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【ぷりかる】始まりは消えた花冠から……

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【ぷりかる】始まりは消えた花冠から……

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 四季の森、北方。

「ノーン様、早急に花集めを始めましょう。緊急事態ですが、見落としが無いよう焦らずに」
「うん、この森を助けるために頑張ろう!」
 御神楽 陽太(みかぐら・ようた)の子孫である御神楽 舞花(みかぐら・まいか)とパートナーであるノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)は広がる氷の世界に改めて気合いを入れ直し、仕事に取り掛かる。寒さ対策については舞花はアイシクルリングで対応し、ノーンは氷雪の精霊なので問題無く、凶暴化した妖精に対しての装備も万全である。

「花を探しながら保管庫に向かいましょう」
 舞花はとりあえず球根や種が大量にあると思われる保管庫を目指す事にした。
「保管庫ならたくさんあるもんね。凍っている花はわたしが溶かすから心配無いよ」
 ノーンは元気に賛成し、どんと胸を叩いて頼りにしてくれて大丈夫と主張した。
「はい、ノーン様。その時はお願いします」
 舞花はにこりとノーンを頼りにし、二人は花と花保管庫を求めて歩き出す。

 花集め開始後しばらく。
 『野外活動』を持つ舞花は氷の世界と成り果てている森の中を問題無く歩き回りながら『捜索』とエースから貰った情報を駆使して花を探していた。
 そして、
「ノーン様、見つけましたよ」
 舞花は凍り付いているクリスマスローズを発見した。
「舞花ちゃん、危ない!」
 ノーンは自分達の方に向かって来る凶暴化した花妖精を発見し、すぐに舞花に警告してからランタンを持って立ち塞がる。
「ゴメンね……ちょっとの間だけ離れていてね」
 ノーンは接近した花妖精達に謝りながら追い払った。
「ノーン様、ありがとうございます。花は無事に回収出来ました」
 舞花はノーンのフォローに感謝しつつ、その間に摘み取ったクリスマスローズを見せた。
「頑張って咲いていた花だからきっと素敵な花冠が出来るね♪」
 クリスマスローズを見たノーンは明るく言った。何かも解決すると信じての明るさである。
「はい」
 舞花は力強くうなずいた。ノーンと同じように事件の解決を信じているのだ。
 この後、舞花達は花を求めて止まっていた足を動かした。

 舞花達は、途中襲われ傷付いた少女花妖精に遭遇した。
「わたし達が来たからもう大丈夫だよ。すぐに森は元に戻るからね」
 ノーンは『命の息吹』で怪我を回復させてから耳栓を外して励ました。
「よろしければ、保管庫の場所を教えて頂けないでしょうか?」
 舞花は耳栓を外してから存在しか知らない保管庫について訊ねた。
「……うん。保管庫は」
 少女花妖精は花保管庫への行き方を舞花達に教えた。
「保管庫、少し遠いけど頑張ろう……あれ?」
 ノーンは意気込みを高らかに口にした時、ひっそりと咲いているパンジーを発見した。もしかしたら『幸運のおまじない』の効果かもしれない。
「舞花ちゃん、見つけたよ!」
 ノーンは急いで凍った花を摘み取り、舞花に報告。
「パンジーですね」
 舞花も嬉しい幸運に喜んだ。
 舞花達は自分で森の外に行く事が出来ると言う少女花妖精を見送ってから花回収に戻った。

 パンジーを回収してからしばらく。
「……舞花ちゃん、この子何かおかしいよ」
 ノーンは地面に倒れている花妖精の傷を『命の息吹』で回復させながら言った。
 自分達を襲いに来るも突然地面に倒れ、胸を掻きむしりながら白目をむき、意識を失ってしまったのだ。幸い命は無事だったのだが。
「そうですね。精神が錯乱しているようでしたね」
 舞花も心配そうに倒れている花妖精を見る。先ほど襲われた時と全く様子が違う事に何か嫌な予感を感じる。
「連絡を取って……あ、少し聞いてみましょう」
 舞花は誰かに連絡を取ろうとするが、その手は止まった。近くに五十嵐 理沙(いがらし・りさ)セレスティア・エンジュ(せれすてぃあ・えんじゅ)がいたのだ。何か知っているかもしれないと思い、声をかけようと急いだ。

