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リアクション
『さあ間もなく始まろうかとしとるタッグマッチ、実況はこのオレ、今回は否定人間ではない妬み隊隊長こと瀬山 裕輝(せやま・ひろき)と』
『解説の夢野 久(ゆめの・ひさし)だ。横にいるのは――』
『アシスタントのルルール・ルルルルル(るるーる・るるるるる)でお送りするわ……けど、本来出る立場じゃないの久?』
『盛り上げるのには向いてねぇんだよ……それより、第0試合だ』
『そうや。まさか急遽決まるたぁ思っとらんかったわ……誰が出てくるかもわからんからな』
『どんな試合になることやら……お?』
会場が暗転し、流れ出す音楽。そして、現れたのは涼介・フォレスト(りょうすけ・ふぉれすと)、リーラ・タイルヒュン(りーら・たいるひゅん)の二人であった。
『コスチュームの上にTシャツを着て入ってきたのは、涼介・フォレスト、リーラ・タイルヒュンのタッグチーム【マジエンス】や!』
二人はリングに上がり、コーナーポストを上るとリーラが腕をクロスさせる。
「準備はいいか? HCファンよ準備はいいかってんだよ!?」
そして涼介が観客を指さし、大歓声の中叫んだ。
『二人とも気合十分、って所だな』
『男女タッグっていうのも珍しいわね……ところで、リースがいるなら柊 真司(ひいらぎ・しんじ)はいないのかしら?』
『何でも今日内緒で来ているらしいぞ』
『この放送が観られないことを祈るばかりやな……さて、この二人の相手をするのは何処のどいつや!?』
涼介、リーラの観客へのアピールが終わる頃、流れ出す入場曲と共に入ってきたのは、
『対戦相手はグロリアーナ・リーガル(グロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダー(ぐろりあーならいざ・ぶーりんてゅーだー))とサリーを身に纏ったラクシュミー・バーイー(らくしゅみー・ばーいー)のタッグ! マネージャーにシュリー・ミラム・ラシュディ(しゅりー・みらむらしゅでぃ)!』
『ラクシュミーはサーベルなんて持ってやがるな。振り翳して煽ってやがる!』
『こっちは女性二人のタッグね』
『ただの女二人じゃないな。ラフファイトお構いなし、なスタイルだろう。こいつは面白くなりそうだ』
『お喋りはそのくらいやな。両チーム、どっちが先に出るかで話とるな』
コーナーでは、リーラが自分を指さすと、ゆっくりと涼介がロープをくぐり自コーナーへと着く。反対では、グロリアーナがラクシュミーを宥めるような仕草を見せ、自軍へと押し戻す。
『先方はリーラとグロリアーナが出るようだな』
『さあ、間もなくゴングが鳴るで!』
「……二人とも、準備はいいね?」
レフェリーを担当する鬼龍 黒羽(きりゅう・こくう)が二人へ確認を取ると、合図を送る。そして、会場内に乾いたゴングの音が響いた。
リーラ、グロリアーナはお互い探る様に距離を縮め、ガッチリと組み合う。
『静かな立ち上がりやな』
『グロリアーナはランカシャーレスリングをベースにした戦い方だからな』
お互い組み合っている中、グロリアーナがアッパー気味のエルボーを放つ。
『先に動いたのはグロリアーナ! 鋭いエルボーがリーラの顎を捕らえとる!』
二発、三発とエルボーを放つと、そのままグロリアーナはリーラをロープへと押し込み、反対へと振る。だが、戻ってきたリーラが飛び込みながらグロリアーナに前腕を叩きこんだ。
『フライングフォーアーム! リーラ、そのままヘッドスプリングで立ち上がる!』
両腕を上げ、リーラが観客にアピールするとわっと歓声が沸く。が、ほぼ同時にラクシュミーがリングへと入り、持っていたサーベルの柄で彼女を殴打する。
『流石反則無しルール。序盤から凶器が出てきやがる!』
