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リアクション
突然、現れたパワードスーツ隊。そして、いきなりの銃撃。
ここにいるのは、ほとんどが契約者だ。この程度ではパニックにこそならないものの、観客席にいる生徒達がざわめき立つ。
「おいおい、なんだこれは!」
「分からない。でも、このままじゃまずいよね……!」
戦っていた美羽、ラルクの前に複数のパワードスーツ。全員が銃を美羽達に向けている。
「……冗談でもなさそうだな」
構える二人。だが、銃が火を噴く前に、レーザーがパワードスーツを貫いた。
「二人とも平気!?」
そのレーザーを放ったのは完全武装し、光学迷彩で姿を隠して大会の会場警備をしていた宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)。その手には梟雄剣ヴァルザドーン。
「ありがと。助かったよ」
「ここは私に任せて、二人は生徒の非難を!」
「あ、あぁ!」
「分かった!」
二人はすぐさまその場から離脱。
「さて……」
祥子は剣を構え、パワードスーツ隊を見据える。
「さぁ、始めましょうか」
「…………」
レイは、騒ぎが起きている会場をジッと睨む。
「ちょ、ちょっとレイちゃん!! ここにいたら危ないよ!?」
円もレイを連れて安全な場所に行こうとするもジッと動かないでいるレイを見て動けないでいた。
強がった態度を見せることがあっても、まだ十歳の女の子だ。竦んでしまうのも当然だろう。
「レイちゃん!!」
「……あ、なに?」
ハッとして、レイが円の声に反応した。
「ここにいたら危ないよ! 早く安全な場所に――!」
そこで、再び大きな爆発。沢山の瓦礫が飛び交う。そして、その一つがレイ達のところへ。
「レイちゃんには傷つけさせないよ!」
飛んできた瓦礫をティアーズ・ソルベで防ぎ、レイを守る。
やってくるパワードスーツに対してハバネロ・タイラントで攻撃。だが、一人では防ぐのも限界が来る。流れ弾がレイのいるほうへ。
「レイちゃん、危ない!」
「…………」
レイは一歩も動かない。だが、流れ弾はレイの目の前まで行くと文字通り消滅した。跡形もなく。
「――――」
更に飛んできた瓦礫も全てレイに届く前に消失した。彼女の口の動きを見るに何かを呟いたようだったが、その声は円までは届かない。
「えっ!? どういうこと――きゃっ!」
近くで爆発が起こり、土煙が舞、円が目を閉じたその一瞬。レイの姿が消えてなくなっていた。
「あれ……? レイちゃん?」
「どきなさい!」
パトリシアの魔法がパワードスーツ隊を吹き飛ばす。
「邪魔だよ!」
そして、コハクのスピアドラゴンが接近してきたパワードスーツ隊を貫く。
「…………」
「ナナシ!? どうしたの!?」
パトリシア達と合流して生徒達を助けていたせつな達。急に止まったナナシに声をかけるせつな。その先には先ほど、レイが観客席。今は円が一人必死にレイを探していた。
「今の能力は……そうか、アイツが『C』か」
「ナナシ!!」
せつながナナシの肩を揺さぶる。そこで我に返る。
「……すまん。今はこの現状をどうにかしないとな」
「よくも、こんなところで暴れてくれたわね!!」
パトリシアの周囲には大量の魔道書。それらが、周囲のパワードスーツ隊を攻撃するが、まだ魔力が回復しきっていないらしく、なかなか敵を倒すには至らない。
「そこっ!」
ボロボロになりながらも接近するパワードスーツ隊をコハクが倒していく。
「……よし、治療完了。大丈夫?」
「あ、あぁ。ありがと」
アイシスが怪我した生徒を治療する。
「みんなーこっちだよー!」
そして紅鵡が生徒を誘導している。
「このっ……!!」
奮起するパトリシア。目の前のパワードスーツ隊に魔法を掃射。爆煙が巻き起こる。だが、その煙の中から煙を裂くように飛んできた貫いた無数の弾丸。それがパトリシアを貫く。
「しまっ……た」
パトリシアがゆっくりとその場に倒れる。もし、彼女の術式展開速度がもう少し早ければ、魔力を防御に割くことができただろう。
「パトリシア!?」
コハクがすぐさま駆け寄る。
「私が……!」
すぐにアイシスが治療を開始する。
「パトリシアさん、すごい血……! 大丈夫!?」
「あ、あはは……ちょっと、しくじっちゃったわ……」
慌てるせつなに血まみれのパトリシアが苦笑しつつ答える。