「……どこもかしこも凍り付いて凄い状態ね。私達が凍る前に終わらせないとね」
 理沙は広がる氷の世界に思わず声を上げた。
「そうですわね。寒さの強い背の低い植物ならどこかに隠れて咲いているかもしれませんわ」
 『博識』を持つセレスティアも同じように周囲を見渡しながら探す花の特徴を白息を吐き出しながら伝えた。
「そうね。ついでに耐寒性の強い物も」
 理沙は植物生態にそれほど詳しくはないが、エースに送って貰った植物データを元に銃型HCでおおよその植物は検索済みであった。
「情報はあるし、とにかく集められるだけ集めよう。グィネヴィアちゃん、天然ぼくて心配だけどきっと大丈夫よね」
 理沙は森についてあれこれ説明していた時のグィネヴィアの姿を思い出しながら少し心配する。悪い子ではないがどんくさそうで周りがはらはらして放っておけないタイプだなと。
「頼りになる人達ばかりですからきっと見つかりますわ」
 セレスティアはグィネヴィアの救出に向かった人達の事を思い出しながら理沙に言った。
「そうね。私達は花集めに専念しましょうか」
 理沙の言葉で花探しが開始された。
 セレスティアの『トレジャーセンス』を利用し、花集めが始まった。

 花集め開始後しばらく。
「……少しだけ眠っていてね」
 理沙は襲って来た襲撃者をランタンの光で追い払った。
「……すっかり凍っていますわ」
 セレスティアは見つけたシクラメンはカチカチに凍って触れられずにいた。最初に見つけたパンジーは隠れ咲いていたため無事だったのだが。
「氷を溶かして回収よ」
 理沙は『火術』で凍り付いたシクラメンを救い、パンジーの入ったビニール袋に入れた。ちなみにビニール袋は、セレスティアの獅子の湯特製・非常用持出袋から取り出した物だ。
 その後、理沙達は花回収を続けるも北方に訪れた異変はゆっくりと広がっていた。

 さらに時間経過。
「……保管庫に行ってみた方がいいかもしれない」
 理沙は花妖精から場所を聞いたりして追加で集めた花、サイネリアやポリアンタなどを見ながら言った。あまりの寒さのせいか一種類ごとの量が少ない。それが今気掛かりな事だ。
「そうですわね。最悪球根や種があれば育てて回収が出来ますものね」
 セレスティアは花生長が出来るエース達の事を思い出していた。
「とりあえず花妖精達の誰かに聞いて……ねぇ、何か森の空気がおかしくない?」
 理沙はふと森の様子がおかしい事に気付いた。
「……そう言えばそうですわね。理沙、花妖精さんですわ!」
 セレスティアも同じように感じるも凶暴化した花妖精が現れ話しを中断した。
 理沙はランタンの光を近づけるがなぜか凶暴化した花妖精は怯む事なく理沙に襲いかかる。
「ランタンが効かない? 仕方無い」
 絶対に花妖精を傷付けたくない理沙は仕方無く鞘に入れたままの宝刀【幸玉】で叩いて気絶させた。一瞬驚きながらも何とか対処した。
「……理沙、おかしな事が起きているようですわ」
 周囲に目を向けながらセレスティアは不審の声を上げた。
 周囲には自分達に襲いかかろうとするも突然地面に倒れる者、精神が錯乱しているのか頭や胸を掻きむしる者、奇声を上げたり自分を攻撃したりする者がいたりと酷い有様。中には石化や毒化している者や救助が手遅れの者もちらほらといる。
「今、一体何が起きてるの。それよりも助けられる子は助けないと!!」
 理沙も今の状況に眉を寄せるもセレスティアと共にすぐに行動する。理沙は『ヒール』、セレスティアは『歴戦の回復術』で助けられる花妖精を次々と助け、
「森は通らずに避難して下さい」
 セレスティアは森は危険と判断し、花妖精達には空から避難するように指示を出した。
「助けに来たからもう大丈夫!」
 理沙は凶暴化した仲間から身を隠す花妖精を見つけては優しく声をかけて安心させてから避難させ、異常状態の者達は自ら抱えて小型飛空艇を使って森の外まで連れて行き、治療を他の救助者に任せた。まだグィネヴィアやフウラ祭司救出が完了するほんの少し前だったが、人手はいたので問題は無かった。
 理沙は『エンデュア』でセレスティアはムーンライトイヤリングで自分達の精神を保護する事も忘れなかった。
「……嫌な感じね。誰かに確認を取った方がいいかも」
 理沙は状況確認を取ろうと考えた。

