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【神劇の旋律】ストラトス・チェロを手に入れろ

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【神劇の旋律】ストラトス・チェロを手に入れろ

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第十二章 ストラトス・チェロの行方 1

 ……と、そんなこんなで、どうにかこうにか騒動は決着した。

 用意されたチェロのうち三挺が破壊され、二挺が持ち去られるという散々な結果だったものの、本物のストラトス・チェロは無事に残った二挺の中に含まれていた。
 確率2/7が当たり前のように起きる。人、これをご都合主義というが、深く追求してはいけない。

 そして、捕縛されたレガートが全ての罪を自白したことで、無事に三姉妹の疑いも晴れたのだった。
 ちなみに、レガートは「共犯者がいたが名前は聞いていない」と話したものの、後の調査でも彼に共犯者がいた形跡は見つからず、彼の責任逃れのためのウソとして処理された。





 それはさておき。
 事態が解決した今、問題となるのはストラトス・チェロをどうするか、である。

「ぜひそのチェロを我輩に譲ってもらいたい。代金はこれだけ用意した」
 クロウディアが提示した金額は、なんと15万Gという驚くべき金額だった。
 資産家でもあり、こうしてお金を贅沢に使うことも大好きという彼女にしてみれば、この額でさえまだ上限いっぱいではない。
 加えて、今回チェロを守りぬけた理由の一つに「あらかじめダミーを大量に作っておいた」ことがあげられるが、これはもともとクロウディアの発案である。
 そのことも、彼女にとって優位に働いていた。
 もっとも、そのダミーを一番壊したのは彼女の連れのテラーであるので、その辺りは差し引きゼロに近いのかもしれないが。

 それに対して、三姉妹側はというと。
「疑心暗鬼に陥り、君たちにあらぬ疑いをかけてしまったことについては謝ろう。
 だが、それとこれとは別の問題だと思ってもらいたい」
 あらかじめセニエ氏にこう釘を刺されてしまうと、有利に交渉できる材料はあまりにも乏しい。
「今回の事件の真犯人を捕縛できた」というのは大きなポイントではあるが、特に資金力という点において、彼女たちには、そして協力者たちにも、とてもクロウディアと張り合えるだけの余裕はなかったのである。

 なお、薔薇の学舎への寄贈を提案していたステンノーラは、すでにこの場にはいない。
 対価をもって買い取りたいという相手が現れ、しかも魔物騒ぎも解決した今、セニエ氏がタダでチェロを手放す可能性はゼロだと踏んだからだ。





「一つ、お願いがあります」
 沈黙を破って、テスラ・マグメル(てすら・まぐめる)が前へ進み出た。
「チェロの譲渡交渉を進める前に、一度そのチェロを貸してはいただけませんでしょうか」
「ふむ、どういうことかね?」
 尋ねるセニエ氏に、テスラは微笑みながらこう答えた。
「今回こちらに集まった者の中には、音楽を愛する者が多くいます。
 皆、叶うならばぜひそのチェロの音色を一度聴きたいと願っているのです。
 どうか、その機会を与えていただけませんでしょうか」
 その言葉に、セニエ氏も興味を示し始める。
「なるほど。それはつまり、あなたが演奏すると?」
 さすがにファウスト・ストラトスとは比べるべくもないが、テスラもパラミタでは高名な音楽家であり、セニエ氏もその名を知っていた。
「はい。僭越ながら、私にお任せいただければと思います。
 チェロにまつわる良からぬ噂も消えたことですし、改めてお披露目も兼ねて演奏をさせていただければと」
 テスラがそう言うと、セニエ氏はもう一度少し考えてから、クロウディアの方を向いてこう言った。
「クロウディア殿。今はまだこのチェロは私の所有ということになっている。
 この演奏会の話、私としては許可したいと思うが、構わんね?」
「うむ。確かに今はまだそなたの所有じゃしな。我輩がどうこう言うことではあるまい」