空京大学へ

天御柱学院

校長室

蒼空学園へ

屍の上の正義

リアクション公開中!

屍の上の正義

リアクション

 イレイザー・スポーンという津波が接近する「中継基地」。
 厳戒態勢がしかれる中、徐々にその規模があらわになっていく。
『【情報管理室】から作戦に参加している各員へ。イレイザー・スポーンが接近中。
 イコン搭乗者は【イコン格納庫】で十分に補給・メンテナンスを行い、
 敵の迎撃準備をお願いします。なお、これからは前線にて防衛ラインで戦う者に関しては、
 別途管制機であるホークアイから情報通達を受けてください。以上、幸運を祈ります』
 【情報管理室】からの通信が途絶えた時、地鳴りのような音が聞こえ始める。
 悪鬼が行進する音。この「中継基地」に災いをもたらす脅威の風。
 それを阻止するべく、数的な不利を強いられるながらも防衛及び殲滅戦が開始されようとしていた。

「中継基地」の前方5キロ程いったところにある施設を拠点に防衛ラインが引かれていた。
 そこから見えるのは、イレイザー・スポーンの津波。全てを飲み込み、何もかもを無に帰してしまう災厄。
「防衛拠点にいる各員へ。こちら管制機を務める、ホークアイだ。前線についての情報通達はこちらから行う。
 現在、イレイザー・スポーンの群れを確認した。12時方面より接近中。今のところ総数は未知数。
 大型のものはまだ確認できず。戦闘を開始してくれ」
 ホークアイからの通達から程なくして契約者たちの目に映る、イレイザー・スポーンの群れ。
「先行、偵察の者は行動を開始してくれ」
 それとほぼ同時に飛び出したイコンが一機。名は魂剛
 その姿は黒を基調とした武者。しかし、これからはイレイザー・スポーンの首を狩る死神となる。
「想いと、尽力によって生まれた場所を、お前らの勝手で潰させてなるものか!」
 人々の思いを踏みにじませまいと先頭を切ったのは紫月 唯斗(しづき・ゆいと)
「景気付けにはもってこいだ! この魂剛、貴様らごときに倒せると思うなよ!」
 その唯斗の隣には戦場把握と機体管制を担当するエクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)が笑いながら言う。
「かといって突出過ぎるなよ? 飲み込まれれば無事ではすまんからな」
「わかってる!」
 先行する唯斗と、先頭にいたイレイザー・スポーンの群れが遂にぶつかる。
 唯斗の魂剛を我先に食い破り飲み込まんとする悪鬼の群れに、臆することない唯斗。
 鬼刀とアンチビームソードの二刀流の構えで、襲い来る悪鬼の群れを数瞬でバラバラに切り裂く。
「こんなものに、街が一つ飲み込まれたとは……。だが、「中継基地」は守り抜く!」
「お前さんが先陣きって死ななきゃできるであろうが、平気なのだろうな?」
「魂剛が機械の欠片一つとなろうとも、臆さず、怯まず、諦めたりはしない」
「ほう、ならばその気概をもって何を斬る?」
「無論、悪鬼の波を切り裂く!」
「その意気やよし! 2時方向から射撃!」
 その言葉通りにスポーンから魂剛に攻撃が開始される。が、敵からの射撃を余裕を持って斬り落とす。
 全ての攻撃を弾き落とした魂剛がゆっくりと構えを取る。
「……我は悪鬼を切り裂き天道を征く!」
「この世に汝らの住まう場所は無し!」
「我は剣帝武神なり!」
「我は斬鬼天征なり!」
「「我が名は魂剛! 推して参る!」」
 同時に爆ぜる。小型のイレイザー・スポーンに突っ込み二刀流を持って足元から一気に倒す。
 その姿は、悪鬼を蹴散らす鬼神にも見えた。
 唯斗は戦うだろう。例え、武器がなくなろうと、圧倒的な劣勢であろうとも、自分の守るべきものがあるかぎり。地を這ってでも。

「先行機発見、既に交戦中みたいね」
「了解! ならここから見える敵の中核に攻撃を叩き込むわ!」
 フィーニクス・ストライカー/Fに搭乗しているのはイーリャ・アカーシ(いーりゃ・あかーし)ジヴァ・アカーシ(じう゛ぁ・あかーし)の二名だ。
「無理は禁物よ? ただでさえ未完成のストライカーを強行させてるんだから」
「わかってるわ! 全弾射出したら後退するつもりだって!」
 イーリャたちが乗るストライカーは未だ未完成だった。それでも、街を守るために未完の状態で、なおかつ先行までして作戦に参加していた。
 「中継基地」が飲み込まれてしまった街と同じ運命を辿らないように。
「ジヴァ、有効射程内に入ったわよ」
「その言葉を待ってたわ。『加速』、『突撃』を解除! ストライカーをH形態へ!」
 それまで飛行形態だったスライカーが人型形態に姿をかえる。赤くカラーリングした美しい機体、それが悠然と空にいる。シヴァが大きく息を吸い込み言い放つ。
「……っ。全兵装一斉射撃(ストライカー・フルバースト)!」
 換装している全ての武装がイレイザー・スポーンに向けられ、言葉と共に射出。
 悪鬼の群れが天高く打ち上げられ、台風に吸い上げられるように巻き上がる。その威力は強力なものだった。
「80%でこれくらい、ね。データとしてはまずまず。欲を言えば新兵装を換装して、100%のデータが欲しかったけれど」
「それよりも早く後退よ! 先行機体が敵の群れを私たちに近づけまいと頑張ってくれているうちに!」
「そうね。後退開始、向かってくる敵の迎撃をお願い。私は未だ大型機の存在は確認できないことを管制機に伝えるから」
「了解っ!」
「先行しているイコン機へ、私たちは一度後退し支援に回ります。援護をお願いできますか?」
『最初からそのつもりだよ。安心して後ろから支援を頼むであろう』
「協力感謝します」
「こっちも言われなくたってやるわよ! 安心して叩ききってよね!」
「……だそうです」
『はっはっは! その言葉、信じるとするぞ! 唯斗、暴れてよいとのお達しだ!』
「……豪快な方ね」
「ストライカーがフル武装だったら前線で戦うのに……でも、負けるもんですかー! 支援よ支援!」
 魂剛に群がろうとする悪鬼を『ツインレーザーライフル』で蹴散らすジヴァ。
「攻撃とみてもおかしくはないけれど、ちゃんと支援してるのがすごわいね」
 ジヴァの腕に感心しながらも管制機とやりとりを行うイーリャだった。