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リアクション
「はふぅ……、外は涼しいですね……」
四日目ともなると親しくなり始めた生徒達が賑やかに過ごし始める。そんななかテレサは騒音を逃れ、一人、中庭へと足を運びベンチに座って星空を眺めていた。
「全く……、人の数が多くてうっとうしくて困る……」
同じように騒音から逃れてきた玉藻 前(たまもの・まえ)。
「あれは……」
玉藻を見かけたテレサはおもむろに立ち上がり、一緒に持ってきていた四尺ほどある杖を手に持つ。
「む? お主は……」
「ソウルアベレイター――魂の逸脱者。神の意に背く者……。申し訳ありませんがあなたを断罪します!」
そのまま、杖を構え玉藻に突撃するテレサ。
「急になんだ!?」
玉藻は咄嗟に鉄扇を構える。
「はっ!」
素早く繰り出される打ち、突き、払い。この三つを様々に組み合わせ、予測不能の攻撃を繰り出すテレサ。
「……っ!」
それを鉄扇をうまく使い、紙一重でさばいていく玉藻。
「やるではないか……!」
「当たって、ください!」
「そこ!」
玉藻が隙を見てファイアストームを放つ。
「わわっ!」
巻き起こる炎の嵐に距離をとるテレサ。
「玉藻!? どうした!」
そこに、樹月 刀真(きづき・とうま)と漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)の二人。
「おぉ、刀真か。断罪だと女が襲い掛かってきたぞ?」
「どいてください!」
テレサが動きの止まった玉藻を見て、再度突撃する。
「くそっ!」
刀真がすぐさま光条兵器、平家の篭手とウェポンマスタリーで扱う白の剣を手に取り玉藻の前で防御の構えを取る。
「せいっ! はっ!」
再び、予測不能の攻撃を仕掛けるテレサ。
「…………」
対する刀真は殺気看破や百戦練磨を用いて攻撃を見切り、その攻撃より一呼吸早く踏み込んでタイミングと間合いを潰し、威力を殺してから剣で受け流す。
「まだ……ですっ!」
テレサ自身も更にパターンを増やし、見切られないように攻撃を繰り出す。
「そこだっ!」
しばらくその攻防が続き、一瞬の隙をついて刀真が攻撃を弾き返す。
「っ!?」
そのことに驚いたテレサが間合いを取る。
「玉藻を見て、断罪という言葉を使い、この戦闘力……。お前はアカデミーの一般生徒じゃなくて教会の執行官か……? 何故正体を隠している? 目的は何だ?」
「…………」
杖を構え、黙秘するテレサ。
「ふーん、だんまりか……、じゃあお前が執行官である事を言いふらすぞ?」
「ふぇ!? それはこ、困りますぅ!」
刀真の脅しに、構えを解き、涙目になるテレサ。
「大切なパートナーを攻撃されたんだ、このくらい当然だ」
「大切なパートナー……か。たまにはこういうことも悪くないものだ」
「あぅ……、それはそうですけど。でも――っ!?」
言いよどむテレサ。だが、何かの気配を察知して、すぐに後ろを向く。
その眼前には謎の人間。そして、その手にはナイフ。間合いを詰めそのナイフをテレサに振り下ろす。
「だ、誰ですか!?」
そのナイフを弾き、距離をとったテレサ。刀真達も突然の事に反応が遅れたが、すぐさま戦闘態勢を取る。
「おい、あいつは誰だ? 見たところ男子生徒っぽいが……?」
「暗くて顔が見えないわね……」
「わ、分からない、です。あなたは、誰ですか!?」
「……コード:S^2」
「コード:ダブルエス……?」
「……抹殺に失敗、戦線を一時離脱」
コード:S^2と名乗った男はすぐに姿を消した。
「……あいつは」
「わたしにも、分からないです……」
「っと、そうだ。おい、お前。事情を聞かせてもらうぞ」
「……そうですね。わたしは、テレサと言います。神を冒涜する所業によって生み出された存在を、探し出して断罪する任務を受けて、このプログラムに参加しました」
「なるほど……。神を冒涜する所業によって生み出された存在の断罪……、クローンや遺伝子操作で生み出された存在という事か」
「はい」
「今のがもしかしてそうなのか?」
「多分……」
「(現在の人類とは異なる遺伝子コードを持つ、進化した新世代の子供達……)」
刀真はヴェクター・ウェストの言葉を思い出す。
「おい、それ俺にも手伝わせろ」
「え!? でも、それは……」
「駄目? じゃあ言いふらす!」
「ふぇぇぇ!? それも駄目ですぅ!!」
「じゃあ、手伝わせろ」
「刀真、テレサが可哀想よ。あんまり苛めちゃ駄目」
「手伝わせてもらえればこんな事はしないさ」
「あぅ、もう、分かりました!」
「じゃあ、良いんだな?」
「はい、お手伝いをお願いするです」
「よし、決まりだな」
「あぅ……、隠し事というのは大変です……」
涙目になりつつそう呟くテレサだった。