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リア充爆発しろ! ~サマー・テロのお知らせ~

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リア充爆発しろ! ~サマー・テロのお知らせ~

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◆その8 お祭り第二幕始まるよ

「肝試しって、脅かしてお菓子もらうイベントだったのね」
 ルカルカからもらった綿菓子をなめながら持ち場に戻ってきたルシアは面白そうに微笑んだ。
「お菓子をくれないと、脅かしちゃうぞ、しゃー!」
「それは、ハロウィンだろ。誰だよ、彼女におかしな知識をつけたのは」
 肝試しの様子を見に来ていた神条 和麻(しんじょう・かずま)は、猫耳に白浴衣のルシアを見てため息をついた。お化けなのか、これ? 可愛いコスプレにしか見えないのだが。まんま、季節外れのハロウィンみたいだった。
「で、お菓子もらった人に、ちゃんとお礼を言ったか?」
「あ……」
 ルシアは無言で帰ってきたことを思い出した。今度あったら何かお返しをしよう……。
「まあいいさ。ルシアが元気で無事なら、俺はこれ以上嬉しいことはねえよ」
 和麻は言って、改めてルシアを見た。彼女はお菓子を食べ終わったあと、地面にハンカチを敷いて座り込み、何やらごそごそやり始めた。
「人魂造るらしいのよ。私もお手伝いしているの」
「……ふーん、人魂ね。一応真面目にやってるんだな。……なんなら俺も造るの手伝ってやるよ。お前を放っておけないからさ」
 和麻は任せておけとばかりに材料を手に取り……かけて。
「ちょ、お前……ビール瓶に食用油、ガソリンって……なんだこれ?」
「人魂よ」
「こりゃ、火炎瓶だ!」
「よく燃えるらしいわ」
「燃えすぎだ! お前……、どこでそんな話し聞いてきたんだ!?」
 和麻は慌ててルシアの手から材料をひったくると、後ろに隠してしまった。ルシアはきょとんとした表情で言う。
「肝試しで脅かし役するって聞いたから……。みんなが逃げ惑うような怖くする方法ないかしら、って言ったら男子が教えてくれたの」
「怖いし逃げ惑うわ、別の意味でな! ルシアに変なこと吹き込んだ男子、あとで殺す!」
 この上ない不安を覚えた和麻は、釈然としない表情のルシアの肩に両腕を乗せた。かがみこむ姿勢で正面から顔を近づけ、目を覗き込みながら真剣な口調で言う。
「いいか、ルシア。この世に男子が数多くいようとも、信用していいのは俺だけだ」
「私、あなたのこと疑ったことないけど?」
「信じすぎなんだよ。お前は危なっかしいくらいに純粋だ。だが、誰もがそうじゃない。残念ながら、この世には悪が存在するし嘘がはびこっている。俺は……、そんな穢れからお前を守りたいと思っているんだ。ずっとそのままのルシアでいてほしいから、傍についていてあげたいんだよ。だから、俺だけを信じてくれ……」
「……」
 ルシアはじっと和麻を見つめていた。近い距離、隔てるものは何もない。
 彼女はゆっくりと和麻の顔に真っ白な手を伸ばす。そろりと、慈しむように優しく、ルシアは和麻の頬を撫でた。
「……ゴミ、ついていたわよ」
 ルシアは、和麻の頬の辺りについていたらしい小さなゴミを取り除いてニッコリと微笑んだ。
「それで、何の話だっけ……?」
「……お前、ちっとも話聞いていなかったな……」
 ああ、そうだろうとも。こんなことだろうと思ったよ、と和麻は引きつり笑いを浮かべた。
「まあとにかく、だ。危ないまねはやめr」
 半ば脱力しながら立ち上がろうとした和麻は、足元に置いてあった、今ルシアから取り上げたばかりの瓶につまづいて体勢を崩した。
「うをっ!?」
 座り込んでいたルシアに覆いかぶさるように、一緒に転倒する。身体が密着し、真っ白な浴衣に包まれた胸の弾力が和麻にダイレクトに伝わってくる。
「す、すまねぇ……。悪気はなかったんだ。すぐのくからさ……」
「待って……」
 ルシアは押し倒されたままの姿勢で、和麻が動くのを制止する。とても恥ずかしそうに、横に視線をそらせながら。
「そのまま……。もう少しこうしていて。あなたと、私のために……」
「る、ルシア……?」
「私、あなたに言わなければならないことがあったの。とても……大切なことよ」
「……な、なんだい?」
「私まで、身体が熱くなってくるの。あなたのことを考えると」
 トクン、トクン……ルシアの鼓動が伝わってくる。甘い吐息と体温が、和麻の官能をかき立てる。これは……やばい。
 喉の奥から搾り出すような懇願の声がルシアの口から漏れ出でる。
「捨てないで……お願い……」
「そ、そそそんなことするはずないだろ! ずっと守るって言ったし、そもそもルシアと俺は付き合ってすら」
「……!」
 ルシアは、もうだめっとばかりに両手で顔を覆い身を震わせた。
「ちょ、ちょっと、どうしたんだよ、ルシア!? ……って、え……?」
 ふと……、和麻は自分のかかと辺りに熱気を感じて視線を移す。
「……え?」
 もう一度声を上げた彼は目を疑った。
 ルシアから没収した油が瓶にぶつかった衝撃でこぼれ出ていて、それに火がついている。ポイ捨てされたタバコから引火したのだ。
 火はじょじょに大きくなり、和麻のズボンの裾に燃え移った。
「えええええええっっ! あ、熱つつつつつっっ!」
 慌てて立ち上がる和麻。
「ああ……」
 状況を一部始終目撃していたルシアが半身を起こし、絶望的な声を上げた。
「捨てないで、って言ったのに」
「森の中で隠れてタバコ吸っていた奴、捕まえましたよ」
 不良の襟首を捕まえてリファニーが戻ってくる。そいつをボコボコにしばき倒してから、彼女は地面に落ちた吸殻を拾い上げる。
「あまつさえ、残り火のついた吸殻をポイ捨てするなんて。テロリストよりたちが悪いです」
「もっと早く伝えていたらよかったわ。油が漏れてるって……とても大切なことだったのに……」
 ズボンについた火を消そうとバタバタ暴れる和麻を申し訳なさそうに見ながら、ルシアは言った。ああ、そうしているうちに、後ろから油の染み込んだ上着の裾に火が燃え移って……。
「確かに彼のことを考えると自分まで身体が熱くなってきますね」
 リファニーはぽつりと言う。
「そうだ、私……急いで火を消さないと!」
 ルシアは、立ち上がると地面に広がる炎が延焼しないように消火器をもってくる。
「わあ、面白〜い!」
 ピンを抜くと上に向けて発射するルシア。周辺は白い粉まみれだ。
 それはそれとして……、とリファニーはとうとう服を全部脱ぎ始めた和麻を半眼で見た。
「やったー、消えたぜ!」
 ぱんつ一枚の姿で服をばさばさ叩いて火を消していた彼は、フリーダムとばかりに万歳した。
「なにをやってるんですか、あなたはっ……!?」
「ぎゃあああああっっ!!」
 リファニーにボコボコにされた和麻は、裸のまま森の中へ捨てられてしまった……。