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リア充爆発しろ! ~サマー・テロのお知らせ~

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リア充爆発しろ! ~サマー・テロのお知らせ~

リアクション

 その頃……。
「なによこのヌルゲーは。肝試しになってないじゃない。軍人をなめるなぁ!」
 シャンバラ教導団からお祭り見物にやってきていたセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)は、パートナーで恋人のセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)の手を引いて、ずんずんと森の奥へと入ってきていた。
 濃紺の生地に花火をあしらった柄の浴衣を着ているセレンフィリティと、白い生地に鮮やかな紫陽花の柄が入った清楚な浴衣を着たセレアナ。二人は肝試しの前のお祭り見物のときから、ずっと手を繋いでいるのだった。
 一通りお祭りを楽しんだハイテンションのまま肝試しに突入し、全然怖くないお化けに文句を言いながら、彼女たちは崩れかかった廃校舎へと辿り着いた。
「あら、こんばんは。後から来たのにずいぶんと早いのですね」
 廃校舎の入り口付近で、男といちゃついていたのは、シャンバラ教導団のアルビダ・シルフィング(あるびだ・しるふぃんぐ)だった。彼女もリブロのパートナーなのだが、エーリカとも違い、また別口で肝試しにやってきていたのだ。もちろん巨乳である。
「あんた彼氏いたっけ?」
 セレンフィリティはアルビダが見慣れない男と仲良くしているのを見て聞いてみる。
 その男は、色黒で筋肉質なスポーツマンタイプだった。あの、テロリストたちの一員、黒い三連星の“(自称)まっしゅ”である。
「ふふ……ナンパされたのですよ。あたしもまだ満更じゃないってことですね」
「い、いやあ……。俺がこんな超美人と付き合えるなんて、生きてて良かった。諦めずに声かけてみるもんだなぁ」
“(自称)まっしゅ”はマジ泣きだった。
「そう、よかったわね。仲良くね」
 自分の恋人以外に特に興味のないセレンフィリティは、最低限の声だけかけると廃校舎の奥を進んでいった。
 むに、むに。もみもみ。
 その後ろからアルビダと“(自称)まっしゅ”のカップルがついてくる。“(自称)まっしゅ”はアルビダの胸揉みまくりだった。それに対して、“(自称)まっしゅ”に対しても腕を組んでやっているアルビダ。
 むに、むに。もみもみ。
「あんた、恋人の胸揉んであげたことありますか?」 
 不意に、アルビダはセレンフィリティに聞いてくる。好奇のニヤニヤ笑いだ。
「あるに決まってるでしょ。もう、ちちくりまくりよ。ねえセレアナ」
 得意顔でいうセレンフィリティにセレアナは呆れたように言う。
「そういう質問には答えなくてもいいと思うんだけど」
「ふ〜ん?」
 やっぱりニヤニヤ顔のアルビダ。なんか、疑わしいなぁとその目は言っていた。
 セレンフィリティはフンと鼻を鳴らす。
「な、なによ。私たちの愛は本物なんだから。そんなもので決まらないのよ」
 もみもみもみもみ。
「だいたいあんたたちこそ、それで満足なの? 本当に付き合う気があるなら、もっと深いところで交わらないと」
 もみもみもみもみもみ。
「私とセレアナは、体の隅々どころか心の隅々まで知っているのよ。あんたたちと年季が違うの」
 もみもみもみもみもみもみ。
「あー、もううるさいわね。いい加減にしなさいよ!」
 さすがにウザくなってセレンフィリティは振り返る。……と。
「え?」
 彼女の背後にずらりと並ぶ人の影。
 ニヤニヤ笑いを浮かべながら、アルビダと“(自称)まっしゅ”、それに十数人の男たちが墨と紙を持って身構えている。その陰に隠れるように毒島 大佐(ぶすじま・たいさ)が身を潜めているのも忘れてはいけない。
「ごめんなさいね。“(自称)まっしゅ”ってば、テロリストなんですって。あたしもついて行っちゃうことにしました。彼のお手伝いしますよ」
「な、なんで……?」
「なんでって……、女ってそういうもんでしょ。男のいいところ見てみたいものなのですよ」
 アルビダは両手を頬に当て、ぽっと乙女チックな仕草を見せた。が、すぐさま表情を引き締め直して……。
「さあ……、みんな行きましょう!」
 その声にテロリストたちが一斉に飛び掛ってきた。
「リア充爆発しろ!」
「くっ……」
 セレンフィリティはセレアナは多勢に無勢、羽交い絞めにされ胸の前を開かれる。
 二人揃って。
 ぷるりと形のいい胸が弾力に揺れた。
 ぺたり、もみもみ。……墨のついた紙が押し当てられ、鮮明な胸の像がパイ拓となって残される。
「リア充って死んだ方がいいですよ」
 テロリストの一人として活動していた初那 蠡(ういな・にな)が、まだ取り押さえられているセレンフィリティとセレアナの顔にラクガキしていった。
 彼女はさっきから、パイ拓に使う墨を節約して、余った墨で夜道のリア充カップルの顔に落書きして回っていたのだ。
 猫ヒゲや泥棒ヒゲを書いたり、眉毛をつなげたり、鼻を真っ黒に塗りつぶしてやったり、目の周りに○を書いてパンダにしてやったり、オデコに悪口を書いたり……と特に気合入れてきれいにお化粧した顔へのダメージは、墨だらけになった胸元と相まって相当なものになっていた。
 二人の美しく揃ったパイ拓を手に入れると、テロリストたちは大満足で帰っていった。
「……」
「……」
 呆然と見送るセレンフィリティとセレアナ。だが、すぐに二人は吹きだした。
「ぷっ……なによ、ラクガキされた顔も可愛いじゃない、セレアナ」
「リア充だって……! 恋人同士に見えるって、私たち。……当然でしょ!」
 パイ拓取られたのに。なんだかほくほくしながら二人は、更に奥へと進んでいった。
(……あれっ、相当のダメージを与えたはずなのに、「落書きされた顔もかわいい」とか口説かれて、かえって絆が深まってるんですが……)
 セレンフィリティとセレアナを物陰からじっとりした目つきで見送る蠡。
「……ちくしょうこれだからリア充って奴は……爆発してしまえばいいのに……」


