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リアクション
5.マーダー&ギーク
――、一般車両2号車
「お茶注いでくるって言って、かえってこないぃぃ!」
村主 蛇々(すぐり・じゃじゃ)は激怒した。食堂車にお茶を注いでくると言って、出ていったきり帰ってこない佐那たちが何故戻ってこないかは分からないが、彼女はわけもなく怒鳴ることに関しては人一倍大きな声を上げるのだった。のどが更に乾いた。
「……落ち着け。まだ10分しか経っていない」
アール・エンディミオン(あーる・えんでぃみおん)が宥める。あまり大声をだすと迷惑になりかねないからだ。
もっとも、それ以上に激しく口論しているところもある。
「家に連れて帰りますわ!」
「帰らない! 何が何でも帰らない!」
フィサリス・アルケケンジ(ふぃさりす・あるけけんじ)とカシス・アルケケンジ(かしす・あるけけんじ)の堂々巡りな姉妹口論が白熱していた。
カシスは実の妹であるフィサリスを実家に連れて帰ろうと躍起になっていた。フィサリスが天御柱の仲間と上野へ行く用事があるのを知り、彼女が地球に戻る今が実家に連れ帰るチャンスとばかりに、後をつけてきたのだ。
フィサリスは強引な姉の事を考慮して、上野に行く事は黙っていたのだが、案の定だった。このままだと本当に帰りたくもない実家に連れて行かれそうだ。
「騒がしいなぁ」
瀬乃 和深(せの・かずみ)が喧騒を気にしてつぶやく。
せっかくの旅行だ。のんびりと楽しく行きたい。
「1号車に場所を変えるか?」
「少し騒がしいくらいがいいじゃないですか」
瀬乃 月琥(せの・つきこ)が言う。他の客の話し声で口論の内容がどんなものか分からない位には離れていたのが幸いしていた。ちょっとした喧騒も旅のアクセントにふさわしいと流は思う。
「それよりも兄さん、どこ廻る?」
上守 流(かみもり・ながれ)が尋ねる。プランもない行き当たりばったりの旅行。上野で降りてどこへ行こうかと決めている最中だ。
「夢の国はどうかな? イルミネーションとかすごそうだよ」
「私はまずは温泉に行きたいです。和深は?」
ぼんやりと考える。特に思いつかない
「そうだな……」
今更日本に冒険心をくすぐられるところなんて無いので、どこにでもと思うのだった。
「出来れば皆で楽しめる所が良いな」
それも上野に着くまでに思いつけばいいだろうと和深は考えるのだった。
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