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【WF】千年王の慟哭・後編

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【WF】千年王の慟哭・後編

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「時は満ちた。来るのじゃ、黒曜鳥!」

 と、召喚の準備が整った手記が叫んだ。
 するとその声に応えて、三対の翼を持つ非常に大きな黒鳥が魔方陣の中から飛び出してきた。
 手記の操る腕の動きに合わせ、黒曜鳥は千年王の周囲を纏わりつくように舞う。
 そんな黒曜鳥を千年王は剣で振り払った。
 しかし、手記はさらに黒曜鳥を呼び出してふたたび千年王へと纏わりつかせる。

『グゥゥッ、小賢シイ!』

 今度はヘルファイアを吐き出して、黒曜鳥を焼き払う千年王。
 と、焼け落ちた黒曜鳥の向こうから中願寺綾瀬と紫月唯斗が姿を現した。

「いきますわよ」

 綾瀬はそういうと漆黒の衣に魔力を込め、錐のように尖ったリボンを千年王に向けて突き刺した。
 その鋭い一撃は、千年王の腐った肉体を貫く。

『グアアアアァッ!』

 千年王は、巨体に走る激痛に思わず天を仰いだ。

「千年王、ごくろうさん。アンタにまた安らかな眠りを――」

 唯斗はそういうと体全体に取り込まれた全能龍の力を解放し、その身に神の力を降ろす。
 そして手にした白狗の刀を疾風の如き速さで千年王へと連続で突き入れた。

「綾瀬!」
「わかっていますわ!」

 さらに追い討ちをかけるふたりは、千年王の体に渾身の一撃を叩き込んだ。
 さすがの千年王も、ふたりの連携攻撃にその巨体を後ろへと仰け反らせる。
 しかし、両脚で床を踏み壊し、千年王はその攻撃に耐えた。

『オオオオッ! コノ程度デハ倒レヌゾォッ!」

 カッと目を見開いた千年王は、綾瀬と唯斗に向かってヘルファイアを吐き出す。
 綾瀬は手にしていた芭蕉扇を大きく振るって大風を起こし、その炎に対抗した。
 それを見た千年王はサウザンドソードに魔力を込めて空を薙ぐ。
 すると巻き起こる剣風に乗って、強烈な冷気が綾瀬と唯斗に襲い掛かる。

「アルティマ・トゥーレ!?」

 千年王の技を察知した綾瀬は叫んだ。
 だがその時には、強烈な冷気から生まれた無数の氷柱がふたりに襲い掛かっていた。

「きゃッ!」
「くっ!?」

 ふたりは激しい冷気の嵐に呑み込まれた。

「くっ、伊達に王を名乗っているわけではないようですね。完全ではないとはいえ、強い」

 なぶらにグレータヒールで回復してもらったラムズが、ゆっくりと立ち上がってそうつぶやく。

 ――オオオオオオッ!!

 幾多の戦いを経験した百戦錬磨の千年王は、天を仰いで吼えた。

『敵、敵ィッ! 敵ハ我ガ……我ガァァアアアアッッ!!?』

 不完全な状態で復活してしまった千年王は、突発的に襲ってきた激痛に頭を抱え、巨体をふらつかせる。
 そして足をもつれさせて聖堂の壁に自分からぶち当たった千年王は、崩れた瓦礫と砂煙に埋もれた。

「千年王!」

 それを見たシルフィスティ・ロスヴァイセ(しるふぃすてぃ・ろすう゛ぁいせ)が、千年王の元へ駆け寄る。
 そして彼の傷を治そうと思い、千年王へと命のうねりをかけた。

『オアアアアッ!!』

 だが、千年王の皮膚や肉体は治るどころかさらに醜く泡立ち、王は苦悶の声をあげる。
 邪悪なる儀式で復活した千年王には、聖なる魔法は毒であった。

「えっ、嘘よねッ!?」
『――ホントダアアアアアッ!』

 サウザンドソードを支えになんとか立ち上がった千年王はそう叫ぶと、シルフィスティを踏み潰そうと足をあげた。

「あぶねぇ!」

 と、蝙蝠の羽を生やした獣人の姿でシルフィスティの元に駆け寄る影――第1フロアの敵を片付けてこの大聖堂へと駆けつけたウォーレン・シュトロン(うぉーれん・しゅとろん)が、間一髪のところで彼女をピンチから救い出す。

「大丈夫か?」
「あっ、ありがとう」
「気にすんな。仲間だろ?」
「――あっ、ああッ!」
「んっ、どうした?」

 ウォーレンは驚くシルフィスティの声に後ろを振り向く。するとそこには、サウザンドソードを振り上げる千年王の姿があった。

「ヒャッハハッ! てめぇが千年王かッ!!」

 と、妙にテンションの高い笑い声をあげながら、跳躍したギャドル・アベロン(ぎゃどる・あべろん)が千年王へと殴りかかる。
 アイアンフィストの持ち主であるギャドルの強烈な拳は、千年王の巨体にも確かなダメージを与えて攻撃の手を止めさせた。

「ウォーレン。かっこつけて飛び出すのはいいが、爪が甘いようじゃのぅ」

 ウォーレンと同じように第1フロアから駆けつけてきたルファン・グルーガ(るふぁん・ぐるーが)がそういった。
 さらに仲間たちを先にいかせるために戦っていた他の者たちも、このフロアへ現れていた。