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【ぷりかる】始まりは消えた花冠から……

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【ぷりかる】始まりは消えた花冠から……

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 きゃっきゃと賑やかなグィネヴィアの再会の様子を少し離れた所で眺めるのは、
「……」
 最後に駆けつけた宵一達だった。
「……リーダー、行かないのでふか?」
「優しい言葉をかけてあげたらどう? 無事でほっとしたとか」
 安堵の顔でグィネヴィアを見守っている宵一にリイムとヨルディアは背中を押そうと言葉をかける。
「……しかし、どう声をかけたらいいのか」
 宵一は言葉を濁した。捜索中は見つける事で頭が一杯だったのでいざ本人を目の前にするとなかなか。

 そうこうしている間に
「……あの、グィネヴィアさん、みんなと一緒にお花を探しませんか」
 リースは考えていた事を言葉にした。きっとグィネヴィアも森のために何かしたいだろうと考えての事だ。
「……花を」
 リースの予想外の提案にグィネヴィアは驚き、返事が出来なかった。自分は救助される側で終わるのだとばかり思っていたから。だから、今回も迷惑を掛けただけだと先ほど落ち込んでいたのだ。
「オレ達が護衛をするから襲われる心配はしなくていいぞ」
 シリウスはグィネヴィアが気にするだろう事を先回りして言った。
「あとは、グィネヴィアのお嬢さんの気持ちだけだ」
 ナディムが笑いかけた。
 グィネヴィアは集まったみんなの顔を見回し、ナディムの言葉を心内で何度も響かせた後、
「……あの、お手伝いをお願いします」
 と答えた。少々、申し訳なさを含みながら。

「えぇ、任せてちょうだい」
「森を助けるために頑張りましょう」
 セリーナとリーブラはグィネヴィアを守る気満々。
「……わたくし、道具を持っていませんわ。どうしましょう」
 グィネヴィアはふと自分が必要な道具を持っていない事に気付いた。

 ここで
「グィネヴィアさん、僕達もお手伝いするでふよ。頑張ってたくさん見つけるまふ」
 リイムがグィネヴィアの前に躍り出た。誰よりも先に宵一がグィネヴィアに道具を渡す機会を作るためとグィネヴィアを励ますために。
「はい。リイム様、ありがとうございます」
 グィネヴィアは励ましてくれたリイムに礼を言った。
「リーダー、グィネヴィアさんに道具を渡すでふよ」
 リイムはグィネヴィアの分の対花妖精用道具を持つ宵一を呼んだ。
「……グィネヴィア」
 呼ばれてやって来た宵一はとりあえず道具を渡す。
「……ありがとうございます」
 グィネヴィアはうつむき加減におずおずと受け取ってから顔を上げると宵一は背を向け、グィネヴィアの脱出経路を確認するために周囲の警戒に行ってしまった。
「リーダー、僕も行くまふ」
 リイムはグィネヴィアの安全確保のために行く宵一を追いかけた。
「……あの、ヨルディア様……宵一様は怒っていらっしゃるのでしょうか。その……」
 グィネヴィアは恐る恐るまだ近くにいるヨルディアに宵一の事を訊ねた。ペルム地方で会った時よりも少しだけ素っ気なく感じてもしかしたら自分の事で怒っているのではと不安になったのだ。
「怒る? 迷惑を掛けてるばかりだから宵一があなたを怒っているんじゃないかって事?」
 ヨルディアがあまりにもおかしくて軽く笑いながら聞き返した。
「…………はい」
 グィネヴィアはこくりとうなずいた。思い当たる事は多々ある。今回の事、迷惑を掛けてばかりの今までの事、そしてまだしていない告白の返事の事など。
「宵一は怒ってなんかいないわ。むしろ今この場にいる誰よりもあなたを心配していたのよ。ただ、不器用だからあんな感じになってしまっただけで」
 ヨルディアは笑うのをやめて不器用な宵一の気持ちを伝えた。
「……そんな……申し訳ありませんわ。それにこんなわたくしが宵一様と……」
 グィネヴィアはペルム地方で会った時に言えなかった事を口にするも最後は顔を赤くして言葉を濁らしてしまう。ヨルディアにはそれだけで十分伝わった。
「……こんな自分なんてと言わないで。あなただからみんなが助けようとこの場にいて宵一も好意を持ったのよ」
 ヨルディアは優しく怒りながらそれだけ言ってグィネヴィアから離れた。
「……」
 グィネヴィアは改めて自分の周りにいる皆の顔を見ていた。ヨルディアの言葉を胸に刻みながら。

 とにもかくにも大人数の花探しが始まった。時々、花妖精が襲撃に来るが、宵一達やシリウス達、麗達、セリーナの『ラブアンドヘイト』が守ったりと護衛は完璧で花摘みの手伝いとして舞香達が活躍していた。