「ちょっと! 試合権利は彼女だよ!?」
尚も追い打ちをかけようとするラクシュミーを、黒羽が体を張って止めようとした直後、リングに入ってきた涼介が彼女を拳で殴る。
『涼介、ラクシュミーを殴る!』
二発、三発と殴ると涼介がラクシュミーをロープへと振った。振られたラクシュミーが反動で戻ってくると、待っていたのは涼介のジャンピングハイニー。
『脛を当てる教科書通りのジャンピングニーだ! こいつぁ効いたぞ!?』
『ラクシュミーたまらずリング外に逃げたで! ここからはマジエンスの時間や!』
涼介が倒れているグロリアーナを無理矢理引き起こし、自軍コーナーへと叩きつける。
『所で久、この勝負どうなると思う?』
『俺はマジエンスに分があると思うぜ。ミックスドマッチの定石っていうのは男が有利って点だ。それに、この二人はタッグ屋としての技量もあるみたいだ』
久が言うとおり、試合展開は涼介、リースが有利な展開で進んでいった。
巧みなタッチワークを行い、グロリアーナは中々タッチができず、着実にダメージを与えられていく。
漸く交代し、ラクシュミーがラフ殺法を持ちかけようとしても上手くはぐらかされてしまうどころか、涼介が持ち込んだスレッジハンマーで逆襲されてしまう。
このまま涼介、リース組が勝つ。そう思われていた――観客席がざわめきだすまでは。
試合権利を持つのはリースとグロリアーナ。現在、グロリアーナはリング中央でダウンしている。
コーナーを背にし、トップロープを掴んだリースが大きく右足を踏み鳴らす。何度も何度も、『起きてこい』と言うかのように。必殺のスィートチンミュージックの布石だ。
『リースが足を踏み鳴らす……おっと? あれは誰や?』
観客の視線がリングから入場ゲートへ移り、ざわめきだす。そこにいたのは、典韋 オ來(てんい・おらい)とレイラ・ソフィヤ・ノジッツァ(れいらそふぃや・のじっつぁ)。
『あの二人は……一体なんだ?』
典韋とレイラはそのまま花道を走り、リングへと滑り込む。
「え? ちょ……」
「どけや!」
止めようとする黒羽を典韋が突き飛ばす。そしてそのままリースにレイラが【バーストダッシュ】で勢いをつけたラリアットを叩きこむ。
そのまま典韋がグロリアーナと一緒にリースを場外へと蹴落としていた。
「いきなり乱入してきて随分とでかい顔してくれてるね」
それに黙っていられないと、涼介がスレッジハンマーを構え、リングへと上がってくる。そのままレイラを威嚇するが、
「邪魔じゃ!」
典韋が涼介の背後からフライングニールキックを放つ。スレッジハンマーを落とし、涼介が蹲った。
「レイラ! テーブルじゃ〜!」
典韋に言われ、レイラが長テーブルをリング中央に設置。それを確認すると、典韋は涼介をロープに振り、戻ってきたところをマウンテンボムで持ち上げる。ほぼ同時に、レイラがダイヤモンドカッターで頭を捕らえた。涼介の身体が、同時にテーブルを破壊する。
『おい待てよ! こんなところで3Dが見られるとかアリか!?』
『テーブルは見事真っ二つや! 涼介は大丈夫か!?』
『あれはしばらく立ち上がれないだろ!』
大の字で動かない涼介をリング外に蹴落とすと、典韋とレイラが両手を広げる。
「ナンバー1タッグ屋、典ノジとはわしらのことじゃ〜!」
この光景に、観客からは大ブーイングが飛んでくる。だがそれすらも心地よい響きと、二人は恍惚とした表情を浮かべるとさっさとリングを降りていく。
「いった〜……手加減無しで乱入とかないわよ……涼介、大丈夫?」
クローズラインを受けたリースが涼介に声をかけるが、ダメージが大きいのかまだ立ち上がれないでいる。
その時、
「いよっしゃぁ!」
「え? あぅッ!?」
観客席からかけてきた鬼龍 貴仁(きりゅう・たかひと)が、リースの鳩尾を膝で蹴り上げると、そのまま無理矢理リングへと戻す。