「アイシス、パトリシアは大丈夫?」
コハクの言葉に治療していた、アイシスが頷く。
「……うん、傷は深いけれど命に別状はないわ。でも、すぐちゃんとした治療をしないと……」
「……ここはあたしに任せて」
せつなが立ち上がる。
「せつな……?」
「みんなはパトリシアさんをお願い」
「だけど、一人じゃ……」
「せつなには俺がつく。すまないがパトリシアを頼む」
「……分かった。二人とも気をつけて」
「コハクー!! こっちだよー!」
避難経路には紅鵡と美羽が立ち、コハク達を呼んでいた。コハクとアイシスはパトリシアを連れて、離脱。そして、せつな達の前に残ったのはパトリシアの攻撃を受けボロボロになったパワードスーツ隊。
「……あなた達、許さないからね!!」
「……付き合ってやるとするか」
「ふぅ……」
祥子はまた一人とパワードスーツ隊を斬り捨てる。数が多くないのに、一体一体がかなり強い。
「でも幸いなのは……はっ!」
接近し、ライトニングウェポンで攻撃を仕掛けようとしていたパワードスーツを剣で一閃。
「中に誰も入っていないということかしらね……」
両断されたパワードスーツの中に誰も入っていなかった。機械で動いているが、電子頭脳的なものはない。どうやらどこからか遠隔操作されているらしい。
「リーダー格がいれば良かったのだけれど……、いそうにないし、地道に倒すしか……!」
前方と後方、両方から同時にパワードスーツ隊が迫る。
「はっ!」
祥子の周囲に氷の壁が展開。パワードスーツ隊の攻撃を防ぐ。
「ふっ!」
その瞬間に、ナナシが二体を吹き飛ばす。
「大丈夫ですか!?」
祥子の元にせつなとナナシが到着。
「おう、せつな。大丈夫か」
それと同時に桐ヶ谷 煉(きりがや・れん)とエヴァ・ヴォルテール(えう゛ぁ・う゛ぉるてーる)の二人が到着。
「生徒の避難、終わったぜ。重傷者もいたが、今のところ死人は出てないぜ」
「……それなら良かったわ」
「他のパワードスーツもみんな始末した。後はこいつらを倒せば終わりだ」
残ったのはパワードスーツ隊五体。
「一人一体の計算だな」
「油断しちゃだめよ? かなり強いから」
「分かっている」
「行くわよ!」
祥子、煉、ナナシが斬りこむ。
「いくぞ、せつな!」
「はい!」
後方でエヴァがパイロキネシス。せつなが氷の刃で三人を援護する。
「はあぁっ!!」
煉が流星のアンクレットで加速して斬りつける。だが、パワードスーツはそれを受けながらもライトニングウェポンで反撃を加える。だが、煉はミラージュで回避。
そのパワードスーツへパイロキネシスの炎と氷の刃が貫く。半ば壊れかけているのに、動くパワードスーツ。
「ふんっ!」
それをナナシが粉砕する。
「次だ!」
煉がすぐに次の相手へと斬りかかる。
「手伝うわ」
祥子が加勢。二人の鋭い連撃を防ぎきれるわけもなく、一瞬でズタボロに。
「トドメよ」
至近距離による梟雄剣ヴァルザドーンのレーザーで消し飛ばす。
「次!」
「まとめて焼き尽くしてやる!」
祥子の斬撃でボロボロになったパワードスーツと、近くにいたもう一体のパワードスーツを燃やし尽くす。
「よし、後一体――」
「せつな後ろだ!」
煉の言葉に振り返るせつな。そこにはすでに銃剣を振りかぶるパワードスーツ。
「ぁ……」
「……はぁっ!」
煉がアブソリュート・ゼロを発動。せつなの前に氷の壁を作り出し、攻撃を防ぐ。そして、アクセルギアを起動しポイントシフトでそのパワードスーツとの距離を詰める。
ヒロイックアサルト『雲耀之太刀』による稲妻の如き速さの剣撃に加え、アンボーン・テクニックの魔力による身体強化。
「これが……!」
剣を振り下ろす際、先行して敵にグラビティコントロールによる重圧をかけ、続け様にグレイシャルハザードによる斬撃を繰り出す。
もし敵が生身の人間だったら、超速で剣が振り下ろされるように見えていたことだろう。
「雲耀の速さを超える俺の新しい剣技……零之太刀だ!」
粉々に砕けるパワードスーツ。
「はぁ……何とか終わったわね」
その場に座り込むせつな。
「大丈夫だったか?」
煉がせつなに手を貸して立ち上がらせる。
「はい。ありがとうございます」
「無事に終わったわね……」
「会場の被害はひどいが、死人が出なかっただけ上出来だろう」
「そうね。それじゃ、私達も治療の手伝いに行きましょう」
「はい。そうですね」