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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 5

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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 5

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第8章 レストランでランチタイム

 ジャタの森で調査を行っていた者たちがケルツェドルフの村へ戻ると、村でで調べていた者たちはレストランの前で待っている。
「おかえりなさぁ〜い♪では、昼食をとりましょう〜」
 エリザベート校長のその言葉を合図代わりに、生徒たちは料理が並ぶテーブルへ向かった。
「いっぱい食べるわよ、セレアナ」
「鯛の煮付けと…、牛ロースもいいわね。おろし大根とか、わざびもあるのね?」
「夏だしさっぱりしてていいかも」
 メインの料理を皿へ山盛りに乗せた。
 もちろん、ライスもパンも大盛だ。
「ちょっと寿司があるわよ!あぶりトロと、えんがわも美味しそう」
「栄養が偏らないように、もすぐ酢も食べておかないとね」
 2人は次々とテーブルへ運ぶ。
 食べきれなさそうな量でもセレアナが残した料理は、全て恋人の胃袋の中にとく問題はない。
「この後、事件を解決するまで夕飯なんて食べられないからね。しっかり食べておかないと!」
「だからって、よくそんなに食べられるわね」
「後、20皿はかたいわよ」
「はぁ〜…。食べ過ぎて動けないとかはやめてよね」
 だがそうなったとしても、きっと彼女は這ってでも行くのだろう。
 セレアナは食欲魔の恋人の姿にため息をつく。
「そっちの納豆ちょうだい」
「じゃあサーモンの刺身もらうわね」
 互いに食べたいものを交換する。
「美羽たちは、村で何について調査してたの?」
 どんな方向から調査を行っていたのかと、セレンフィリティが話しかける。
「私たちはセイニィも行方不明になっているみたいだから、彼女のことを中心に調査してたわ。店の人の話では、早く魔法学校に立ち寄りたくって、夜中の森に入っていちゃったみたい」
「日が高いうちは、周がもよく見えると思いますが…。日が落ちてしまうと、歩きやすい道でも逃げるのは難しいでしょうね」
「セイニィ、どこに行っちゃったんだろう……」
 紅茶にガムシロップを入れてガラス棒でかき回しながら、今どこにいるのだろう…?と考えるように言う。
「私たちは森で調査してたんだけど。川で所持品を見つけたわ。人への憑依が目的じゃなさそうだし、遊び相手や遊ぶためとも思えないの。魔性の目的が不明すぎだわ…」
「他の方にも聞いてみないと、分からないことだらけですね…」
「足跡の痕跡を見る限り、攫われた人はかなり焦っていたと思うヨ」
 ディンスはセレアナの隣に座り、自分のトレイをテーブルに置く。
「無理やり連れて行かれたけど、村に戻ったりしていない…というか出来ないと思うヨ。たぶん闘争防止に、呪術をかけられちゃったのかもネ。グラキエスさん、所持品をサイコメトリで調べ終わったカナ?」
 刺身をしその葉で巻きつつ、痕跡のあった位置を思い出す。
「―…一応、サイコメトリで周りを調べながら進んでいたんだが。行方不明の者につながるようなことは、何も分からなかった。川で見つけた物は、情報交換前にサイコメトリで調べておく」
「うん、お願いネ」
「ここで話すのもなんですから、また後ほど話しましょうか。それに話してばかりいると、食べる時間も減ってしまいますからね」
「それもそうね」
 全員で話せるような特大のテーブルがあるわけでなく、食事の時間も大事だ。
