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リアクション
「イコナちゃん、お誕生日おめでとう!」
ティー・ティー(てぃー・てぃー)が、本日誕生日を迎えたイコナ・ユア・クックブック(いこな・ゆあくっくぶっく)を祝う。
去年も同じ日に当たり前のようだけど、誕生日を迎えたイコナだったが、なんやかんやあって、去年は誕生日を忘れられていた。
そのことがあって、今回はティーが豪華寝台列車での食事を提案した。
なお、その代金は源 鉄心(みなもと・てっしん)が出したのだった。
三人の前にコース料理の前菜が運ばれてきた。
「ほわぁ……!」
料理本が未知の料理に見とれる。
「去年の埋め合わせもかねて奮発したの。遠慮なく食べて」
「出したのは俺だけどな……グッ!?」
余計なことを言うったばかりに、鉄心はテーブル下でティーに脛を蹴られた。
「あとで、誕生日ケーキも用意しているから楽しみにしていて!」
「期待しておきますわ!」
では、とイコナは早速前菜に手をつける。先割れスプーンを逆手に握り、緑色の野菜に巻かれた何かをすくい、口へと運ぶ。
すると――
「なんですのこれ! 店長を呼べぇ! ですわ!」
椅子の上に立ち上がったイコナを鉄心とティーが宥める。
「落ち着け、座れ」
「どうしたのいきなり?」
椅子に座り直し、イコナが言う。
「この料理のレシピが知りたいですわ! 是非にわたくしの辞書(レシピ)に加えないと!」
皿に残る前菜をがっついて、イコナが豪語する。料理本としての魂にでも火が着いたのだろう。
「できるんだったらあとで聞いてくればいい。俺としてはついでに、テーブルマナーの仕方も書き加えて欲しい」
巻末にでもいいからと、鉄心は思いつつ、ライチの食前酒から口にした。
一口含んだ後、グラスをテーブルに置いた目線の先に、はたと見覚えのある顔を見た。
「あれは一口A太郎か……?」
寝台車へと消えた研究者の姿を見て、安穏とした気分が失せた鉄心だった。
「どこ見ているのですの! もっとわたくしを盛大に祝えですわ!」
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