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リア充爆発しろ! ~サマー・テロのお知らせ~

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リア充爆発しろ! ~サマー・テロのお知らせ~

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◆その11 おっぱい成分不足中

「来るんじゃなかったかな」
 大切なパートナーと共にお祭り見物に来ていた佐野 和輝(さの・かずき)は、騒々しい様子にため息をつく。
 まあ、噂には聞いていた。おかしな連中がおかしなことを計画していると。それでも夏祭りに来たのは二人だけの時間が欲しかったからだ。
「本当にやってるみたいよ。嫌な予感がするわ」
【ディテクトエビル】で探知していたパートナーのアニス・パラス(あにす・ぱらす)が不安げな様子で和輝を見る。
「帰ろう、和輝、早くココから離れそう!」
 アニスがせかしてくる。相当まずい状況だろう。
「そうだな。早々に立ち去った方がよさそうだ」
 かなりの数の殺気に、和輝は足早に立ち去ろうとする。
「!?」
 不意に、木の上から影から茂みから、二十人以上の連中が姿を現す。噂のパイ拓テロリストらしいが、なんだこの人数……? 
 彼は呆気に取られている間に、羽交い絞めにされてしまった。いくらなんでも多勢に無勢だ。
「リア充爆発しろ!」
「キャー!」
 同じく羽交い絞めにされていたアニスが服の前を開かれ墨のついた紙を押し当てられる。
 むにゅり。
「……っ!?」
 アニスの胸は平均的なサイズだった。綺麗に陰影のついたパイ拓が出来上がる。
「……」
 パイ拓テロリストたちは、目的の物は手に入れたといっせいに退却しようとする。
「ふぇ……ふえぇ……ふぇええええええぇん!! か、和輝にも触られたことなかったのに〜!!」 
 あまりの出来事に、地面にぺたりと座り込んだアニスが泣き始めた。
 その時。
 和輝の中で何がが切れたきがした。
「ああ、そうか」
 くくく、と笑う。だがその表情は一瞬で激怒に変わった。
「お前らは痛い目にあいたいんだな? 死にたいんだな? 良いだろう! その願いを叶えてやる!!」
「……!」
 それまで穏やかだった和輝の豹変に、パイ拓テロリストは本能的危機を察知し身構える。
「アニス、隠れてろ」
「……うん」
「テメェらはオレを怒らせた!」
 ドーン! と和輝の闘気が爆発的に膨れあがった。ビリビリと空気が震える。それと呼応するように、敵が動く。
「……」 
 和輝は、次の瞬間、無言で跳んだ。
 それは、瞬く間の出来事だった。
 和輝は【超人的肉体】化し【ゴッドスピード】で、高速移動してハンター共を駆逐していく。両手の銃による銃撃と、【レガース】を装備し蟲の力で筋力強化した蹴り技。また、【荒野の棺桶】による面制圧射撃。
 ドン、ドドドドドドッッ!
 攻撃音のみが響き渡る。
「ぐあああああっっ!」
 敵は、まともにくらい吹っ飛んだ。
「どうした、爆発させるんじゃなかったのか?」
 ゆらり、と和輝はテロリストに迫る。
「どうしたハンター共、調子はどうだ? 満身創痍だな」
「ぐおおおおお!」
 敵は捨て身で攻撃してくる。それをひょいひょいとかわして。
「何だ、その攻撃は? 今にも倒れそうだな。どうするんだ? おまえはクズか? それとも人間か?」
 ドオン! と和輝はもう一度攻撃を放つ。
「ぐはぁぁぁぁっっ!」
「さあどうした? まだ足が2本痺れただけだろう。かかってこい! もっと仲間を出せ! 体を強化させろ! 足を治癒して立ち上がれ! 墨や紙を拾って反撃しろ!」 
 バリバリバリ……! と更に攻撃を加えながら、彼はヒャッハーとばかりに哄笑する。気が狂ったわけではない。冷静、いたって冷静なまま怒りに燃えている。
「ハリー! ハリー! ハリー! ハリー! ハリー! ハリー!!」
 魂の片割れを辱められた罪は、こんな程度じゃ許されない。彼は、次から次へと見つけ次第敵を葬り去っていく。
 そんな彼の姿を見ながら、隠れていたアニスは立ち直っていた。落ち着いてきたら、何かムカムカしてきた。
「む〜っ、ハンター達は絶対に許さない!!」
 お返しくらいはしてやらないとね。
 それに応じて、敵も数を増やしてくる。
 アニスは、攻撃を受けないよう【ドッペルゴースト】を身代わりとして、【神降ろし】による攻撃力増加を経ての【稲妻の札】による範囲攻撃だ。逃げようとする相手には【神威の矢】で追撃だ。一人たりとも逃がすつもりはなかった。
「さあ夜はこれからだ!! お楽しみはこれからだ!!」
 和輝は攻撃の手を休めない。彼の通った後は死屍累々だ。
「どうする、どうするんだ? リア充はここにいるぞ!! ハンター共」
 パイ拓ハンターを含むリア充爆発しろメンバーの殲滅が目的だ。まだまだ手は休めない。
「倒すんだろ? 勝機はいくらだ? 千に1つか万に一つか、億か、兆か、それとも京か!」
 と……、そんな和輝のレッッパーティーに水をさす者がいた。
「騒がしいやつだな。1/1だろ、常識的に考えて」
 このままでは、パイ拓テロリストが全滅してしまう、と登場したのが『最悪』と褒め称えられる瀬山 裕輝(せやま・ひろき)だった。
 今夜の彼は素顔ではない。マントに仮面をつけた謎の人物、『ジェラシード仮面』。果たして彼は何者か……! ってすでにバレてるし。
「ちょっとだけ時間稼いでやるから、全力ダッシュだ。大して働いていないだろお前たち」
 ジェラシード仮面は、まだ生き残っているパイ拓テロリストたちに言う。普段は関西弁風の口調だが、ジェラシード仮面は標準語だった。
「逃がすか!」
「【神速】+【自在】!」
 拳聖の秘奥義スキルが『ジェラシード仮面』から放たれる。これはさすがに効いた。完全に油断していた和輝とアニスは吹っ飛ぶ。
「さらにはこうだ!」
 ダメージを受けた和輝たちが体勢を立て直すより先に、『ジェラシード仮面』は目いっぱいの墨をぶちまける。
「まちなさい!」
 アニスが叫ぶも、そういわれて待つものはいない。動ける者はみな、いなくなっていた。
「……もういい」
 和輝はいつもの青年に戻っていた。よく考えたらこんなところで時間を潰すより、二人きりの時間を大切にした方がいい。そのために祭りに来たのだから。
「帰ろう」
「……うん」
 二人は、仲良く岐路に着いた。



