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渚の女王、雪女郎ちゃん

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渚の女王、雪女郎ちゃん
渚の女王、雪女郎ちゃん 渚の女王、雪女郎ちゃん

リアクション

 エピローグ


 夕方。
 凍らされていた人たちも無事に解放され、浜辺にあれだけいた男たちもまるで忽然と姿を消してしまったかのように、静かで自然な景色が広がっていた。
 解凍作業中になぜ来る人来る人を片っ端から凍らせたのかと雪女郎に問いただしたら、『今からりあじゅうって怖い人たちが君から海を取り上げに来るから、やっつけて』と言われたらしい。要するに親衛隊の中の悪質なやつらによるリア充撲滅作戦だったらしい。
 ある意味力を悪用された雪女郎も被害者だったのかもしれないが、そんなことをしてはだめだ、正しい知識をつけろと和輝や無限にこってりと怒られたらしい。


「あれは、必要悪だったのかも知れないね。そうすることで雪女郎ちゃんにやってはいけないって理解させることが出来たんだから」

「でも別にそういう方法をとらなくてもよかっと思うんだが……」

 椅子に座ってぼんやりと海を見つめる和輝に刀村はお茶を入れながら語りかけた。

「みんな不器用なんだよ、きっと」


 岩場に一人でぽつんと座って雪女郎は海を見つめる。
 思えばここに来てからはいつも回りに誰かがいた。
 寂しくないように、つまらなくないようにと声をかけて、熱くないように、具合が悪くならないようにとみんな心配してくれていた。
 一人で見る海とはこんなに寂しく、胸を締め付けるものなのだろうか。
 つんと鼻の奥が熱くなって視界がじんわりとぼやける。
 楽しかった時間は、もう終わりなのだ。
 こつんと足元の小石を蹴って、海に転がり落ちていく様を見つめる。
 波の音にかき消され、ぽちゃりと沈む音は聞こえなかった。
 その代わりに雪女郎を呼ぶ声が遠くから聞こえてくる。


「さぁさぁ、雪女郎ちゃんはここに座ってね」

 先ほどまでの空気もどこへやら、刀村は再び笑顔で雪女郎にお茶の準備を始める。

「ちょっとちょっと、今から皆でバーベキューパーティーなんだから、お茶やらデザートは食後にしてよね!」

 エリスが文句を言いながらアスカたちとともにテーブルのセッティングを開始していた。


 厨房では桐条がマーガレットの作った料理の味見をしている最中だった。

「ど、どうよ。どうせ桐条さんが作ったものに比べたら全然美味しくないでしょうけどっ」

 味見用の小皿をことりとおいて口を拭く。

「うむ。確かに」
「ほらね、どうせ――」
「今朝に比べたら段違いでまともになっておる。やれば出来るではないか」

 滅多にその口からは出てこない褒め言葉にマーガレットは顔を真っ赤にして文句を言う。

「まったく、素直じゃないですねー」

 食器を並べながら厨房から聞こえてくる声にリースはニコニコと微笑むのだった。


「結局あんまり遊べなかったなー……あで!」
「そもそも働きに来てるんでしょうが。文句言わないの」

 料理を運びながらぶーぶーと口を尖らせている吹雪のおでこをコルセアはぺちんと叩いた。

「せっかく浜辺に罠仕掛けたのにかかったのほとんど親衛隊のやつらですし」
「あんた浜辺の出口付近にまで仕掛けてたでしょ? 凍ってたリア充含め、帰り際のやつら大量に引っかかってたわよ」
「やりましたね!」
「アホか!」

 再びおでこに衝撃が与えられるまでにそう時間はかからなかった。


「兄貴、よかった無事だったんだね」

 海の家でようやく今になって再開できたリカインとサンドラ、アレックス。
 話を聞くとアレックスは本当に親衛隊の中に紛れていたらしい。
 そう、ただ紛れ込んでいただけ、だったのだが。

「何はともあれ、さ、パーティーを始めましょ」

 笑顔でリカインがグラスを皆に渡して回る。未成年もいるため、とりあえず乾杯はジュースで、だ。

「みんな行き渡ったかな? それじゃあ、カンパーイ!」