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リアクション
第9章 仮面の女とデスマッチ☆ですわ
「さあ、お遊びはここまでですわ!! みなさま、このアジトをつぶせても、私の企てはつぶせないですわよ」
バルタザールは、鞭を片手に生徒たちに迫る。
「何の、負けるもんか、ですの☆」
騎沙良詩穂(きさら・しほ)がプレイルームに現れて、バルタザールと対峙した。
そして。
「やっと登場だよー!!」
小鳥遊美羽(たかなし・みわ)も現れて、ファイティングポーズをとる。
「観念しなよ!! キミらの企てごと粉砕なんだからね!!」
パフュームが、現れた。
「許せないわ。みんなをひどい目にあわせて!!」
シェリエも現れた。
「ふふふ。まとめて処分してさしあげますわ」
不敵な笑いを浮かべるバルタザールに、詩穂たちは飛びかかっていった。
「たあー!!」
「はあ、天の炎!!」
バルタザールは、術を放った。
「え、ええー!! 鞭で攻撃かと思いきや、術なのー!!」
美羽は、びっくりして目を白黒させた。
バルタザールは意外にも、肉体派ではないようだ。
鞭は、カモフラージュだったのである。
というか、鞭は、趣味なのだろう。
「ふふふ。みんな、焼かれるのですわ。このアジトとともに!!」
バルタザールは、次々に術を放って、部屋を炎熱地獄に変え、生徒たちを追いつめてゆく。
そこに。
「そこまでです!! とあーっ」
叫び声とともに、炎を飛び越え、バルタザールに襲いかかっていった一人の影。
それは……。
「闇を切り裂く逆転のジョーカー、インベイシオンただいま参上!!」
両腕を斜めに振りあげて、白星切札(しらほし・きりふだ)は叫んだ。
頬を紅潮させ、情熱を爆発させる切札。
ちゅどーん!!
爆発とともに、切札、いや、インベイシオンは飛んだ。
「くらえ、必殺!! インベイションホワイトスター!!」
インベイシオンは、ジャンプしながら、二丁拳銃による連射攻撃を仕掛けた!!
ズキュ、ズキューン
「くうっ、やりますわね」
勢い負けして、バルタザールは後じさる。
そこに。
「忍者超人オクトパスマン(にんじゃちょうじん・おくとぱすまん)参上!! 悪魔のファイト、とくとみせてやるぜー!!」
オクトパスマンが現れ、インベイシオンとともにバルタザールに迫っていく。
ちゅどーん!!
より激しい爆発が巻き起こった。
「ブブブブブブブブブブブ」
一方、振動者を食らおうと試みるトトリ・ザトーグヴァ・ナイフィード(ととりざとーぐう゛ぁ・ないふぃーど)は、壮絶な揉み合いのうちに、振動者の胴体に噛みつき、その身体を持ちあげて、不思議な裂け目があるのを広げるなどしていた。
すると。
「何なの、これはぁ!?」
トトリは目を見張った。
振動者の身体にある裂け目の奥に、不思議な光がみえたからだ。
「この光……異界の!? 異界へのゲートがここにある!?」
あまりのことに、トトリは愕然とした。
振動者――ザ・バイブレーター――とは、いったい何者なのか?
バルタザールが恐怖していた正体が、このゲートにあるのであろうか?
「ブブブブブブブブブブオオオオオオ!!」
振動者は、いっそう高い雄叫びを放った。
そのとき。
トトリは、またも自分の目を疑った。
おそらく、いまみたものを他の誰かに話しても、決して信じてはもらえないだろうとさえ思った。
何しろ、目の前の、振動者の身体にあるゲートから、光に包まれたエネルギー体が現れ、明らかな意志を持って自分に語りかけてきた、などと、どうして信じてもらうことができるだろう?
おそらく、自分は気が狂ったのだ、とトトリは思った。
だが、その声は、明瞭に聞こえてきた。
(そこまでである。これ以上その存在に関われば、おぬし自身がゲートに飲み込まれることになろう。このゲートの先にみえるもの。それは、おぬしも聞いたことがあるはず。ナラカ。その先にあるのは、ナラカなのである)
「あ、あなたは、誰ですかぁ? なぜ、僕にそんなことを教えてくれるのですかぁ?」
(我が名は、パンツァー・イタチューン。ここで行われていること、間違った快楽を正すために現れたものである)
それっきり、声は聞こえなくなった。
そして。
「う、うわー!!」
その声がいったとおり、トトリは、ナラカへとつながるそのゲートに、自分自身が引きずりこまれそうになっているのに気づいた。
「た、助けてぇー!!」
トトリは悲鳴をあげた。
ドンドン、ドンドン!!
トトリが悲鳴をあげると同時に、プレイルームの扉が、何者かによって激しく叩かれた。
「誰ですの? いま、まさに修羅場ですのに」
トレーネは、首をかしげながら扉を開けた。
すると。
「ぐ、ぐげぎげごばごば!!!」
プレイルームに飛び込んできたのは、獣のような唸り声でしか話せない、テラー・ダイノサウラス(てらー・だいのさうらす)だった!!