 トゥーラの言葉にセレンフィリティは頷き、目の前の料理を食べ尽くすのに専念した。
「おねーちゃん。おにーちゃんからメールが来たよ」
 御神楽 陽太(みかぐら・ようた)がノーンの携帯に、メールを送ったらしくエリシアに見せる。
「はぁ〜、これはこれは…。またお熱いことですわね」
 メールには…。

 今日は妻が、冷たいパスタを作ってくれました。
 アスパラや小さく刻んだトマトなどが入っています。
 そちらはどうですか。
 まだ暑い日が続きますから、しっかり食べてお勉強、頑張ってください。

 …と書かれていた。



「2人は一緒に食べないの?」
 レストランから出ようとするクリストファーとクリスティーを、北都が呼び止めた。
「クリスティーがコテージのお風呂に入りたいみたいだから、先に済ませたんだ」
「そういうわけだから…ごめんね」
「ううん。お風呂でゆっくり休んでね」
 北都はかぶりを振り、レストランを出る2人を見送った。
「日本食なんて滅多に食べないから楽しみだね、リオン」
 いつも洋食は食べなれているため、北都たちはあまり食べる機会がない和食中心に食事をとる。
「そうですね。北都、ご飯にお魚が乗っているあれはなんですか?」
「お寿司っていうんだよ」
「へぇ〜…。凝った料理も美味しそうですが。こういうシンプルなものもいいですね」
 いくらの軍艦巻きや、ひらめの寿司を皿に乗せた。
「天ぷらもあるよ」
「スライスしたかぼちゃもありますね?」
「たくさんとると食べきれないから、いくつか半分ごしようね。こっちの前菜的なものも取らないとね」
 北都はシソの葉やエビなどの天ぷらを取り、お茶としょうゆベースの香物も選ぶ。
「このスープも和食ですか?」
「うん、お味噌汁だよ」
「いい香りですね。これをテーブルに置いてから取りに行きましょう」
 リオンたちは料理を盛り付けた皿をテーブルへ運ぶ。
「お味噌汁は温かい飲み物ですし、ドリンクは冷たいものにしませんか?」
「そうだね。冷たい緑茶があるみたいだから持っていこうか。あ、混ぜご飯があるよ。僕がとってくるから、他のよろしくね」
「はい、北都。―…えっと、お味噌汁と…緑茶でしたね?」
 頼まれたものを復唱しながら探す。
 北都のほうは竹の子と香草の混ぜご飯があるエリアへ向かった。
「―…お寿司があるから、少しでいいかな」
 少しだけ器によそい、リオンが待っているテーブルに行く。
「お待たせ、食べようか。いただきます」
「いただきます!…この細かいものは、何ですか?」
「それは竹の子だね」
「しゃきしゃきしていて美味しいですね」
「あっ、リオン。お寿司にしょうゆつけないで食べるの?」
「そういうものなんですか?」
「つけないで食べないで食べる人もいるけどね」
「しょうゆがなくても美味しいですよ」
 彼は小さくかぶりを振り、もぐもぐと食べる。
 緑茶に口をつけ、満足そうに息をついた。
「ちょっと苦いですけど、爽やかな風味ですね」
「本当?―…ん、美味しい」
「なくなっちゃいましたね。ちょっと取ってきます」
「僕のもお願い」
「分かりました」
 リオンはパートナーの分も持っていってあげようと、ドリンクコーナーへ向かった。
 緑茶の入ったボトルをグラスに注ぎトレイに乗せる。
 テーブルの方では、なかなか帰ってこないリオンを探しに行こうか、北都が悩んでいた。
「どうしようかな。探しに行っても、行き違いになったらいやだし…。あ、戻ってきた…。…お帰り」
「待たせちゃいましたか?どうぞ」
「ありがとう。遅かったね、どうしたの?」
「デザートを見つたので、どれがいいか迷ってしまいました」
 トレイの上には緑茶の他に、抹茶アイスとわらび餅が並べられていた。
 彼は飲み物とデザートを、北都のトレイに乗せた。
「調査の途中で食べたアイス、美味しかったですよね。でもあれは洋物でしたし…、和物だとどんな味か気になりまして、持って来ちゃいました」