「……どうしてあんただけパイ拓取らなかったんですか」
 さっきの場所で、アルビダはその場に残ったままだった“(自称)まっしゅ”に聞く。パイ拓取りの中心的人物のはずの彼が、一人だけセレンフィリティたちの拓をとらなかったのだ。
「だ、だって俺もう、リア充だから……!」
“(自称)まっしゅ”は真顔で言う。
「俺には彼女ができた。それがお前だ。俺は幸せだ。もうリア充狩りなんかやめる! その代わり今度は俺たちが狙われる番になってしまった。一緒に逃げよう!」
「プッ……」
 アルビダは我慢しきれずに噴出した。
「アハハハハ、ハハハハハハハ……ちょっ、マジ勘弁してください。あたしを笑わせ殺す気ですかハハハハハ……、く、苦しい……息ができないハハハハ……」
「?」
「全部嘘ですよ」
 アルビダは笑いを止めて言った。
「バカですか、バカなのですかー? 暇だったから胸揉ませてあげただけですけど、何か? ですけど、まあこれであんたがテロリストだってことはわかりましたから。後は、警備に連絡して一網打尽ですよ」
「な……、そ、そんなばかな……。俺たちの愛は偽りだったとでも言うのか……」
“(自称)まっしゅ”はその場にがっくりと跪く。
「愛なんてありません。全てアンタの勘違い」
 アルビダは腕を組み一人でうんと頷いた。
「あんた、女子にキモいって言われたことあるでしょ? それが全ての答えですよ」
 せめてもの餞別に、彼女は自分で胸をぷるるんと開き墨のついた紙を押し当てる。
「さよなら、非リア。次に生まれ変わっても、話しかけてこないで下さいね」
 自分のパイ拓を宙に放り上げたアルビダは、機関銃を構える。
 そして、戻ってきたテロリストたちを一掃したのだった。
 こうして“(自称)まっしゅ”も祭りの中無念に消えていった。アルビダのパイ拓だけを餞別に……。
 だが、それだけで終わらなかった。
「アルビダもお疲れ様。もう帰っていいよ」
「……!」
 疾風のごとく勢いで人影が走り抜けていた。何が起こったかわからずにアルビダは唖然とする。
 アルビダがテロリストたちに気を取られているうちに、大佐は小さな刃物まで使って、彼女がはいていた漆黒のホットパンツと真紅のTバックを回収し終わっていた。パンツプロフェッショナルは伊達ではないのだ。
「あ、あんたは……!」
「……」
 大佐は、ニッと笑みを浮かべると姿を消した。


「さて、次のターゲットは……」
 蠡は持ち場から離れると、次のリア充を待ち受けた。今度こそ屈辱に撃ち震える姿を目に焼き付けることができるだろう。ざまぁ、リア充、いい気味だ。
「……?」
 ふと、彼女は人の気配を感じて振り返る。そこにいたのは大佐だった。
 それは一瞬の出来事だった。
「え?」
 ふわり、と蠡のスカートがめくれ上がる。パンツの鉄人である大佐は、蠡のはいていたパンツをするりと彼女の股から取り外す。それはもういとも簡単に。
「え?」
 スースーする下半身。大佐は蠡がはいていたパンツを手にしたまま、一つにこりと笑って……姿を消した。
「え?」
 蠡は、何が起こったのかわからないまま、しばらくそうして佇んでいた。