「あら。やっときたんですのね」
「どんどんどん、どんきぐおおおてー!!(トトリ、いま助けにいくぞ)」
叫びながら、テラーは、炎に包まれる部屋を突っ切って、振動者のもとへと急いだ。
がしっ
振動者内部のゲートに飲み込まれようとしているトトリの身体をつかんで、引きずり出していくテラー。
「テラー!! きてくれたんだねぇ。ありがとう……」
そういって、トトリは失神した。
「お、おごおごうううがー!!(しっかりしろ)」
失神したトトリを背負って、テラーは脱出の道を探った。
「ルシェン!! ルシェン、ここにいるの?」
テラーに続いて、榊朝斗(さかき・あさと)もプレイルームに飛び込んできた。
アジトの他の場所に、ルシェンはいなかった。
すると、ここにいるはずだ。
朝斗は、必死で探した。
「ぐ、ぐうううううう(ここにいるぞ)」
テラーが、朝斗の手を引いて、指し示した。
そこには、触手の山に埋もれて失神している、ルシェン・グライシス(るしぇん・ぐらいしす)の姿があった。
「ルシェン、大丈夫?」
朝斗に頬を叩かれて、ルシェンは目を開けた。
「きてくれて、ありがとう。でも、手遅れだったわ」
ルシェンは、身体をかきむしるような仕草をしてみせて、うつむいて、いった。
「どういうこと? ケガでもしたの?」
朝斗の問いに、ルシェンは首を振った。
「もう、前には戻れないわ。みんな、そう感じているはず」
ルシェンは、唇の端に浮かんでいた泡を拭うと、床にあったものを拾いあげた。
「それは?」
それは、振動者の触手の先端がちぎれたものだった。
柔らかな肉のドリルといった外観である。
ルシェンは、それを大事にしまいこんだ。
「そんなものを持っていって、どうするの?」
「気にしないで。さあ、復讐のときよ」
ルシェンはさらに、床に落ちていた鞭を拾った。
バルタザールが落としたものだ。
「ふふふ。たっぷりやり返してあげるから!!」
鞭をビシビシと鳴らしながら、ルシェンはバルタザールに向かっていった。
「大丈夫か」
霧島玖朔(きりしま・くざく)は、触手の下に倒れていた、レイカ・スオウ(れいか・すおう)を抱き起こして、いった。
「何とか。身体は、結構いろいろされましたが」
レイカは、霧島の容赦のない視線から、身体の大事なところを隠そうと身じろぎした。
「いまは恥じらっている状況じゃないだろ。すっぽんぽんでもいいじゃないか。きれいな身体なんだしさ」
そういって、霧島はレイカの胸の膨らみを、そっと押し包んだ。
「あの、どさくさにまぎれて、やめてくれませんか」
「いいじゃないか、これぐらいは、役得で」
霧島は、全裸のレイカを立たせると、背後から抱きしめて、その胸を、両手で隠すようにした。
「歩けるか」
「いえ、もうボロボロです」
「それじゃ、俺が何とか運んでやろう」
霧島は、レイカの胸を揉みたてながら、そのお尻を膝で押して、歩かせていった。
「もう……だから、余計なことはしないで……あっ」
レイカは、思わず声をあげて、霧島に身を任せている自分を感じていた。
触手のせいで、変なものに目覚めてしまったようだ。
「リブロ、大丈夫かい」
アルビダ・シルフィング(あるびだ・しるふぃんぐ)は、やはり触手の下に倒れていた、リブロ・グランチェスター(りぶろ・ぐらんちぇすたー)を助け起こしていた。
「ああ、大丈夫だ。だが、白豹がなくなってしまった」
一糸まとわぬ姿で、リブロは気丈に立ってみせた。
「白豹が? ああ、そこに落ちてるよ」
アルビダは、床に落ちていた、リブロの、白豹の柄のパンツを拾いあげた。
そのパンツは、穴だらけになっていた。
「やれやれ。だが、こんなものでもないよりはマシか」
そういって、リブロは穴だらけのパンツを履いた。
「むう。かえってセクシーだね」
「変な目でじろじろみるものじゃない。さあ、バルタザールを倒そうではないか」
リブロは、アルビダを促した。
「くうっ、だいぶ劣勢になってきましたわね。それはそれで、今回は仕方ないですわ。ですが」
バルタザールは、インベイシオンそのほかの生徒に追いつめられて、壁を背にすることとなった。
もう、後がない。
だが。
「いまこそ、私の奥義をおみせしますわ!!! はあああああ、紅蓮の大爆発ですわ!!!」
絶体絶命の状況で精神を集中させ、巨大な炎の球を空中に出現させるバルタザール。
「もう、観念しろー!! 私が、許さないよー」
そんなバルタザールに、美羽が突進しようとする。
「ふふふ。飛んで火に入る夏の虫、とは、このことですわ!! さあ、お死になさい!!」
バルタザールが巨大な火球を爆発させ、生徒たちごとビルを吹っ飛ばそうとした、そのとき。
「やっと着いたぞ。みなの者、これから援護を行うぞー!!」
ビルの外から、大きな機械音声がとどろいた。
と、同時に。
「とあああああー!!」
ものすごいかけ声とともに、コア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)の巨大な拳が、ビルの外壁に叩きこまれた。
ずしーん
ぐらぐらぐら
衝撃とともに、ビルが激しく揺れた。
「う、うわー!! おい、何しやがんだよ!!」
オクトパスマンは、外のコアに怒鳴った。
「ラブー、どこにいるのだ? いま助けよう!!! とああああああああ!!」
オクトパスマンの声など聞こえていないコアは、両手を組み合わせた拳で、渾身の一撃をビルに叩きつけた。
どごーん!!
その勢いはすさまじく、たちまちのうちに、ビルは崩壊した。
がらがらがら
瓦礫が崩れ、生徒たちの意識は闇に飲まれた。
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