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【神劇の旋律】消えゆく調べを求めて

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【神劇の旋律】消えゆく調べを求めて

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第8章 がぶっちゅうちゅうで一体化したい☆ですわ

「騒ぎが起きたようですわね。襲撃かしら」
 アジトへの襲撃に気づいたとき、バルタザールは、プレイルームにいた。
 目の前には振動者がいて、すっかり快楽の虜になったアリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)や、振動者のと同じ触手の姿となって謎めいた交流をはかろうとしているトトリ・ザトーグヴァ・ナイフィード(ととりざとーぐう゛ぁ・ないふぃーど)や、そのほかの生徒たちをまとめて、なぐさみものにしようとしているところだった。
「行かなければ……あっ」
 踵を返そうとして、バルタザールはうめいた。
 振動者の触手が、バルタザールの腰に巻きついていたのだ。
「何をするんですの」
 バルタザールの言葉を無視して、振動者は彼女の全身にぬめぬめした液体を吹きかけ、触手で締めつけて、思いきりこすりあげる。
「やめて……ああっ」
 バルタザールはあえぎ声をあげた。
 肉の底から、えもいわれぬ悦楽がわきあがっていた。
「ブブブブブブブブブブブブ」
 振動者は、不気味に蠕動し、微笑んでいるかのように思えた。

「セサミ! アリアは本当にここにいるんだね?」
 泉椿(いずみ・つばき)は、バルタザールのアジト内部を走りながら、オープン・ザ セサミ(おーぷんざ・せさみ)に尋ねた。
「ええ! 快楽に溺れている、赤いオーラを感じるわ。ここに、この奥にアリアはいるはずだわ。やっとみつけたのよ」
 セサミも、興奮した口調で返した。
 他の生徒たちも、次々にアジトに突入している。
 既に救出した全裸の女性たちの話から、この奥に、振動者と呼ばれる恐るべき存在がいることがわかった。
 まだみつかっていない女性は、その恐るべき触手に囚われているのだろう。
 事態は急を要するものだった。
「ここだわ。この部屋の中に!!」
 セサミは、プレイルームの扉を開けた。
 ばーん。
 しゅるしゅるしゅる
 途端に、セサミの身体は部屋の内部から伸びてきた触手に絡め取られてしまった!!
「ああ、セサミ!! くっ、何をするんだー」
 椿は、慌てて部屋に踏み入って、振動者に駆け寄っていく。
 触手に囚われたセサミは、恍惚とした表情のアリアの側に縛りつけられ、全身をぶよぶよしたものに巻かれて引き絞られた。
「あ、ああー!!」
 セサミの衣服が裂け、素肌が露になる。
「あっ、セサミさん。ここにいちゃ、ダメ。私みたいに、おもちゃに……あ、あああああ!!」
 半開きの目でセサミをみつめていたアリアの顔が、激痛にしかめられる。
「や、やめて、いや!! ぬるぬるする!!」
 アリアの全身が、ドロドロしたものにまみれている。
 振動者の触手から分泌されたもののようだ。
「ぷあっ、あっ、あっ!! あっ、あっ!!」
 何度も触手にこすりあげられて、アリアの顔が、紅潮していく。
 その唇の端から、よだれがしたたり落ちる。
「アリアさん、しっかり!!」
 セサミは戦慄した。
 アリアは、激痛だけではなく、確かに快楽も感じ取り、しかもその快楽に脳を支配されつつあった。
 心では抵抗していても、肉体が徐々に虜にされていく。
 アリアは、精神崩壊の一歩手前にあるといえた。
「アリアさーん!! あっ、あああ!!」
 セサミも悲鳴をあげた。
 触手がセサミの身体も激しくこすりあげてきたのだ。
 さらに、触手は、セサミの顔とアリアの顔をくっつけさせようとしてきた。
「う、うう、う」
 セサミとアリアは唇と唇を重ねて、互いの精気を貪ることになる。
「アリアさん、私を食べて!! 椿、その間にアリアさんを!!」
 セサミは、アリアの中に舌を入れて気を注入しながら、椿を促した。
「う、うん!! 離れろー!!」
 椿は、ありったけの力をこめて、アリアを拘束する触手を断ち切ろうとした。
 だが。
「う、うわー!!」
 次の瞬間、椿も触手に囚われてしまっていた!!
 衣服を切り裂かれ、生まれたままの姿にされたまま、身体を大きく持ちあげられて、もがく椿。
 ばし、ばし
 その椿の顔に、触手の先端が猛烈な平手打ちをくらわせる。
 まさに、地獄絵図であった。

