかしもう敷地内だ。仕方ないから来てやったがしかし、些か十五分前行動とは我ながら何と紳士的! ふむ、注意書きは……な、なんと……!」
 変熊仮面はそこで、膝から崩れ落ちて行く。
「露出度の問題が……まさかこんな注意書きがあったとは……が、待てよ? 俺様は愛と美の伝道師、変熊仮面だぞ? これはもう、エロとか何とか以前に美なのだ! そう、我が肉体は――」
 立ち直り、立ち上がった彼は拳を堅く握りしめてから――言葉を止めた。
「あぁでも待てよ? 確か風のうわさで聞いたが、ラナロックなるおねいさん……結構怒ると怖いとか、そんな事を聞いたぞ? 平然と人間を打ち抜くとか、平然と人の首を絞め落とすとか、平然と体内から臓腑を抉り取るとか……うむ! 何か着よう!」
 どうやら言いながら、彼の方向性は此処で頓挫したらしい。
「お泊りパーティなのだろう! と、いう事は、そのラナロックというおねいさんが寝静まってからが本番! 俺様の独壇場に! なる!」
 きりと引き締まった表情で、彼は誰にともなく何にともなく何処にともなくポーズを取り、それから辺りを見回し始める。
そして何かを、玄関先で見つけた。
「おや、なんだろうかあれは」
 近付いて行く彼は、そこで何かを見つけ、足を止め、驚愕した。
「な――なんと言う………! 此処までおあつらえ向き、いや、ご都合主義、いやいや、最高のシチュエーション、今まで見たことがない! と思う」
 何故か尻つぼみになっていく声と共に、彼は一度辺りを見回して人がいないかを確認し、随分と悪そうな笑みを溢してそれを引き摺って行った。
「これならば――これならばこれならばぁ! 俺様の勝ちは硬い! 俺様の完全勝利は目前だぁ! あっはっはっはっは!」

 高笑い――。