 その時、
「無事ですか?」
「大丈夫?」
 舞花とノーンが現れた。

「私達は大丈夫よ。何が起きているか知ってる?」
「花妖精さんの様子がおかしいのですわ」
 理沙とセレスティアは舞花達に事情を訊ねた。

「私も不審に思いまして連絡を取ろうとした時にお二人を見つけまして何かご存じではないかと」
 舞花は首を左右に振った。舞花達も理沙達と全く同じ状況なのだ。
「何か良くない事が起きてるよ」
 ノーンは周囲を見回しながら不安そうにする。森に漂う負の感情が形を成し、亡き人として普通人が見える状態で歩き回っている。
「……?」
 舞花の籠手型HC弐式に連絡が入り、急いで出るも話しはすぐに終わった。
「舞花ちゃん、誰だったの?」
「何か分かりましたか?」
 ノーンとセレスティアが連絡が終わるなりすぐに舞花に訊ねた。
「……保管庫が破壊されたそうです。今のこの状況は……」
 舞花は陽一から保管庫が妨害者によって破壊され、今の状況を作っている事を伝えられたのだ。それから舞花は陽一に伝言されたように他の仲間にもこの情報を拡散した。その際、花冠消失の犯人を知るがそれどころではなかった。
「保管庫が破壊されたというと外に咲いている花だけで花冠を作らないといけないという事よね」
 理沙は自分達が集めた花を確認しながら言った。先ほど量に不安で保管庫を探そうとしたというのに。
「私達もいくつか集めましたから何とか足りると思います」
 情報拡散を終えた舞花は自分達が集めた花を理沙達に見せながら言った。見た感じでは足りるはずだと。

「舞花ちゃん、変な色をした水が流れてくるよ!」
「もしかして凍っているはずの泉の水かしら」
 ノーンとセレスティアがどこからともなく流れて来た障気に満ちた水に嫌な顔をしていた。

 二人に言われて流れる水を確認した理沙と舞花は
「急いだ方が良さそうね」
「はい。深刻な影響が及ぶ前に避難を完了させましょう」
 完全に花集めを中止して花妖精達の避難誘導に全力を挙げる事にした。
 四人は気絶している花妖精達を背負ったり抱き抱えたり支えたりしてから舞花は小型飛空艇ヴォルケーノ、ノーンは氷雪比翼、理沙とセレスティアは小型飛空艇で迅速に運び、また戻って石化、毒化した花妖精や正気な花妖精だけでなく凶暴化した花妖精も気絶させてから運び続け、森の外にいる者に治療を託した。
 それでも救えない花妖精が何人かはいたが、救える者は全て救出した。騒ぎが一刻も早く解決する事を願って。幸い、花集めもグィネヴィアやフウラ祭司救出が終了していて花冠作製中だったため人手は多かった。
 花妖精達の避難が終わってからノーンはファイアーウィップで自分達が集めた花の氷を溶かし、ノーンのレストレーションソードで自分達と理沙達が集めた花に元気を取り戻させてから花冠の材料としてフウラ祭司に渡した。