「警察には既に連絡しておいたわ!! あとは、みんなを助け出さないと!!」
 ローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)もまた、アジトに突入して大乱闘に参加していた。
「トレーネは? トレーネはどこだ?」
 セリス・ファーランド(せりす・ふぁーらんど)は、トレーネの姿を探して、アジトを走った。
 現段階でトレーネの姿がみえないことに、セリスは懸念を抱いていた。
「この奥に振動者と呼ばれる存在がいるらしいです。もしかすると、そこに」
 ユリエラ・ジル(ゆりえら・じる)もまた、セリスとともにトレーネを捜索する。
「よーし、鑑賞や、鑑賞やー!! 全て記録に残さなあかんでー!!」
 瀬山裕輝(せやま・ひろき)もまた、何ごとか呟きながら走っていた。
 その目に、不穏な光がはしる。
 走りながら、裕輝は、全裸の女性たちが闘う姿を、残さずビデオカメラで録画していた。
「無修正やで!! イタチューブやで!! ボコボコ動画やで!!」
 裕輝は、意味不明なことを呟きながら、撮りまくって。
 目にした女体の全てを、盛り上がった部分も凹んだ部分も全て。
「あんた何やってんの!? まさか、個人的な興味で撮ってるんじゃないわよね?」
 ローザマリアが、瀬山をたしなめるようにいった。
「まっさーかー!! そんなことあらへんやんか!!」
 裕輝は、笑って流した。
「どうせ撮るなら、私を撮ってよ」
「じゃ、脱いで」
 裕輝は、カメラをローザマリアに向けていった。
「バカ! 私の活動を撮るのよ。これから、このアジトでストラトスシリーズの情報を集めるのよ」
 ローザマリアは、裕輝を張り飛ばしていった。
 ぼごお
「あ、あがあ」
 裕輝は鼻をおさえてうめく。
「そ、そんなの撮ってもつまらへんわ! プレイルームに行くで!! ダダッダーッシュ!!」
 裕輝は一瞬で立ち直ると、ローザマリアに背を向けて、アジトの奥に走っていった。
「何よ、それ、もう」
 ローザマリアは、膨れ面だ。

「ここがプレイルームだ。既に何人か突入したようだが、出てこない。ということは」
 プレイルームの扉を前にして、セリスは警戒した。
 振動者。
 その恐るべき力を、セリスは侮るつもりはなかった。
「開けましょう。やるしかないのですから」
 ユリエラがいった。
「無論だ」
 セリスが扉を開けた。
 ガチャ
 すると。
「よーし、撮るでー!!」
 カメラを手にした裕輝が意気揚々と、プレイルームに飛び込んでいった!!
「む。ある意味、ちょうどよいか」
 セリスは、裕輝の少し後から、警戒しながら部屋に入っていく。
「わわー!!」
 すぐに、裕輝の悲鳴があがった。