「緑色のアイス…?結構苦いけど…美味しいかも」
「なんかプレートに、まっちゃって書いてありましたよ」
「これって抹茶なんだ…」
「他にもあずきと書いてあるものとか、果物もありましたね」
「リオン…、それがこれのトッピングじゃないの?」
「そ、そうだったんですか!?気づきませんでした…っ。でも、お餅がありますし…」
「ううん。別々に食べたほうがいいね」
 北都はプラスチックのスプーンを使い、わらび餅を食べた。
 しかしチャレンジャーなリオンは、餅にアイスを乗せて食べている。
「けっこう美味しいですよ!北都も試してみては?」
「う、うーん…?どうかな…」
 パートナーに新しい食べ方を勧められて試してみたが、微妙そうな顔をして首を傾げた。
「まだ料理が残ってるよ?デザートもいいけど、そっちを先に食べようね」
「あっ!そういえばそうでしたね」
 思い出したように言い、リオンは味噌汁に口をつけた。
「あれっ。2人いないけど、どうしたのかな?」
「クリスティーさんが早くお風呂に入りたいらしいので、クリストファーさんとコテージに行きましたよ」
「お風呂か…。ワタシはどうしようかな。斉民はどうする?」
「これから涼しくなってくるとはいえ、また汚れちゃうからやめとく。ていうか、男子と同じ部屋って何?」
 当然、女子部屋だと思っていたのだが、弥十郎たちと同じコテージに割り振られ、不服そうな顔をする。
「問題ないと思われたんじゃ?」
「は…?夜も男子と一緒とかありえないわ」
「誰も狙わないから大丈夫」
「着替えは?」
「風呂場があるよ」
「なんか、扱い酷くない?」
「えぇー、部屋が足りないだけじゃないかな。お風呂とかは問題がある場合は、別々に入ればいいだけだよ」
「寝室に問題大だと思わない!?」
 適当な態度に怒った彼女が怒鳴る。
「だからそんなことないって」
「じゃあ弥十郎は、床かソファーで寝なさいよ」
「絶対嫌だね♪」
「ふぅ〜ん…、寝てる間に蹴り落としてやるわ」
「もう怖いこと言わないでよ。そんなんだから黄色…ぎゃっ!」
 ぎゅむっと足を踏まれた弥十郎が声を上げた。
「弥十郎さんところも大変やね」
「う、うん?」
「オレなんてもう、ホントに彼女か!って思う時あるし」
「えー?彼女連れて泊りがけの合宿なんて、かなり羨ましいけど。リア充すぎて、なんなのこの人って思うよ」
「これでも…?」
 陣は怒ったように口元を歪め、弥十郎から自分の取り皿へ視線を移した。
 もの凄い勢いで皿の上にあったものが、リーズの口の中に消えていく。
「おまえっ、自分で取りに行けや」
「行くよ。陣くんの皿の料理がなくなったらね」
 ボクが取った料理はボクのもの、陣くんが取った料理はボクのもの、という態度でプイッとそっぽを向く。
「取りに行くのは、陣の役目じゃな」
「ジュディまで…。オレって何々や?」
「一生手放せない玩具兼、彼氏だよ。確認するまでもないじゃない?」
「待てや。その順番逆…っつーか、玩具やないし!」
「このトマトの冷やしパスタおいしー」
「話をそらすなってーの!」
「いいねぇ、いつでもじゃれあえてさ」
 とても微笑ましい光景だと思い、弥十郎は羨ましそうに言う。
 だが陣にとっては満足に食事が取れず、微笑ましさの欠片も無いのだ。
「ははぁ、この村ではバナナをこう料理するのかぁ」
 弥十郎の視線はリア充の陣からすぐに料理へ注がれた。
 バナナの天ぷらをモッツァレラチーズや、香草を乗せたパスタを味わう。
「むむ、見たことの無い食材だねぇ。何か白くてプニプニしてるねぇ」
 タピオカよりも大きく、マシュマロような食感のデザートを食べる。
「おお、この和食は…いい仕事していますねぇ」
 ひらめのお吸い物は薄すぎず、濃すぎないちょうどよい味だ。
「それでいて、魚の臭みもないねぇ」
「オレは弥十郎さんのほうが充実しすぎている気がすんだけど。気のせいなんか?」
「ん?気のせい♪」