「お花、見つけたよ!」
 綾乃はスミレを見つけ、探索セットのバックパックを持つシリウスに託した。
「これもお願い。早く花冠を作ってこの匂いを早く何とかしないとね」
 舞香も姫踊り子草を託しながら鼻を突き刺す匂いに眉をひそめたり。

 しばらくして
「グィネヴィア、これはどう?」
 タンポポを発見した舞香はグィネヴィアを呼んだ。
「可愛いですわ」
 グィネヴィアはタンポポにほわっと和み、花冠の材料としてシリウスに託した。
「ここの花妖精様は正気を失っても優しさのある良い子でしたわ。グィネヴィア様の捜索を手伝ってくれましたもの」
「……お嬢様」
 麗がにこやかだがアグラヴェインは神妙な様子だった。
「はい。ここの森の方々はとても楽しくて一緒にいると時間を忘れてしまいます。困っている時に助けてくれる事もありますわ。フウラ祭司様は無事でしょうか」
 麗達の事情を知らぬグィネヴィアは四季の森について話した。ここの花妖精達もグィネヴィアを優しくもはらはらしながら見守っているのだろうなと皆の想像は一致していた。
「……噂をすれば何とやら。どうやら無事みたいだぜ」
 バックパックを持っていたシリウスに祭司無事の連絡が入り、話を終えるなり皆に伝えた。ここまで北方の出来事やフォリンの事は森を出てからと決めてグィネヴィアには伝えていない。
「……安心しましたわ。これでこの森も助かりますわね」
 グィネヴィアはほっと胸をなで下ろした。

 その時、ずっと道の横の草むらから酷く怪我を負った少女花妖精が飛び出し、地面に倒れた。
「!!」
 グィネヴィアは急いで駆け寄った。
「大丈夫ですか」
 グィネヴィアが必死に言葉をかける。
「……北……みんな……おかしくなって……」
 少女花妖精はそう言って意識を失った。どうやら北から逃げて来たらしい。
「目を開けて下さいませ」
「……大丈夫、ただ気を失っているだけよ」
 ヨルディアは駆け寄り、『命のうねり』で少女花妖精の怪我を治療した。
「ヨルディア様、ありがとうございます」
 グィネヴィアは無事だと知って表情をゆるませたが、ヨルディアの表情は逆に険しくなっていた。なぜなら少女花妖精が出て来た草むらから襲撃者を発見したから。
「宵一! 北からの花妖精よ」
 ヨルディアが宵一を呼び寄せた。
「……あぁ」
 宵一はグィネヴィアを守るためにリイムと共に急いで駆けつけ、グィネヴィアを狙わないように『プロボーク』で襲撃者を自分にひき付けた。
「グィネヴィアさん、ここを離れるまふ」
 リイムはグィネヴィアに避難を促す。
「……あの、何が……ヨルディア様、宵一様?」
 自分の前に立つヨルディアと宵一が何をしようとしているのか分からないグィネヴィアは心配そうに二人の背中を見つめるばかり。
「グィネヴィアのお嬢さん、この子は俺に任せてくれ」
 ナディムは少女花妖精を抱え、リイムと共に他の仲間の元へ。
「ここは僕達に任せるまふ。グィネヴィアさんをよろしくでふ」
「任せて下さいませ。無事に森の外まで連れて行きますわ」
 麗は力強く答え、宵一達の所へ戻るリイムを見送った。
「……北側は結構酷い事になっているようだな」
 シリウスはグィネヴィアに聞こえないように小さくつぶやいた。
「……」
 グィネヴィアは草むらに入って行く宵一達に心配の色が浮かぶ視線を向けていた。何があるかは分からないが危険な事であるのは何となく察しているらしい。
「グィネヴィアさん、心配ありませんわ。後で合流出来ますから」
 リーブラはグィネヴィアの視線に気付き励ましてから北からの襲撃者が来た時のためにと『エンデュア』で精神を『心頭滅却』で毒や眠りへの耐性を高め、再び先導を務め、皆を安全な道へと導いた。

 残った宵一達は、グィネヴィア達を襲わないようにと北から来たランタンの光も通じない凶悪化した花妖精の相手をした。気を狂わせその場に倒れる者もいるが大多数は向かって来た。毒の粉を振りまいたり、死に顔以上の邪悪な顔を向けたりした。宵一はあらゆる被害を受ける前に『スカージ』の溢れんばかりの光で失神させたり神狩りの剣で威圧し、後退させた。リイムは『風術』で毒の粉が降りかかるのを防ぎ、ヨルディアは『ホワイトアウト』で次々と後から来る花妖精の方向感覚を奪った。
 花妖精達の相手を終えるなり、連絡をして舞花達と理沙達に失神させた花妖精達を任せ、グィネヴィア達と合流し森を出た。