「みんなの悲鳴が聞こえるであります!! ここに、何が?」
 葛城吹雪(かつらぎ・ふぶき)もまた、プレイルームに駆け込んで、目を見張った。
「どうしたのだ?」
 イングラハム・カニンガム(いんぐらはむ・かにんがむ)も、吹雪の後からプレイルームに入って、同様に驚く。
「な、なんじゃこりゃああああ!!」
 不気味にうごめく振動者。
 その恐るべき触手に絡めとられた、アリアや、トトリや、バルタザール。
 そして。
 ビデオカメラを構えた裕輝が、触手にとらえられて、天井付近から逆さ吊りにされている。
 逆さになって、涙を流しながらも、裕輝は必死で女性たちの艶姿を撮ろうとしていた。
「ボイスレコーダーも仕掛けたし、バッチリなんや!! 撮るんや、撮るんやで!!」
 裕輝は、歯を食いしばって、特にアリアを撮ろうとしている。
 アリアの太ももが、謎の分泌物に汚染され、アリアの口からよだれがこぼれて、その目がとろんとしている様を、じっくりと撮影した。
 まさに、生命がけの撮影であった。
「あやや。我に似たような姿のものがいるである」
 イングラハムは、振動者に不思議な親近感を覚えた。
「感心している場合では!! 何とかしてあやつを倒し、みんなを救出しなければいけないであります!!」
 ズキューン!!
 吹雪の放った弾丸が、振動者の胴体にめりこむ。
 だが、振動者はいっこうに平気な様子だった。
 その触手が、吹雪に襲いかかる。
「危ない!!」
 セリスが、吹雪を襲う触手にタックルをくらわせた。
「くうっ」
 そのセリスも、触手に絡めとられてしまう。
「撮るんやー!!!」
 裕輝は、ついにトレーネをみつけた。
 トレーネは、触手の山の下につぶれたようになっていて、動きがなかった。
 気絶しているのかもしれない。
 ある意味、いろいろ撮りまくるチャンスだ。
 裕輝は、トレーネに接近しようとした。
 触手に絡まれながらもがいているうちに、身体の位置が動いて、トレーネのお尻がよくみえるようになってきた。
「お尻や、お尻や!! 撮るんやー!!! むぐぐ」
 そんな裕輝の口に、触手の先端が押し入ってきた。
「くはああああああああ。もうダメやぁ!!」
 裕輝は絶叫し、白目を剥いて、気絶した。
 だが、手にしたカメラは、動き続けていたのである。

「振動者さぁん。僕と、僕と一体化しようよ!!」
 トトリは、自分も触手のような姿であることをいかして、振動者との交流を試みていたが、やがて、一体化を志すようになった。
 一体化、というより、あわよくば、トトリが振動者を飲み込もうとしていた。
 吸収し、とりこんでしまう。
 トトリは、振動者の正体がひどく気になった。
 こいつの、全てを理解してやりたい。
 その気持ちが、一体化の衝動へと変わっていった。
 だが、振動者は、一体化には応じる様子をみせない。
 そこで。
 がぶっ
 トトリは、振動者の触手に噛みついた。
 ちゅうちゅう
 噛みついて、体液をすすってみる。
「一緒に、一緒になるんだよ、振動者さぁん!!」
 トトリは、切なく吠えた。
 壮大な告白であった。
 だが。
「ブブブブブブブブブブブ」
 振動者は、激しく抵抗する構えをみせた。
 全身をのたくらせて、トトリを引き離そうとする。
 そして。
「くはあっ」
「ぷはあっ」
 振動者は、トトリ以外の、捕らえていた人々を次々に解放し始めた。
 トトリとの闘いに専念するためだろう。
「はあ。やっと解放されましたわ。あら? 何を撮ってるのかしら。いやらしいですわね」
 ひと息ついたトレーネは、気絶した裕輝の手からカメラをもぎ取ると、メモリをとって、床にたまっている粘液に放り込んでしまった。
「トレーネ。早く、これを巻いてよ。でないと、みんなにみられちゃうよ」
 同じく解放された椿は、トレーネにタオルを差し出した。
 本当は衣を提供したいところだが、椿自身も衣を引き裂かれているのだ。
「ありがとう。確かに、サービスしすぎるのも考えものですわよね」
 トレーネは、そのタオルを腰に巻いた。
 すると、どうしても胸はみえてしまうのだが、そこまで構う余裕はない。
「アリア、もう大丈夫なのよ、アリアー!!」
 セサミもまた、解放されていたが、アリアがいっこうに触手から離れる様子をみせないので、心配になっていた。
「あ、ああああ……はぐ……はぐ……」
 アリアは、声にならない声を発して、うつろな瞳で、どこをみているかもわからない。
 触手はアリアを放り出そうとしていたが、アリア自身は、無意識に身体を動かして、触手にしがみついてしまっていた。
 その身体を、自ら触手に巻きつけて、アリアは、ボロボロと涙をこぼした。
「あー、あー」
「そんな! もう手遅れなの?」
 セサミは、アリアの精神が崩壊してしまったのだと悟った。

「早く、アリアを! そして、トトリを助けなきゃ!!」
 椿は叫んだ。
 だが。
「くすくすくす。そうは問屋がおろしませんわよ」
 邪悪な笑い声が響きわたる。
「バルタザール!!」
 トレーネが叫んだ。
 仮面の女、バルタザールもまた、他の人々とともに触手から解放され、振動者に立ち向かおうとする生徒たちの前に、巨大な敵として立ち塞がることとなったのである。