 いじられっぱなしで横から料理を奪われていく陣に、ニコッと邪気の無い笑顔を向けた。
「ずいぶんと賑やかしいな…」
 静かに食事を取っている樹が、小さな声で呟いた。
「―…食べ物を奪い合う輩よりは、マシだがなっ」
 パートナーの2人が料理を取り合っている声に、樹は割り箸をバキッと折る。
「えぇえいっ、食事くらい大人しく食えないのか!」
 ゴツンッと2人の頭部にコブを作ってやる。
「だって僕の皿から取ったんだよ」
「間違えたって、言ったじゃないか。卵焼きくらいで小さいこと言うなよ、親父」
「ステーキも食べちゃったよね?」
「んなこと言ったら、親父だって餡蜜取ったじゃないか」
「いい加減にしろ!お前らは子供かっ」
「うぅ…っ」
「超いってぇえー…」
 鉄拳を何度もくらい、頭に二段重ねのソフトクリームたんこぶを作られ、痛む頭を抱えた。



「皆さん、ばらばらの席に座っていますね?」
 この機会にいろんな人と交流しておこうと考えたミリィは、どのテーブルに行こうか迷う。
「こっちおいでよー!」
「では、お邪魔させていただきますわ」
 コレットに手招きされ、ミリィはそこのテーブルに決めた。
「弥十郎さんは料理を食べながら分析しているのかな?」
 涼介は隣のテーブルにいる弥十郎を見た。
「こんにちは。いつでも料理研究の心は持っていないとね」
「新しいレシピでも考えているということだろうか?」
「なんだか不思議な食材もあるし、なんだか言葉に出ちゃうんだよね。新しいレシピね…それもいいかも」
 もっと未知の食材にチャレンジするのもよいかと、食べながら真面目に考える。
「もしも新作が完成したら試食させてもらえるかな?」
「うん、いいよ♪」
「さすがお父様、料理の世界でも切磋琢磨しているのですわね」
「かなりの確立で、料理の舞台で顔を合わせているな」
 料理という名のつく場で、顔を見ないことはないような2人だ。
「弥十郎さんはいつでもどんな時でも、料理を作っているそうだな?」
「お腹を空かせた人がいるなら、どこでもっていう限りじゃないけどね」
 稀に手段の一つとして使うこともある。
 無論、傷つける目的でなく、アルコールなどで速やかに相手を眠らせたりするためだ。
 そのうち安眠料理などというあだながつきそうだ。
「不可視でも物質質量のあるものを食べられるなら、ワタシが作った料理も食べられる…ってことだよね」
「うわ…、なんかとてつもないことを考えてそう…」
「いやー、相手が相手だからね。手段とするのは難しいよ、斉民」
「そういえばダリルって、そういう場に出たことあるっけ?」
 ルカルカはスプーンを口元にあて、料理の勝負事に出たことがあっただろうかと記憶を辿る。
「というか連れて行かないだろ?」
「あれー、そうだっけ。あ!ルカ、試食してたりするから、そうかも♪」
「お料理の話ですか?」
 興味津々に歌菜も会話に参加する。
「えぇ、料理勝負とかについてかな?」
「俺も現場で作っているだろ。それも、かなりの頻度な」
「んん〜?そう…だったかな?」
「スィーツ類ならしょっちゅうだな」
「ありゃ、そうだっけ…?」
 ダリルの刺すような視線から逃れようと目を泳がせた。
「ぅー…。ダリルさんのスィーツって、とても美味しいですよね…。私ももっと頑張らなきゃ!」
「作ったら俺が試食してやるよ」
「お願いね♪羽純くん」
「ここの辺って、よく料理作る人が集まってない?」
 コレットは周りのメンツの顔を見ながら言う。
「なんか今にも何か始まりそうな感じだよな…」
「今はそんな時間ないよ、オヤブン。でも、ひとだんらくしたら、パーティーとかやるのかな?」
「合宿を終えてからじゃないと、何とも言えないな。それが終わったら校長が、発作的に言い出すかもしれないが」
 美味しい物には目がない校長ならありえそうだ。
「りょ、料理…ですか?実は…後で皆さんと食べようと思って、作ってきたものがあるんですが…っ」