『おっと、いきなり観客席から何者かがリースに暴行をくわえとるで』
『ちょっと、あれ大丈夫?』
『よくはねぇけど……まぁ、関係者っぽいな』
貴仁はリングへと上がると、リースを引き起こし、
「いくぞぉぉぉぉぉ! サンダーファイヤー!」
サンダーファイヤーパワーボムで高々と抱え上げ、リングへと叩きつけた。
「あたたたた……って貴仁くん!? 何してんのさ!?」
復活した黒羽が驚き、目を見開く。
「いや、観戦してたらつい熱くなっぶぇッ!?」
『おぉーっと、レフェリーの地獄突きが炸裂や』
『見事なまでに喉に入ったぞ!』
「やっていい事と悪い事があるでしょ!?」
「わ、わかった……もう戻る……」
「そこまで急がなくてもいいんじゃないか?」
「え?」
貴仁が振り返ると、そこには笑顔で立つ涼介が居た。
「おぶっ!?」
涼介はそのまま貴仁の鳩尾をつま先で蹴り上げると、身を屈める彼の頭を足で挟む。そして腕をクラッチすると、持ち上げると同時に自分も飛び上がり、貴仁の顔面をマットに叩きつけた。
『必殺ペディグリー! 観客の顔面がマットに沈んだで!』
『3D食らっておきながらなんてタフな奴らなんだ!』
そう言うと、久はマイクを話、ルルールに耳打ちする。
「おい……お前、何かしたろ」
「流石にひどいじゃない? ちょっと【命のうねり】で回復させただけよ」
悪びれた様子もなく、ルルールが言うと久が溜息を吐いた。リングに目を向けると、リースも復活しており、右足を踏み鳴らしていた。
「さっきのお返し! やっちゃって涼介!」
「おうよ!」
涼介は無理矢理貴仁を引き起こすと、リースへと振る。そのまま、スィートチンミュージックが貴仁の顎を貫いた。
『観客の顎へ響くスィートチンミュージック! あの観客、もう立ち上がれないだろうぜ!』
「……あーもー、早く帰ろうね」
そう言うと黒羽は気を失い白目を剥いた貴仁をリング下へと蹴落とす。グロリアーナ、ラクシュミーがリングに上がってきたのはほぼ同時だった。
『おっと、そういや試合はまだ終わってないで!』
『あれ、今試合権利持ってるの誰だっけ?』
『試合の権利はリースとグロリアーナがまだ持ってる! グロリアーナ、リースをタワーブリッジで抱え上げた! 女だっていうのにすげぇ力だ!』
完全に油断しきっていたリースの身体を、グロリアーナが担ぐように抱え上げる。そして上半身を軽く捻ると、リースの身体を旋回させながら背中からファルコンアローの形で叩きつけた。
『グロリアーナのバッキンガムクラッシュが決まったぁー!』
『対して涼介はラクシュミーに抑えられ……おぉっと!?』
裕輝が思わず声を上げる。場外、屈んだ涼介の頭を足で挟んだと思うと、グロリアーナは前方に飛び、涼介の身体ごと回転して叩きつけた。
『すげー! 何やあれ!?』
『カナディアンデストロイだ! ラクシュミーが使うからインディアンデストロイか!?』
危険度の高い技を、場外で受けた涼介は立ち上がれない。リング上でも奇襲を受けダメージの溜まっていたリースは、グロリアーナのフォールを跳ね除ける事は出来なかった。
「……2……3!」
そしてそのまま、黒羽のカウントを聞くことになる。ゴングが鳴り響き、グロリアーナ、ラクシュミーの腕を黒羽が高々と上げた。
『試合の勝者はグロリアーナ、ラクシュミー組! まさかの番狂わせや!』
『しかしマジエンスは納得してないだろうな』
『そうよね、あの二人が乱入してこなければ試合は解らなかったもの』
『このままでは終わらないだろう。今後どうなることやら』
『それも気になるが、次はお楽しみランブル戦や! この試合を見逃すんやないで!』
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