「悔しいだろ、お前たち」
 少し離れたところで『ジェラシード仮面』は腕を組んだ仁王立ちで見渡した。
 今夜、大いなる野望を持って集まってきていたフリーテロリストたちは、もうほとんどいなくなってしまっていた。残っている連中も、士気下がりまくりだった。
 そんな彼らに、『ジェラシード仮面』は語りかける。
「『何故アイツばかり』『何故、自分は違う』『何故、平等ではない』……諸君等の中にこう思った者は……決して、少なくは無いだろう」
 うんうん、とみなが頷く。それが、全ての原因だ。
「しかし、それは正常だ。全くもって当たり前の事である」
 さあ……彼は誘う。
「妬め、恨め、嫉妬しろ!」
 だが……彼は戒める。
「我々は愚かで、しかしモテたいと真摯に思っている。モテる奴等、幸せそうな者達を妬ましく思っている」
 では……彼は勧める。
「立ち上がれ(アップ)、立ち上がれ(アップ)、立ち上がれ(スタンダップ)、だ! 今こそ、そう、今こそ立ち上がる時だ! 紙を持つ手に責め問い合う言を、胸を掴む身に抗議の念を」
 そして……彼は付け加え締めくくる。
「――諸君等に栄えある未来があらん事を!」
いつもとは違う演説を終えた『ジェラシード仮面』は、気力を取り戻した生き残りたちと共に動き出す。最後の矜持を賭けて。