 結和は遠慮がちに小さな声音で言い、バスケットを開く。
 その隙間からおぞましい効果音が漏れ出した。
「お…お父様。料理とは奥が深いものなのですわね」
「せっかく作ってきてくれたのだから、情報交換中にいただこう」
「すげぇな…」
 表情1つ崩すことなく言う涼介に、カルキノスが勇者を発見したかのように言う。
「ここに食べる専門もいるけどな」
「ん?どこどこ!?」
 エースに視線を向けられているのを知らず、誰のことを言っているのかクマラは周囲を見回した。
「ねー誰のこと?」
「はははっ…さぁな」
「もしかしてオイラのこと?」
「正解」
「う、言い返せないにゅん」
 “食べる専門”な事実を否定することが出来なく、しゅん…としながらも目の前の皿を空っぽにする。



 昼食を通して生徒たちが交流する中、エリザベートと明日香は1つのテーブルで甘いひとときを過ごす。
「エリザベートちゃん、お口をあけてください♪」
「はい〜♪明日香に食べさせてもらうと、美味しさが倍になった気がしますぅ〜」
「フフフッ、甘えん坊さんですね」
 いくつになっても甘えようとするエリザベートを可愛がり、世話好きの姉のように食べさせる。
「そういえば、今は10歳でしたか?」
「む〜、そうなんですよねぇ。私は、ずーっと子供のまま…。こうしていたいですぅ〜」
 永遠と明日香に甘え続ける気か、彼女の膝に乗る。
「私も小さくって可愛いエリザベートちゃんでいてほしいです」
「流れ星に、子供のままでいられますように〜って、お願いしてるんですけどぉ〜。なかなかお願いを叶えてくれないんですぅ〜」
「お星様にお願いするなんて可愛いですね♪」
 叶うといいな、と思いつつ少女の口に料理を運んだ。
「あらあら、料理がなくなってしまいましたね。次は何を食べますか?」
「デザート類が食べたいですぅ」
「いけません。いくら小さいままがいいとはいえ、栄養はちゃんと取りましょうね」
「はぁ〜い…。では、牛肉のしゃぶしゃぶがいいですぅ〜」
「分かりました♪」
 明日香はエリザベートを椅子に座らせ、トレイを持って和食エリアへ行く。
「えっと…、ありました。お野菜もたくさん入れておきましょう」
 お肉だけでなくバランスよく食べさせるため、器に加えてしょうゆをかける。
「飲み物がそろそろなくなってしまいそうでしたから。冷たいお茶を持っていきましょうか♪」
 自分の分もよそうと、エリザベートのところへ戻る。
「お待たせしました。お膝へどうぞ」
「はいですぅ〜」
「―…はい、あ〜ん♪」
 箸で野菜を牛肉で包みこみ、甘えん坊な少女の口へ運ぶ。
「明日香、のどが渇いちゃいました〜」
「お茶ですね?」
 グラスを少女の口に近づけ、少し傾けて飲ませた。
 さらに口元をハンカチで拭いてあげる甘やかしぶりだ。
「全然食べてませんね、明日香」
「私は後でもいいですよ」
「それでは一緒に食べてることにならないですよぉ〜?明日香には私が食べさせてあげますぅ〜」
「エリザベートちゃんがですか?」
「―…私じゃ不満ですかぁ〜?」
 首を傾げてどうしようか悩んでいる明日香に、いじわるっぽく言う。
「それじゃあ、お願いしちゃいます♪」
「明日香、お口をあけてください〜」
「は〜い、エリザベートちゃん」
 いつものお返しのつもりなのだろう。
 もう伴侶なのだから遠慮することはないと思い直し、人目を気にせず食べさせてもらった。
「美味しいです♪エリゼベートちゃん、この後お風呂に入りませんか。えっと、私とお部屋は違うんでしたっけ?」
「予算の都合で同じ部屋ですぅ〜。もちろん、他の女の子も一緒ですよぉ〜」
「ではご飯が終わったら、一緒に入りましょう♪」
「その前にデザートを食べたいですねぇ…。クリーム餡蜜と、抹茶ケーキが食べたいですぅ〜」
「はい、今取ってきてあげますね♪」
 明日香はうきうき気分でデザートエリアへ駆けていった。